呪われた王子2
私はあなた様の命を受け、朝日が昇るとともに城を出ました。王子のもとへ馬を走らせている間も、私は心配で仕方がありませんでした。あの方が、この世で最も敬愛する知恵者であり、幼い頃から日々を共に過ごしてきた無二の友人でもある方が、呪われていると聞いたとき、居てもたってもいられぬ心持でした。
心無い魔女にひどい仕打ちを受けてはいないか考えるだけでも恐ろしく、それと同時に魔女への怒りを募らせておりました。
よくも王子を誑かしおって。目的は富か、地位か、名誉か。いずれにせよ王子は絶対に連れ戻してみせる、と私はさらに馬を急かしました。
森の中は暗く、進むたびに道は険しくなっていきました。
すっかり日が高くなり薄暗い森の中にも光を届ける頃、とうとう私の馬は進むことができなくなっていました。私は木に愛馬を繋ぎとめると、先を急ぎました。
誰も足を踏み入れぬ道なき道を歩き続けた先に、魔女の家は建っておりました。
家と言っても、古い木とレンガとを組んでできた粗雑な小屋のようなものでした。得体の知れない草花が、みすぼらしい木の柵で囲まれた庭のあちこちに植えてあり、薄汚れた石の積まれた井戸はどこか歪な形をしておりました。
凡そ王子に相応しい場所ではないと思いました。
物置小屋にボロを纏った青年が背を丸くして蹲っておりましたので、私は王子の行方を尋ねようとその背中に声をかけました。ふり返った青年は私を見ると驚いた表情を浮かべておりました。この青年こそ私の尋ね人だったのです。
王子は立ち上がり、私についてくるように仰いました。そして、傷んだ木板の扉を開けると、魔女の家の中に入っていったので御座います。
中は狭く、やはり薄暗く感ぜられました。日は高く輝いていましたが、森の奥に佇む魔女の住処にまでは光を届けることができないようでした。
「私を迎えに来たのであろう」
王子は何もかも分かっておられました。王子は全く正気で御座いました。
私は城に帰るよう懇願しました。皆、あなた様を心配しておられます、と。しかし、王子ははっきりと城には戻らないとお答えになりました。
「誰よりも聡明で高貴なあなた様が何故このような場所に?目をお覚まし下さい。支度をなさって私と共にお戻りください」
「それは出来ない」
「何故です?やはり、魔女が呪術を使ったというのは本当なのですか……」
王子は悲しそうなお顔になられると、呪いなどではないと仰いました。
「ヨアン、呪いなどではないのだよ。そして、彼女も魔女ではない。普通の娘なのだ」
「ならば何だと言うのです」
王子はしばらく押し黙ったあと、ようやく重い口を開きました。
「皆が呪術と呼ぶものの話をしよう。ヨアン、いいかい。お前が見聞きしたことをそのままに王へ伝えるのだ」
「はい、仰せのとおりに」




