認める気持ち
「っ!?」
私の部屋が、元に戻っていますわ!!
早急にとりかかるという言葉通り、ホア爺含め、エドルドも部屋の改修を行った。
作業するにあたって、補強魔法、復元魔法などを積極的に使ったこともあり、塔は一時、仕込まれたトラップや妨害するゴーレムのオンパレードだったわけだが、エドルドがそれをさばき、ホア爺が改修をする。
元々、塔自体は時間とともに状態復元する魔法を発動させる魔法陣が仕掛けられている。だが、アリシアはそこに陣をつけ足すことで、そのスピードをわざと遅らせていた。
アリシアが住みやすいようにと少し改修したキッチンや快適に過ごせるようにといじった部屋を維持することが目的だからである。
それを何時間も、何百回も微調整することで出来たぎりぎりのラインを、この2人は強行突破し数時間でやってのけた。
「これで……部屋は……元通りだ……」
息を切らしながら話すエドルドと、呼吸1つ乱さないホア爺を見比べる。
「ありがとうございます。あの……やはりまだ魔力が全回復されてないのでは?」
顔がかなり疲れているように見えた。
「いや、大丈夫だ。本当に……」
「アリシアお嬢様、エドルド様のことはご心配いりません。魔力とは別のところで疲れてしまっているだけですので……」
「?」
「本当に、問題はないっ!!」
そう言い残し、エドルドはさっさと自室へと戻っていった。
「……どうして、こうも続くんだ……」
部屋へ戻り、壁に頭を打ちつけ一人落ち込む。アリシアの前ではいつも通りの振る舞いが出来ない。
それどころか、調子が崩れてしまう。先ほどの作業だってそうだ。
危ないから別の部屋で待つように伝えるも、やはり家族でもない男性に部屋をさわられるのは気が気ではないのだろう。
少し離れたところで、家具の置き場を伝えようとしてくれるのはいいが、ひっくり返った引き出しを立て直そうとすれば
「あっ……その引き出しは……あの、中は私があとで片付けますので……」
部屋に飛び散った破片を一気に片付けようと風魔法を使えば
「ッキャ……すみません。スカートが……」
など!!
「…………平静を装うのに疲れてしまった……」
あんな言葉を言われて、意識しない男がいるだろうか。昨夜だってあんな顔であんな言い方をされれば……誰だってそう誤解するだろう……
護衛すると言い切ったものの、初日から振り返れば、今のところ気絶、部屋の爆破、夜中の不審行動など……
むしろ邪魔なのでは?? 1人静かに打ちひしがれる。
護衛をしてアリシア嬢を守ることで責任をとろうと思ったのは本当だ。カレンが、まさかあんな卑怯なことをするとは思いもしなかった……
管理人がエドルドへアリシアを託し、やむを得ないとはいえ寮の自室へと一時避難として匿った時点で腹に決めていた。
エレナですら入ったことのない部屋へ、しかも寝室を貸したと分かれば、間違いなくキレるだろう。
何をするかわからない以上、全力全霊でアリシア嬢を守る。……だが、責任を取るというのは建前で、本音は足を怪我したアリシア嬢を見て、自分がキレてしまったのだ。守れなかった自分に腹が立ち、何がなんでも側にいようと思ってしまったのだ。
…………間違いない。この気持ちを認めよう。
「……どうやら、僕は……君が好きだ」
本当は、もっとずっと前からそう思っていた。だが、王族の揉め事に彼女を巻き込みたくなかった。
親同士が決めたこととは言え、仮だが婚約者候補がまだ数人控えている。
立場上、自分の気持ちで一緒になることは出来ないのだ。いや、もし本気で彼女との結婚を望めば、側室なり、下位の妃として迎えられるだろう。だが、実家に力のない者のその先に待っているのは、耐える日々なのだ、母を見てきたからこそ、好きの気持ちで彼女と一緒になろうなど、出来ない。
せめて、グレスビーが倒され、アリシア嬢の身の潔白を証明できる状況になるその時までは……どうか一緒にいたい……そして、出来ればもう少しかっこ良くいたい……
そう願わずにはいられなかった。




