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第22話 認められた恋と、父親たちの繋がり

日曜日の朝、湊が食事をしていると、父親が現れた。


「おはよう、湊」


脳外科医の桐島亮介は疲れた様子だったが、珍しく朝食の席についた。


「父さん、珍しいね」


「手術が続いて疲れたよ。……最近、表情が変わったな。何かあったのか?」


湊は一瞬、言葉に詰まった。


「別に……」


「私も少しは嘘を見抜くことができるんだぞ」


その言葉に、湊は驚いて顔を上げた。


「父さんも……?」


「医者は患者の微表情から多くを読み取る。あの事故の後、お前は変わった。人の嘘を見抜くようになったらしいな」


「玲奈から聞いたの?」


「ああ。だが、私自身も気づいていたぞ。その力は諸刃の剣だ」


湊は初めて父と自分の能力について話していた。


「父さんだったら……この能力をどう思う?」


「医者として言えば、それは他人の苦しみを理解する能力だ。嘘は、多くの場合、弱さや恐れから生まれる。お前が何か大切なものを見つけたようだな。それを守れるかどうかは、その能力をどう使うかにかかっている」


湊は黙って頷いた。


「今日はどこかに出かけるのか?」


「はい……友達の朝倉さんの家に招待されています」


「朝倉? あの教育評論家の?」


亮介が少し驚いた表情をする。


「はい。朝倉さんの娘さんとクラスメイトで……」


亮介はしばらく湊をじっと見つめていたが、やがて微笑んだ。


「わかった。行っておいで。朝倉誠一郎先生には、学会でお会いしたことがある。厳格な方だが、子供を愛する気持ちは本物だ。彼の信頼を勝ち取るのは、簡単ではないだろう。だが……お前ならできる。お前になら相手の本当の気持ちが分かるはずだ」


初めて父親から能力を認められた気がした。湊は小さく頷いた。


「ありがとう、父さん」


昼近くになり、湊はひなたの家族との初めての食事会に緊張していた。

ひなたのマンションに到着すると、彼女が既にロビーで待っていた。


「湊くん!」


「緊張してる?」


「ま、まあな……」


「でも大丈夫だよ。お父さんもお母さんも、湊くんが来るの楽しみにしてるよ」


湊は手土産の花束と、母が作ったクッキーを渡した。ひなたはとても喜んでくれた。

リビングに通されると、そこには朝倉誠一郎が座っていた。


「こんにちは、桐島くん」


誠一郎は立ち上がり、湊に手を差し出した。その握手は力強く、真剣な眼差しが湊を見定めているようだった。

会話は自然な流れで進み、最初の緊張は徐々に解けていった。


「ところで桐島くん。君とひなたの関係だが……真剣なんだろうね?」


「はい。私はひなたさんのことを本当に大切に思っています」


「それは良いことだ。しかし、お互いの学業を疎かにしないことが条件だ。わかるね?」


「もちろんです。むしろ、お互いに高め合える関係でありたいと思っています」


誠一郎はしばらく湊を観察した後、ため息をついた。


「実は私も若い頃、同じような経験をした。優秀な恋人との切磋琢磨が、私を今の地位まで押し上げてくれた。彼女は今、私の妻だ」


意外な告白に、湊は驚いた。


「大切な人を守りたいという気持ちは、理解できるつもりだ」


「ひなたさんの将来を一番に考えます」


誠一郎は妻を見て、少し表情を和らげた。


「そうだな……確かに最近のひなたは生き生きしている」


食事は和やかな雰囲気の中で進んだ。

食事の後、ひなたが湊を自分の部屋に案内した。


「女の子の部屋は慣れてなくて……」


「うん……私も緊張する……」


机の上には、湊からもらった花が花瓶に活けられていた。


「お父さん、湊くんのこと気に入ったみたい」


「そうだね……もっと厳しい人だと思ってたんだけど」


「大切なものに対しては、ちゃんと理解してくれる人なの」


その後、湊は礼儀正しく帰りの挨拶をした。


「今日はありがとうございました」


「また来なさい」誠一郎は意外な言葉をかけた。「君との会話は興味深かった。そして……ひなたの笑顔を見せてくれてありがとう」


湊はその言葉に驚いた。誠一郎の表情からは、嘘の兆候が一切見えなかった。完全な本音だった。

ひなたは湊をエレベーターまで送った。


「うまくいったね……」


「ああ……予想以上に」


エレベーターが到着し、扉が開いた。


「じゃあ……また明日学校で」


湊はエレベーターに乗り込む前に、ひなたの頬にそっとキスをした。

「また明日」

湊の心は不思議な充実感で満たされていた。また一つ、二人の関係は深まったように感じた。

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