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月光が照らす君が割ったのはアヤカシ者か俺の心臓か〜ありきたりな現代奇譚〜  作者: 貝月 恵芙


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第二十一話 その笑顔の意味は

「ちょっと待って。」

弱まらない歩みでその場を離れていく鈴葉をダッシュで追いかけて手首を掴む。

振り解かれないように今度は強く。

「なに!」

その手の強さに驚いたように視線をそろえて奏を睨みつける。

「鈴葉さ。」

あ。

「もう鈴葉って呼ぶことにするわ。いいよね。」

「そんなの好きにして。」

一瞬の隙を見せて、またすぐに気丈とした態度に戻る。

なにがそうさせるのさ。

「あんまり深入りするつもりなかったんだけど。」

そう前置きをした瞬間に悟った。

もう後戻り出来ない。春からの大学…通えるのか?おれ。

「なにが鈴葉をそこまでにするの?」

なんの主語もない言葉。

でも、さっきのを見たおれやさっきのを見せた鈴葉ならなんの話がしたいのかはすぐに分かる。

「別にあなたに関係ないでしょ。」

冷たさの半減した声。迷いがあるんだ。

「これ聞くってことはさ、関係ないで済ませるつもりないってことだよ。」

「は…」

「信長さんや花火にちょっとは聞いてた。」

鈴葉の形の良い眉をひそめる。

「詳しくは何も教えてくれなかったから。2人とも本人から聞けって。」

あの2人の信用を無くさせてはいけないと焦る。

「そう。」

2人の名前を出したからだろうか。それとも別の理由があるのか分からないが落ち着いた声で鈴葉は話し出した。

「私の話を聞くってことがどういう意味を持つのかまでは聞かなかったのかしら。」

冷静に怖いことを含む。

「どういう意味って…?」

「私のバックグラウンドは底が見えないくらいに暗いってこと。」

鈴葉に出会って初めて見た笑顔は恐ろしいまでに美しく、そして、恐ろしいまでに引き返せない場所に自分が飛ばされていくのだと予感するものだった。

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