↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/77

押し寄せる後悔


 「……んっ…………」


 人の気配に目を覚ます。父の匂いに懐かしさを感じていたら、いつのまにか眠っていたらしい。


 なんとなく、ドアの向こうに気配を感じる。


 どうしよう……

 確かめようにも、ろくに動かない足だ。これ以上無理をすれば、治るのに時間がかかり、更に迷惑をかけるかもしれない。



 一瞬、ミオラの顔が浮かぶ。


 ……うん、やはり動かない方が賢明ですわね。



 気配も気になるが、もう一つ困ったことに気づいてしまった。



 ………………お手洗いに行きたいですわ。


 なるべく水を飲まないようにしていたが、考えるほど強く差し迫るものがある。


 寮では、エドルドの部屋に室内用のトイレがあった為、なんとか片足でこっそり行けたが、塔ではそうもいかない。


 階段をのぼったところにある為、片足だけでは厳しい。



 ううぅっ……本来の自室であれば、近いところにありましたのに……


 少しエドルドを恨んでしまう。いや、あれはそもそも自分が悪いのだ。中途半端な対応をしてしまい、甘い管理をしてしまったのだから……


 こんなことなら、ホア爺様に寝室に連れてきてもらった時、恥をしのんでお願いすれば良かった……


 後悔が押し寄せる。




 ドアの向こう側に間違いなく誰かいる!! が、アリシアはそれどころではなくなっていた。


 絶対に、今は夜中のはずですわ……ううぅっ、ここは、致し方ありませんっ……



 鏡を取り出し、なんとか落ち着いて魔力を混ぜる。


 ホア爺様……どうか、お気づきになって……どうか、来ていただけませんでしょうか……



 鏡にアリシアの魔力が光の言葉を紡ぎ、入っていく。



 そのタイミングとほぼ同時に、上からすごい速さで強い魔力の気配を感じる。



ドドドドドドドドドッッ!!!!!!



「!?」


「失礼っ!! アリシアお嬢様っ!!!! ご無事ですかっ!!??」

 強い魔力を身にまとい、怖い顔のホア爺が入ってくる。



「あ…………」


 鏡には、急を要するイメージを送ったつもりはなかっただけに、俊足でかけつけてきたホア爺に動揺してしまう。


「……っご無事、ですね? 何やら差し迫るような

魔力の乱れを感知しました故……このように急に入ってきてしまい、申し訳ありません」



 まさか、身体の緊張感まで伝わってしまうとは……内容が内容だけに、非常に頼みにくい空気だ。



「あの……誰かの気配がした気がしまして。それで目を覚ましたんですが……そのせいで……実は……」


「なんですとっ!? やはり身の危険を感じたのですねっ! すぐに各部屋を見て回ってきます故、こちらでお待ちくださいっ!!」



「あっ……」


 違うんです、違うんですー!!!!!!


 叫びたい気持ちを声に出す前に、ホア爺は飛び出て行ってしまった。




「……その、アリシア嬢…………」


「!?」


 少し開いたままの扉の隙間から、エドルドが申し訳なさそうに声をかけてくる。


「すまない……おそらく、その気配は僕だ……」


「エドルド様の?」


「なかなか眠りにつけず……どうせなら塔内に何も問題はないか見て回ろうかと……まさか、消した気配に気づかれるとは……驚かしてしまって、すまない。ホア爺が来て咄嗟に隠れてしまったのだが、すぐに追いかけ説明してこよう」


 そう言って、そのまま去ろうとするエドルドに、もう躊躇する余裕は残っていなかった。


 粗相をするよりは何百倍もマシだ。



「待ってくださいっ」


「アリシア嬢? ……入るぞ?」

 アリシアに悲痛な声で引き止められ、少しだけ扉を開ける。



「っ!?」


 そこには、顔を真っ赤にさせ、目を潤ませながら手を胸の前で握り締めるアリシアが、こちらをすがるような目で見つめていた。





「エドルド様、これからお願いすることは……どうか明日にはお忘れになってくださいますか?」



「なっ!?」


「どうか……どうか他言無用で……おっ、お願いが…………」




「〜〜〜〜っ!?」












「昨夜はくまなく塔をお調べしたのですが、侵入された痕跡はございませんでした」


 ホア爺はそう言いながら、朝食用に熱めのコーヒーを入れてくれる。


「………………」


「………………」


「何事もなく何よりですが、今後も気になることがあれば、昨夜同様にお呼びください。すぐに駆けつけますゆえ」


「…………ありがとうございます」


「今朝はお二人とも無口なようですが……やはり昨日の疲れがまだ残って……」


「大丈夫だ。魔力はもう回復している」


「そうです、大丈夫です。あの……今日は私の部屋をなんとか使えるようにして頂けると……」


「あぁっ、もちろんだ。すぐに片付ける」


「えぇ、そうですね。やはりお父様の寝室では疲れも取れませんね。最優先でとりかかりましょう」



「……ありがとうございます」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。