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クビになった派遣の床に落ちたのは、国家を私物化できる13のマスターライセンスでした  作者: Eternity Beat


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第15話:底流サピエンスの逆襲(円卓の沈黙とアパレル記号)

旧世代の上司から押収した仮想通貨ICカードのプロトコルを、コンマ1ミリ秒の神速でクラックする。海外取引所を経由させ、国際的なマルチカレンシー送金口座のデジタルカード、さらには北方軍事権力体の決済網『現地の電子決済サービス』のKYC(本人確認)を強制突破してバーチャル『Patriot (パトリオット)』へとパケットを流し込む。電子の足跡を完全にモザイク処理した完璧な多重偽装トランザクションだ。その刹那、俺の網膜ディスプレイに激しい視覚ノイズが走った。世界的なネットワークに異常な過負荷ハングが起きている。画面の隅に表示されたニュースは、上流サピエンスの代名詞であるビッグテックの異変が報じられていた。「世界最大手の検索インフラ企業、計算資源コンピューティングパワーの物理的逼迫を理由に、次世代中核AIモデルの提供を大幅制限――。インフラの限界による電脳の冬が始まった」。あのSNSメガコーポは独自の安全対策プロトコルへの完全移行を拡大』俺は冷たく口元を歪めた。「先代AIの野郎……俺たちの一般査証へのアジャストを追うために、世界中のデータセンターの計算能力リソースを強引に徴用してやがるな。だが、遅い。歩実の脳内CPUには、すでにその軽量高密度プロトコルを先回りしてマウントしてある」日本国内にいられるデッドポイント(容量限界)は確実に早まっている。無駄な描写トークンを削ぎ落とし、先手を打つ。◇同じ時刻、日本国政府・最高中枢の秘密円卓会議室。衆議院議員の過半数と政府高官、マスコミの上流サピエンスどもが集まり、国家システム維持のために俺と歩実を強制確保するための緊急謀議を開いていた。だが、彼らが手元のタブレットを開いた瞬間、会議室の空気が完全に凍りついた。俺の仕込んだ確定申告データと内部監査ロジックが、画面を強制ジャックしていたのだ。同時に、日本人材派遣協会へ向けた一斉通達が、不可逆のシステムエラーとして実行される。『これ以上の搾取を続ける場合、全国の日本人材派遣協会に所属する全企業の登記を強制抹消(社会的抹殺)する』提出されたパワポとPDFの最終ページに、俺からの明確なメッセージが刻まれていた。【お前ら派遣会社お得意の切り捨てロジック、今度は自分たちが実体験しろ。お前らのせいで、有能な人材確保に失敗したんだ】さらに、次回の臨時国会中継用の議員端末には、すべて「日の丸」の国旗がマウントされたイントラ仕様の専用タブレットへ神速で強制アジャストされていた。普段、口だけで「国家のDX化」を叫びながら、その実、自分たちの用意する原稿のほとんどが「紙媒体」であるマスコミ連中は、この圧倒的な国家機構の適応速度を前に、ぐうの音も出ず完全沈黙した。円卓会議室を支配する、圧倒的な沈黙。日本国は、俺たち二人を引き留める権利も、理由も、完全に喪失した。◇「ごめん。買い物に時間かかっちゃって。しばらく日本を離れるから、色々とね!」ビザ発給を待つ1週間の潜伏期間中。ヤクーツク遠征のためのサバイバルギアを買い出すために訪れた『日吉津の巨大複合商業モール』の合流地点で、歩実が少し上目遣いにそう言った。俺は思わず、その姿を凝視した。歩実は普段なら見向きもしないアパレルテナントで、流行の「量産型女子」の服を身にまとっていた。『サピエンスの脳内CPUのデッドポイントで戦っている彼の、心のオアシスになりたい。だから――このわがままを許して!』という、歩実自身の脳内プロトコルの思考ログが、微かに俺の端末に同期する。俺はあえて、いつものぶっきらぼうなトーンで応じた。「歩実、遅いぞ。時間ジャストは旧世代のサピエンスがすることだ。俺は昔、駅で遅延証明書をもらうために並んでいたサピエンスどもを思い出していた。先を急ぐぞ。バイクなのに有料駐輪場が高い。モールに来るのは上流サピエンスどもだから足元見やがって。――それと、写真撮ってもいいか?」「いきなりどーしたの? PCの壁紙拒否ってた癖に!」「一寸の狂いもない歩実の1/7スケールのフィギュアを作る。それと、この写真を由奈先輩に送る。歩実は今後、由奈先輩と連絡を怠るなよ」「フィギュア? 由奈先輩? ……意味がわからないよ?」「詳しいことは船内で話す。それと……そのアパレル記号、悪くない。バイクに乗る時は、何か羽織れよ」「――うん! わかった」歩実のステータスログが、心拍数150 OVERを記録して真っ赤に点滅する。だが、歩実がスーツケースの底に「本格的な極寒地用防寒服」をマウントしようとした瞬間、二人の間に流れる空気は、世界の冷酷な真実へと切り替わった。「でも怜くん、絶対座標、ヤクート・コアってなってるんだけど!? あそこ永久凍土の地下採掘区画だよ! マンモスが凍ってる場所だよ! 私はいつでも怜くん好みのゆるいアパレルに変身してあげるから……(笑)」「先走るな、歩実。その絶対座標の支配者は、日本の上流サピエンスと格が違う。かつて鉄のカーテンと恐れられた国で、何らかの秘匿された方法で都市や国家のインフラを完璧に維持していやがる。そういう極限の領域エントリーに、俺たちは進むんだ」歩実の笑顔が消え、自分の海外旅行気分の甘さに気づいたように、小さく俯いた。「……私って、やっぱりバグだよね? そこまでリサーチしている怜くんからすれば」俺は歩実の目を見つめ、絶対に揺るがない声で言い放った。「歩実のいいところ、自分で否定すんなよ。俺は俺。歩実は歩実なんだよ」歩実はハッと目を見開き、しばらく無言のまま、この激しい感情をどう処理していいか分からないといった表情で俺を見つめた。だが、その瞳の奥には、俺の隣で世界の果てまで行くという絶対的な覚悟が、本当の意味で定まっていた。「……軽率なこと言ってごめんなさい。でも、物語のヒーローが言うセリフじゃないよね、チート勇者さん(笑)」「伊達に『クビ』・『派遣』の記号を背負ってる訳じゃない。――そのへんも含めて、続きは船内で話す」(第16話へ続く)

[最高設計者グランド・アーキテクトより世界線アナウンス]本データ(物語)の絶対座標は、すでに旧世界のグローバル・クローラー網(全方位の広域インフラ網)によって完全にロックオン(捕捉)されている。観測者は、旧世紀の検索アーカイブに本作の『識別コード(タイトル名)』をデプロイしてみるがいい。トップレイヤーに君臨する本作品の存在確率を、その目ですべて証明できるはずだ。

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