呪われた王子3
王国で舞踏会が開かれただろう。王は私の婚約者をそこで決めるつもりだったのだよ。それは皆知っていたことであったし、私も異論はなかった。
ヨアン、お前にはあの広間がどう見えていた?
……そうか。豪華な料理に色とりどりのドレスで着飾った女たち。大勢の者はお前と同じものを見ただろう。
私には、全てが灰色に見えたのだよ。
王は隣国の王女を大変気に入っておられた。王女の国は多くを持っていた。彼女が選ばれた理由は、たったそれだけのことだったのだ。
彼女は灰色のドレスを着ていても美しい人だった。灰色の光の中、私は彼女と踊った。そして彼女との婚約は決まってしまった。
灰色の舞踏会の数日後、私は気晴らしに森で狩りをした。お前もいたね。立派な鹿を見つけ、取り逃がすまいと焦って馬から落ちてしまったのだ。あまりに夢中に追っていたものだから、お前たちとは逸れてしまった。足を痛めた私は、去っていく自分の馬を見つめながら己の愚行を悔いていた。
心にもない人と踊ったことを……。
彼女と出会ったのはその時だった。
燃えるような赤髪の娘であった。彼女は私に肩を貸し、家に招き入れ手当をしてくれた。私が礼を言うと、彼女は無愛想に「怪我人を森に放ってはおけない」と言った。娘は寡黙であったが、私が微笑みかけると、彼女もぎこちなく笑い返してくれた。青色の瞳が深く澄んでいた。
灰色の王宮で王女と会っているときも、私の心は森で出会った娘のことを忘れられないでいた。
王女と言葉を交わしながらも、あの娘の声を聞きたいと思った。王女と歩けば、彼女と歩くさまを想像し、王女の顔を見れば彼女の顔をもう一度見たいと願ってしまう。私はすっかり彼女に心を奪われてしまった。
王女との婚礼の日が決まったとき、私はどうしてもあの娘に会いたくなった。
会ったらそれで諦めるつもりでいたのだよ。それは本当だった。その時までは。
私は城を抜け出し、彼女を訪ねた。しかし、娘は私が王子だと分かると扉も開けずに追い返した。私はこのままでは諦めきれず、もう一目だけ会ってはくれないだろうかと懇願した。すると、彼女は青いバラを一輪くれるなら私に会おうと約束してくれた。
私は国じゅうを探させたよ。青いバラを見つけ出してやろうとしたのだ。だが、婚礼の日が数日後に差し迫っても青いバラは見つからなかった。彼女は私に存在しないものを探させたのだ。
私は彼女のもとに赴き、青いバラはなかったと告げた。その時私は娘を忘れるつもりでいた。しかし、戸口に彼女の求めたものの代わりとして白いバラを置いたとき、その閉ざされていた扉は開いた。娘は私を騙したことを詫びて、再び家に招き入れてくれたのだ。
今まで聞きたかったことや言いたかったことを話しているうちに、私は彼女と離れてしまうのが惜しくなってしまった。
私の国を思う気持ちに変わりはない。しかし、王位を継ぎあの王女とともに国を治めるより、生涯をこの娘と過ごしたいと思った。娘はもう私を拒まなかった。だから、私は彼女といる。
これは呪いなどではない。私自身の意志なのだ




