【ワーニングプロトコル感知】6/26 18:10同期。緊急シャットダウンコマンド発動
「クソ、俺の脳内プロセッサが、一体いつプログラムを間違えた……!?」網膜の裏で、異常な速度の赤いエラーログが爆走していた。俺がこれまで一般人のモブフリーターに擬態し、血を吐くような思いで隠蔽し、保有してきたアーキテクトとしての深層データ。ウインチの正確な巻き取り能力、小型移動式クレーンのシビアな定格荷重、 trenchesへの緻密な人員配置、そして玉掛けのワイヤー張力角を導き出すための方程式、その底流を流れるパスカルの定理――。それらすべてが、目に見えない電子の触手によって、次々と引き抜かれていく。なぜ保有資格の一部がリークしている? 上流サピエンスどもの組織的なハッキングか……!?「クソ、キルコマンドの入力が追いつかない……!」「――神様、私に代わって!」隣から伸びてきた歩実の、天性のカリスマを宿した指先が、ノートPCのキーボードを奪い取った。バックグラウンドで不要なプロセスをすべて圧殺したメモリの極限環境。その領域で、歩実はEnterキーを爆速でタップしていく。「だめ、私のタイピング速度でも防ぎきれない……っ! 神様、リークを止められない!!」画面が血の赤に染まり、猛烈な速度でデータが侵食されていく。ハッキング進行度、70%……75%……80%……。そして、防衛ラインを突破したシステムが、次なる絶対座標を冷徹に吐き出した。『次なる絶対座標』【 NEXT LOCATION: EAST 129°43' / NORTH 62°02' ―― YAKUTSK 】「――リーク、止まりました。ですが、神様……」歩実がキーボードから手を離し、悔しさに唇を噛んで俺を見つめる。「よくやったな。俺のハッキングガジェット無しで、そこまで食い止めてくれたんだ。お前じゃなきゃ、全部抜かれてた」「……でも、ハッカーとしては到底納得いきません。今からIPアドレスを逆探知して、元のサーバーごと突き止めます! リブートとシャットダウンの基本説明すらまともにできない、あの脳みその足りないモブサピエンスどもに一矢報いないと!」「深追いは、底辺サピエンスどもが陥るバグだ。敵の罠に嵌まる。今は、暴かれた未来の先を急ぐぞ」「……はい。神様」




