表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/27

第15話 突然の闖入者と、ステージ上の告白

「ひなた!」


全員が驚いて振り向くと、そこには厳格な表情の中年男性が立っていた。


「お、お父さん……?」


ひなたの顔から血の気が引いた。

朝倉誠一郎――教育評論家として名高い彼は冷徹な目で教室を見回した。


「こんな場所で何をやっているんだ」


彼の一言で、教室は静まり返った。


「父さん、これは文化祭の――」


「黙りなさい」


誠一郎の声は低く、しかし教室中に響き渡った。


「こんな馬鹿げたことに時間を浪費してるとは思わなかった。家に帰りなさい」


「でも……」


「成績が2ランク下がったのは、こんなことに気を取られているからだろう。いい大学に行きたいなら、今からでも勉強に戻るべきだ」


ひなたの肩が落ち、彼女の目に涙が浮かんだ。教室の生徒たちは固唾を呑んで見守っていた。

湊は一歩前に出た。普段なら決して前に出ない彼が、今日は違った。


「朝倉さん」


湊の声は、自分でも意外なほど落ち着いていた。

誠一郎がゆっくりと振り向いた。その眼差しは鋭く、湊を見透かしているかのようだった。


「君は誰だ?」


誠一郎の声は柔らかいのに凄みがあった。

湊の能力が急激に反応する。ドクンと心臓が跳ね、視界が一瞬シャープになった。


(この人も……俺と同じ能力を持っているのか?)


湊は直感した。誠一郎も人の嘘を見抜ける。だからこそ、ひなたはあれほど「完璧」であることに執着していたのだ。

しかし、湊の能力がさらに深く反応する。誠一郎の眼の奥に「心配」「怖れ」「愛情」が見えた。


(朝倉さんは……ひなたを愛している。でも、どう表現すればいいのか分からないんだ)


一瞬の動揺。しかし湊は深く息を吸い、恐れを克服した。


「桐島湊です」


湊は一歩も引かなかった。むしろ前に出て、ひなたとその父親の間に立った。生徒たちからどよめきが起きる。


「ひなたさんは、文化祭のために一生懸命頑張ってきました。今日だけは、彼女に楽しませてあげてください」


「君のような優秀な生徒が、こんな無駄なことに時間を使うべきではない」


「無駄ではありません」


湊の声には、かつてない情熱が込められていた。


「学業だけが全てではありません。人との繋がりや、友情、そして……愛情も、人生には必要なものです」


誠一郎の眉が寄った。


「愛情? ひなたのことを言っているのか?」


「はい。私はひなたさんのことを本当に……大切に思っています」


教室がざわめいた。湊の告白とも取れる言葉に、ひなたの頬が赤く染まる。

誠一郎は沈黙した。彼は改めて教室を、そして娘を見た。

ひなたの表情には困惑と怯えと希望が入り混じっていた。しかし、そこには湊が初めて見る強さもあった。


「……わかった。今日一日だけだ」


誠一郎はついに言った。彼は湊に冷たい視線を向けた。


「君とは後でじっくり話す。娘の将来に何かあれば、君に責任を取らせる」


その言葉には明らかな警告が込められていた。そして、教室を後にした彼の背中からは、厳格な教育者としての責任感と、娘を思う愛情が複雑に入り混じっていた。


教室がざわめき始め、柏木先生が状況を収拾しようとする。


「え〜と、少し予定が狂いましたが……続けましょうか?」


湊はひなたに近づいた。


「大丈夫か?」


ひなたは小さく頷いた。


「うん……ありがとう」


「演技、続けられるか?」


「うん……大丈夫」


二人は再びステージに立ち、演技を再開した。しかし、先ほどまでの雰囲気とは違い、二人の間には真剣な決意が漂っていた。

湊がひなたの手を取り、静かに言った。


「俺は……お前のことが好きだ」


ひなたの目に涙が浮かんだ。それは演技ではなく、本物の感情だった。


「私も……あなたのこと……好き」


彼女の言葉は小さかったが、教室中に響き渡った。

観客からは大きな拍手が巻き起こり, 柏木先生は感動のあまり目を拭いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ