呪われた王子4
「彼女が私にもたらしたものは、色だった。それは呪術ではない。魔術なのだよ」
かつてない強固な意志を宿した王子の瞳を前に、私は言うべき言葉を見つけられずにいました。
しばらくして表の扉が開き、赤い髪を束ねた娘が入ってきました。彼女は私に気付くと、顔を伏せたまま小さく会釈し、奥の部屋に消えていきました。その娘の姿を見つめる王子は、穏やかな笑みを浮かべておりました。私はそのような王子のお顔を初めて見ました。
「王子にかけられたものが、呪術か魔術かどちらであったにせよ、もう王子はお戻りになりません。
ヨアンは王子に誓ったとおりに国王へすべてを語った。王は直ちに王子を追放し、王子の弟と隣国の王女との婚礼を執り行った。
ヨアンには分からなかった。
赤髪の娘が王子にもたらしたものは、破滅の呪術か、幸福の魔術か。だが、彼の微笑みを思い浮かべると、そんなことはどうでもいいことのように思えた。
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「魔女だろうが何だろうが、あの女の見張りも今日までだ」
ロウソクの火が揺らめいた。リリアンはふと我に返った。
シモンの赤ら顔が見える。視線を落とすと、自分の手がちぎったパンをひとかけ掴んだまま動きを止めていた。彼は急いでそれを口に放り込むと「明日だったか」と無関心を装って答えた。
「ああそうさ」
シモンは頷いた。
「明日になっちまえば、あの女は火の中だ。口を利くのだけでも不名誉な俺らに刑場まで引っ張られて歩くんだ」
シモンはざまぁみろ、と愉快そうに笑った。
そうなればもうベルの顔を見ることができなくなる。
リリアンはただの牢番だ。いなくなったものを見張る必要などない。
処刑されてしまうのか。それは知っていた。石打ちの後、火炙りになるのだろう。それも知っていた。
「きっと、あの広場も祭りの夜みてぇに埋め尽くされちまうだろうなぁ」
「そんなに大勢、暇な奴がいるのかい」
「暇なものか。むしろ大概は忙しいに決まっている。けどよ、あの大貴族が処刑されるんだぜ。見逃せないショーじゃないか」
きっと大勢見に来るぜ、とシモンは得意げに笑った。
「なんせあいつぁ、有名な魔女だからな」




