第百二話 傷付けない理由
村の家々から漏れていた明かりが、一つまた一つと消えていく。
昼間は畑仕事をする人々の声や、子どもたちの笑い声が聞こえていた道も、今は静まり返っていた。
時折、虫の鳴く声がどこか遠くから聞こえてくる。
そんな村の中を、ライカは一人で歩いていた。
向かっているのは昼間に訪れた鍛冶場。
ガルドのいる場所だった。
その手には何も持っていない。
胸元にもいつも大事に持っていた深海色の真珠のブローチはなかった。
何百年もの間、ずっと探していたリリアナの刻。
ようやく自分の手へ戻ってきてからは、毎日必ず水を与えていた。
柔らかな布で表面を丁寧に磨いていた。
けれど、今日初めて自分の手から離れた。
ガルドへ預けた。
傷一つ付けずにブローチから外してもらうために。
ガルドなら大丈夫だと、ラグナが言ったから自分も信じてみようと思った。
それでも、何もない胸元へ何度か手が伸びてしまう。
その度にそこには何もないことを思い出す。
そして、夜になって気付いた。
「……水」
ライカは足を速めた。
鍛冶場には、まだ明かりが灯っていた。
昼間とは違い金属を打つ大きな音は聞こえない。
けれど、中ではガルドが作業を続けていた。
机の上にはいくつもの道具。
その傍ら。
柔らかな布の上に、深海色の真珠が嵌められたブローチが置かれている。
ガルドは、灯りに照らしながら金具の構造を調べていた。
力任せに外すことは出来る、だがそれでは意味がない。
絶対に傷を付けるな。
ラグナから頼まれた。
そして、目の前の少女から何百年も探していた大切な人なのだと聞いた。
なら、時間が掛かっても確実な方法を探す。
ガルドは細い道具を置いた。
その時、入口から声がした。
「ガルド」
ガルドが顔を上げる。
そこにライカが立っていた。
「……なんだ」
ライカは、机の上にあるブローチを見る。
「リリアナに水をあげに来た」
「水?」
ガルドの眉が動く。
ライカは頷いた。
「刻は」
「毎日、水をあげないといけない」
「…………」
ガルドはブローチを見た後、ゆっくりとライカを見る。
「……そういうことは先に言え」
「忘れてた」
「そうかい」
それ以上ガルドは何も言わなかった。
なぜ忘れた。
そんな大切なことを。
そう責めることもない。
ただ、机の上を片付ける。
「やってみろ」
「うん」
ライカはブローチの前へ座った。
用意した水へ指先を浸す。
そして、深海色の真珠へ少しずつ水を与えていく。
ガルドはその様子を黙って見ていた。
どれくらいの量なのか、どうやって与えるのか。
何か特別な道具が必要なのか。
職人の目で、一つ一つ確かめている。
水を与え終えると、ライカは柔らかな布を手に取った。
表面を優しく拭いていく。
何度も、何度もやってきた。
慣れた手付き。
深海色の真珠が灯りを反射する。
「これでいい」
ライカが言った。
「……他には」
「?」
「手入れだ」
ガルドはブローチを見る。
「水だけじゃねぇんだろ」
ライカは考える。
「綺麗に磨く」
「他は」
「……ない」
「本当か?」
「多分」
「多分じゃ困る」
ガルドは小さく息を吐いた。
怒っているようにも見える。
けれど、声を荒らげることはなかった。
近くにあった紙を一枚取る。
筆記具と共に、ライカへ差し出した。
「必要なことを全部書いて持ってこい」
ライカは紙を見る。
「水の量」
「使っちゃいけねぇもんがあるなら、それもだ」
ガルドは続ける。
「外すのに何日掛かるか分からねぇ」
「その間、毎晩お前が来られるとも限らねぇだろ」
「俺が預かってる間に何かあったら意味がねぇ」
ライカは紙を見つめる。
「…………」
動かない。
「どうした」
「…………」
ライカは紙を見て、ガルドを見る。
そして。
もう一度、紙へ視線を落とす。
しばらくして。
ガルドは察した。
「……文字、書けねぇのか」
ライカは、少しだけ間を置いて。
頷いた。
「うん」
「そうか」
それだけだった。
どうして。
何故。
今までどうしていた。
そんなことは、一つも聞かなかった。
ガルドは少し考える。
そして、紙と筆記具をライカへ渡した。
「なら」
顎で、鍛冶場の外を示す。
「ラグナに書いてもらいな」
ライカが顔を上げる。
「ラグナに?」
「あいつなら書ける」
「分かることは全部書いてもらえ」
「……うん」
ライカは紙を受け取る。
「明日持ってこい」
「分かった」
ガルドは、それだけ言うと再び机へ向かった。
ライカは少しだけ、その背中を見つめる。
怒られなかった。
大切なことを言い忘れていたのに。
文字も書けなかったのに。
ガルドは何も言わなかった。
出来ないなら、別の方法を教えてくれた。
「ガルド」
「なんだ」
「……ありがとう」
ガルドは振り返らなかった。
「いいから早く戻れ」
「夜道で転ぶなよ」
「うん」
ライカは、紙を持って鍛冶場を出た。
村の夜道を歩き家まで戻ると、家の外に一人起きている者がいた。
ラグナ。
小さな灯りの傍で、いつものように剣を手入れしている。
布で刀身を拭き傷がないか、刃に異常がないか。
一つ一つ確かめている。
旅の途中でも、何度も見た光景。
「ラグナ」
声を掛けるとラグナが顔を上げた。
「ん?」
「まだ起きてたのか」
「うん」
ライカはラグナの隣へ座る。
そして、持っていた紙を差し出した。
「これ」
「なんだ?」
「ガルドが」
「書いてもらえって」
ラグナは紙を受け取る。
「何を?」
「リリアナの手入れ」
ラグナがライカを見る。
事情を聞く。
水を与えに行ったこと。
毎日必要だとガルドへ伝えていなかったこと。
手入れの方法を書いて持ってくるよう言われたこと。
そして、文字が書けないこと。
一通り聞いてラグナは頷いた。
「水のこと、言ってなかったのか?」
「忘れてた」
「そっか」
それだけだった。
ライカは、少しだけラグナを見る。
さっきも同じだった。
ガルドも責めなかった。
ラグナも、責めない。
「じゃあ」
ラグナは紙を膝の上へ置いた。
「分かること、教えてくれ」
「俺が書く」
「うん」
「まず、水は毎日?」
「毎日」
ラグナが紙へ文字を書く。
「量は?」
「少しずつ」
「……少しずつって、ガルドに分かるかな」
ライカは少し考えてから、両手で水の量を示そうとする。
「これくらい」
「分かった」
ラグナはそれも書いていく。
「磨く時は?」
「柔らかい布」
「水をあげた後?」
「うん」
一つずつライカが答える。
一つずつラグナが書いていく。
紙の上に文字が増えていく。
ライカには、それが何と書いてあるのか分からない。
けれど、ラグナが自分の言葉を一つずつ形にしていることは分かった。
ライカはその手元を見ていた。
紙。
文字。
それを書くラグナの手。
やがて、視線が少し横へ移る。
そこには手入れの途中だった剣。
ラグナがずっと使っている剣。
刃は、灯りを静かに反射していた。
何度も見た。
ラグナは、毎晩のようにこの剣を手入れしている。
大切そうに、丁寧に。
なのに。
ライカは、旅の中で一つのことに気付いていた。
ラグナは戦える。
剣も使える。
強い。
それでも、魔物と出会った時は簡単に剣を振るわない。
出来るだけ傷付けない方法を探す。
エルの音楽。
丸い玉の付いた矢。
リオンの癒しの力。
そして、皆で考えたいくつもの方法。
昨日レイラから聞いた。
エルの音楽が、どうして魔物を眠らせるのか。
傷付けたくない。
壊したくない。
そんな想い。
ライカは、ラグナの剣を見る。
「ラグナ」
「ん?」
文字を書いていた手が止まる。
ライカは、剣を見たまま尋ねた。
「どうして」
少し。
間を置く。
「剣で、魔物を傷付けないの?」
ラグナはすぐには答えなかった。
手に持っていた筆記具を紙の上へ置く。
そして、傍らにある剣を見る。
「……そうだな」
静かな声だった。
「最初から」
「こうだったわけじゃないんだ」
ライカがラグナを見る。
「違ったの?」
「ああ」
ラグナは剣を手に取った。
鞘へ収める。
「旅に出たばっかりの頃は」
「世界を救うなら、戦わなきゃいけないって思ってた」
勇者になれなかった。
八歳の頃から十年間。
ただ、剣を振り続けた。
何故そこまで世界を救いたかったのか。
自分でもよく分からなかった。
記憶には、大きな穴が空いている。
それでも何かを守らなければならない。
そんな気持ちだけが、ずっと残っていた。
「俺には」
「勇者みたいな特別な力もなかったし」
「魔法も使えなかった」
「だから」
ラグナは鞘に収めた剣を見る。
「これしかないと思ってた」
剣を振り続けて、強くなって魔物を倒す。
そして、誰かを守る。
それが自分に出来ること。
そう思っていた。
「ガルドから剣をもらった時も」
ラグナは続ける。
「守るために使うって決めてた」
「でも」
ほんの少しだけ。
笑う。
「守るってことが何なのか」
「俺は、まだよく分かってなかったのかもしれない」
ライカは黙って聞いていた。
「旅に出て」
ラグナは、少し懐かしむように目を細めた。
「最初にリオンと会った」
「リオンは、言葉だけで襲ってくる死霊を止めて」
「俺の傷も癒してくれた」
ネクロマンサーの父を持つ少年。
父からは、自分と同じネクロマンサーになることを求められていた。
けれどリオンは、それを望まなかった。
死霊を操り、その力で人間を傷付ける。
そんな父親と同じ道を、歩きたくなかった。
「リオンの父親は」
ラグナは静かに続ける。
「死霊を使って、一つの城を滅ぼした」
ライカがラグナを見る。
「城を……?」
「ああ」
そこには大勢の人間がいた。
そして、一人の姫がいた。
死霊になった姫は、リオンへ一つの願いを託した。
多くの人を救ってほしい。
その想いと共に、一つのロザリオを託した。
「それで」
「リオンは、人を癒す力を持つようになった」
傷付けるためではない。
誰かを救うための力。
父と同じ道を求められていた少年が、誰かから託された願いによって自分の道を見つけた。
「俺は最初」
ラグナは言う。
「世界を救うなら、強くなきゃいけないって思ってた」
剣を振る。
敵を倒す。
戦えるだけの力を持つ。
それが、世界を救うことだと思っていた。
「でも」
「リオンを見てたら」
遠くを見て、ふっと笑う。
「誰かを救うのに、敵を倒す必要なんてないんだって思った」
ライカは黙って聞いていた。
「その後」
「エルと会った」
狩人の村で育った少女。
その背には弓矢とハープがあった。
「エルはさ」
「最初、普通の矢を使ってたんだ」
ライカが首を傾げる。
「今のと違う?」
「ああ」
「ちゃんと先が尖った、普通の矢だ」
狩人なら当たり前に使うもの。
獲物を射るための武器。
けれど、エルの放った矢は的に当たらなかった。
魔物にも当てることが出来なかった。
「下手だった?」
「……いや」
ラグナは少し笑う。
「わざと外してたんだ」
傷付けたくない。
その気持ちで、誰にも気付かれないように外し続けていた。
だから三人で考えた。
ラグナと。
リオンと。
エル。
どうすれば傷付けずに戦えるのか。
どうすれば、エルの矢を誰かを傷付けるためではないものに出来るのか。
「それで」
ラグナは手で丸い形を作る。
「矢の先を丸くした」
「丸く?」
「ああ」
「当たっても、大きな傷にならないようにな」
最初から上手くいったわけではない。
材料を探して何度も試し、失敗するたびに考えた。
三人で、何度も試した。
そしてようやく出来上がった。
今、エルが使っている先端に丸い玉の付いた矢。
「それでも」
「ちゃんと戦えた」
魔物を殺さなくても。
鋭い矢で、身体を貫かなくても仲間を守ることは出来た。
「その時にさ」
ラグナは腰にある剣を見る。
「多分、分かったんだと思う」
ライカも同じ剣を見る。
「武器を持ってるからって」
「傷付ける使い方しか出来ないわけじゃない」
普通の矢では戦えなかったエル。
だから、傷付けない矢を三人で作った。
それは誰か一人が思いついた答えではない。
三人で、一緒に見つけた答えだった。
「リオンが」
「傷付ける力じゃなくて、救う力を使って」
「エルが」
「傷付けなくても戦える方法を探して」
ラグナは。
少しだけ笑った。
「俺も考えるようになったんだ」
「倒す以外にも」
「守る方法があるんじゃないかって」
ライカは剣を見る。
「でも」
「ラグナは剣を持ってる」
「ああ」
「剣は」
「傷付けるものじゃないの?」
ラグナは、腰の剣を見て何度か目を瞬きした後に答えた。
「そうだな」
否定しなかった。
「剣は」
「誰かを傷付けられる」
「俺だって、それは分かってる」
ラグナは。
剣の柄へ手を置く。
「だから」
「使い方は、自分で決めたいんだ」
ライカの目が僅かに動く。
「傷付けられるからって」
「傷付けなきゃいけないわけじゃない」
「戦えるからって」
「戦わなきゃいけないわけでもない」
夜の風が。
二人の間を通り抜ける。
「エルの音楽で眠らせられるならそれでいい」
「話して分かるなら話せばいい」
「逃げられるなら、逃げたっていい」
ラグナは静かに笑った。
「それでも駄目なら」
「その時は俺が剣を使う」
「でも、出来るなら」
剣から。
手を離す。
「傷付けない方がいいだろ」
ライカは何も言わなかった。
あまりにも簡単な言葉だった。
特別な理由ではない。
難しい考えでもない。
傷付けなくてもいいなら傷付けない。
ただそれだけ。
「……怖くないの?」
ライカが聞く。
「何が?」
「傷付けなかったら」
「自分が、傷付くかもしれない」
昨日、レイラがラグナへ話したことをライカは知らない。
けれど、同じところへ辿り着いていた。
ラグナは少しだけ空を見る。
「怖いよ」
ライカが目を瞬かせる。
「俺だって怪我したくないし、死にたくもない」
「皆が傷付くのも嫌だ」
ラグナは当たり前のことのように言った。
「だから」
「傷付かない方法を探すんだろ」
ライカはじっとラグナの目を見る。
「自分も」
「相手も?」
「ああ」
「どっちかしか助からないって決まってるなら、選ばなきゃいけない時もあるかもしれない」
ラグナは少しだけ表情を曇らせる。
「でも」
「最初からそうだって決める必要はないだろ」
出来るかもしれない。
話せるかもしれない。
助けられるかもしれない。
なら、諦めない。
「……それに」
ラグナが言う。
「俺一人だったら」
「多分、こんな戦い方は出来てない」
ライカが首を傾げる。
「リオンがいる」
「エルがいる」
「ルミナスもいる」
そして。
ライカを見る。
「ライカもいる」
「わたしも?」
「ああ」
ラグナは笑う。
「俺に出来ないことを」
「皆がやってくれるからな」
剣しかなかった少年が旅に出た。
そして、癒す力を持つ少年と出会った。
傷付けない方法を探す少女と出会った。
魔王から生まれた勇者と出会った。
魔族たちと出会った。
人間と出会った。
海の底で、一人きりだった少女とも出会った。
「だから」
ラグナは言う。
「俺も変わったんだと思う」
ライカは、その言葉を静かに聞いていた。
変わった。
少し前、ユーリにも言われた。
あなたの変化に、突き動かされたのは僕の方だと。
あの時は、よく分からなかった。
自分の何が変わったのか。
けれど、今なら少しだけ分かる気がした。
人は、誰かと出会って変わる。
一人では知らなかったことを知る。
出来なかったことが、出来るようになる。
考えなかったことを考えるようになる。
ラグナもそうだった。
最初から、今のラグナだったわけではない。
「……ガルドも?」
ライカが尋ねる。
「ん?」
「ラグナを変えた人?」
ラグナは、少し驚いて。
それから笑った。
「ああ」
「多分、一番最初にな」
ライカは。
昼間に会った男を思い出す。
大きな身体に低い声。
ぶっきらぼうな話し方。
リリアナとは全然違う。
さっきも、大切なことを言い忘れた自分を責めなかった。
文字が書けないことも責めなかった。
出来ないなら、別の方法を教えてくれた。
そして、昼間約束してくれた。
傷一つ付けない。
ライカは、少しだけ俯く。
「……やっぱり」
「ん?」
「リリアナとは」
少し考える。
「全然違う」
ラグナが吹き出した。
「だから最初から言ってるだろ」
「でも」
ライカは、鍛冶場がある方を見る。
「少し」
言葉を探す。
「分かったかも」
「何が?」
ライカはすぐには答えなかった。
自分でも、上手く言葉に出来なかった。
ただ、ラグナがどうしてこんな人なのか。
少しだけ、分かった気がした。
「……なんでもない」
「そうか」
ラグナはそれ以上聞かなかった。
そして、途中になっていた紙を手に取る。
「ほら」
「続き書くぞ」
「うん」
ライカは。
ラグナの隣へ、少しだけ近付いた。
「他に何かあるか?」
「水」
「それは書いた」
「磨く」
「それも書いた」
「……じゃあ、ない」
「本当に?」
「多分」
「ガルドに多分って言うと怒られるぞ」
「怒ってなかった」
「そういう問題じゃない」
ライカは少しだけ首を傾げた。
ラグナは、小さく笑いながら最後の文字を書く。
その時。
村の道を歩いていた男が、ふと二人へ目を向けた。
赤い髪には見覚えがある。
子どもの頃から、暇さえあれば剣を振っていた少年。
そのラグナが今は、剣ではなく紙を膝に広げていた。
しかも。
隣に座っているのは、見慣れない黒髪の少女だった。
人間ではない。
昼間、ラグナが連れてきた魔族だ。
男はしばらく二人を眺めていた。
「……ラグナ」
ライカが小さく声を掛ける。
「ん?」
「あの人、ずっとこっち見てる」
ラグナが顔を上げた。
男と目が合う。
「こんばんは」
「お、おう」
男は妙にぎこちなく答えて、そのまま歩いていった。
ライカは首を傾げる。
「どうしたんだろう」
「さあ」
ラグナも首を傾げる。
そして二人は、何事もなかったように紙へ視線を戻した。
夜の村。
静かな家の前。
一枚の紙。
一本の剣。
そして、二人の話し声。
特別なことは何も起きていなかった。
ただ、知らなかったことを一つ知った。
出来ないことを誰かに助けてもらった。
分からないことを聞いてみた。
それだけだった。
それでも、そうやって人は少しずつ誰かを知っていく。
誰かから受け取ったものを、また別の誰かへ渡していく。
ラグナの剣は、今夜も誰も傷付けることなく。
静かにその腰の鞘に収められていた。




