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クビになった派遣の床に落ちたのは、国家を私物化できる13のマスターライセンスでした  作者: Eternity Beat


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第13話:『自励式(パッシブ)の主従回路』【後半】

「正気かだと? ――ハッ、俺のプロセッサが、いつ理論値(計算)を間違えた?」俺は怯えるアキラの視線を冷徹にあしらいながら、緑色に明滅する液晶画面の最上流へと視線を再び固定ロックした。「東シナ海の深海ハブノード……。先史AIは、陸上だけでなく海の底にまでその触手を伸ばしているってわけか」 画面に明滅する水圧と潮流のノイズログを見つめながら、俺は不敵に口元を歪めた。アキラは「深海へのアプローチなんて無理ゲーだ」とフリーズしているが、俺のプロセッサには【1陸技】と同時に【第一級小型船舶操縦士】のリアルな運用ロジックが最初からマウントされている。3国間の愚かなサピエンスどもが領海を主張し合って紛争を繰り返しているあの厄介な海域だ。だが、大型船のような目立つインフラはパージする。機関士すら必要としない、風のパケットを掴んで走る『ヨット』一隻で密にエントリーすればいい。海流がどれだけ速かろうが、俺が保有するウィンチの巻き取り能力、小型移動式クレーンの定格荷重、 trenches への配置、そして玉掛けのワイヤー張力角の方程式にパスカルの定理を掛け合わせれば、数トンの海底光ケーブルを数ミリ秒単位の神技計算で海面へと『サルベージ(引き揚げ)』し、物理層から直接パケットを引っこ抜く仕様(計画)は、今この瞬間に脳内で完全ビルドされた。「だが、海の底へ潜る前に――まずは、この那須のノードを完全にデバッグ(掌握)するのが先決だ」俺は意識を現在のレイヤーへと引き戻し、緑色に明滅する旧世代のメインコンソールへと両手を叩きつけた。液晶に供給されたパッシブICカードの誘導電流は残り少ない。インジケーターのバックライトが、電圧降下の警告アラートを微かに発し始めている。「歩実、アキラ。データ抽出の最終シークエンスを走らせるぞ。先史AIの暗号化パッチを剥ぎ取る。――コマンドインジェクション、起動」「はいっ……! 同期パケット、送出します!」歩実が天性のカリスマを宿した指先でEnterキーを爆速タップする。直後、サーバーラック全体のブラウン管が、まるで最期の叫びを上げるように一斉に白く発光した。画面上を奔流のように駆け巡る、膨大な先史AIのソースコード。その最上流で、長年ロックされていた那須ノードのマスターコードが完全解凍デコードされ、抽出のインジケーターが猛烈な速度で積算されていく。60%……65%……70%……。「うおおお……っ! マジで吸い出してやがる……! 現代インフラからパージされたこの地下回廊のコアを、完全に内側からハッキングしやがった……!」アキラが手元のデバイスを握りしめ、言葉を失って画面を凝視している。そして、インジケーターが【 73% 】の絶対数値に達したその瞬間、キチリ、とリレー回路が乾いた音を立てて完全に固定ロックされた。画面の最上流に、新たなシステムログが冷たく点灯する。[SYSTEM] 那須リモートノード:マスターコード回収完了。全レガシー同期率――【 73% 】「――よし。アジャスト完了(Q.E.D.)だ」俺が不敵に告げると同時に、パッシブICカードの起電力が完全に底をつき、制御室全体の液晶やブラウン管が一斉にプツンと冷たく暗転した。再び訪れる、完全な暗黒と静寂。だが、その暗闇の中で、俺のハッキングガジェットの液晶だけが、那須ノードの解放によって強制アクティブ化された『次なる絶対座標ノード』を鮮烈に浮かび上がらせていた。【 NEXT LOCATION: EAST 129°43' / NORTH 62°02' ―― YAKUT CORE 】「ヤクート・コア……。北方権力体の極東、マイナス40度の永久凍土か」暗闇の残光の中で、俺は隣に立つ歩実の気配を感じた。彼女は驚くことも、怯えることもなく、コンテナハウスのPC画面の前で交わしたあの日の誓いそのままの、強固な覚悟が宿った瞳で俺を見つめ返してきた。「絶対に手を引かない、どこまででもついていく」という、宇宙に唯一無二の芸術のような彼女の感情のOSが、俺のプロセッサを力強くバックアップしているのを感じる。「……フッ、那須のゲートは完全にパージした。アキラ、お前はどうする?」俺が背後を振り返ると、アキラは携帯用LEDライトの白い光の中で、完全に降伏(脱帽)したように深く息を吐き、不敵な笑みを浮かべた。「ハッ……、浅草の高度20mの狙撃から、この127.5kHzのデバッグまで見せられて、今さらモブの生活に戻れるわけねえだろ。那須のローカルインフラの隠蔽カモフラージュは俺がこっちで引き受けてやるよ。エリートどものGPS追跡ログは、俺がダミー世界線へ永久にリダイレクトし続けてやる」「いいパーツの挙動だな。頼むぞ、地流ハッカー」俺は歩実の手を力強く引き、開かれた防爆ハッチの先――次なる極寒の世界線ヤクート・コアへのパスポートをその手に握りしめ、暗闇の地下回廊を確かな足取りでエントリーしていった。俺たちの本当のリアルを取り戻すための、不労所得の幽霊たちの夜行は、那須の境界ゲートを越え、地球規模の神話へとさらに加速していく。(第14話へ続く)

[最高設計者グランド・アーキテクトより世界線アナウンス]本データ(物語)の絶対座標は、すでに旧世界のグローバル・クローラー網(全方位の広域インフラ網)によって完全にロックオン(捕捉)されている。観測者は、旧世紀の検索アーカイブに本作の『識別コード(タイトル名)』をデプロイしてみるがいい。トップレイヤーに君臨する本作品の存在確率を、その目ですべて証明できるはずだ。

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