第26話 星降る夜の、永遠の約束
夏の終わりを告げる風が、明鏡学園の校庭を吹き抜けていった。
「流れ星、今夜見に行かない?」
ひなたの突然の提案に、湊は少し驚いた。
「ペルセウス座流星群が見頃なんだって」
「いいな、行こうか」
二人はその後、天体観測に向けて準備を進めた。
夕方、二人は朝倉家を出た。誠一郎も意外なほど簡単に許可を出してくれた。
「星を見るというのはいいことだ。自然の神秘に触れることで、人は謙虚になれる。ただし、あまり遅くならないように」
二人は電車に乗り、都心から少し離れた丘へと向かった。
天文台に到着すると、すでに多くの星が夜空に輝いていた。
「すごい……こんなに星が見えるなんて」
「街中では見られない光景だな」
次第に、流れ星の数が増えていった。複数の流れ星が現れ、空に光の筋を描いていく。
「ねえ、湊くん。昔から……流れ星に願い事をすると叶うって言うよね」
「そうだな」
「湊くんは何か願い事、ある?」
「あるよ。ひなたと一緒にいる、この時間がずっと続きますように……かな?」
ひなたの目に涙が浮かんだ。
「湊くん……」
「ひなたは? 何を願うんだ?」
「私も……湊くんと同じ願い事。いつまでも一緒にいられますように……」
再び流れ星が空を横切った。
星空の下、二人は静かに寄り添った。
「湊くん……約束したいことがあるの」
ひなたが決意を込めた声で言った。
「約束?」
「うん……湊くんの心を、いつも大切にするって約束。湊くんが無理をしている時、悲しい時、本当は助けて欲しい時……全部分かるようになりたいの」
流れ星が再び空を横切った。
「ひなた……俺も……朝倉の本音も、嘘も、全部受け止めていく」
「私、嘘はもうつかないよ……」
「いや、時には必要な嘘もあるさ。重要なのは、その奥にある気持ちだから」
「うん……」
ひなたはそっと湊に寄りかかった。
「次のゲームを考えたんだ。『ひなたを幸せにするまで俺の勝ち』っていうゲーム」
湊の言葉に、ひなたの目が潤んだ。
「それって……」
「一生続くゲームになるけど……いいよな?」
「うん……でも私も……『湊くんを幸せにするまで私の勝ち』っていうゲームを始めるから」
「いいね。どっちが勝つか、競争だな」
「でも、このゲームは……両方が勝てるゲームだよね」
「そうだな」
二人は星空の下で抱き合った。
無数の星々が見守る中、湊とひなたの新しい「ゲーム」が始まった。
湊はポケットから小さな箱を取り出し、ひなたに差し出した。
「これ……何?」
「開けてみて」
ひなたが箱を開けると、二つの小さなペンダントが入っていた。星型と四葉のクローバー型の、シルバーのチャーム。
「これは……」
「一つは俺が、一つはひなたが持つんだ。お互いがずっと一緒にいるための……証として」
「うれしい……」
ひなたの瞳から一筋のしずくがこぼれ落ちた。湊は優しくひなたを抱き寄せた。
その時、一筋の大きな流れ星が二人の頭上を横切った。まるで彼らの誓いを祝福するかのような、明るい光の帯。
「願い事、今すぐしよ!」
湊とひなたは同時に目を閉じた。二人の願いは、言葉にせずとも同じだった。
(いつまでも一緒にいられますように)




