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崩壊と再生  作者: 水綺はく


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3/11

3.〜♪この横顔、どこかで…

 「話しかけてみようよ」

休み時間、クラスの男子が数人で保乃を見ながらヒソヒソ話している。

保乃は離れた席で一人で呑気にスマホをいじっていた。

一人の目立つ男子が保乃に近づいて話しかけた。

「おはよう!」

少し緊張した様子で声を掛けると保乃は平然とした顔で、おはよう!と返した。

「どこから来たの?」

「名古屋!」

(あれ、名古屋って私のパパの転勤先…)

「へぇ〜!名古屋!…名古屋かぁ〜」

(ダメだ、もうネタ切れだ…男子、よく頑張ったね)

ネタ切れ男子と保乃の側では興味本位で眺めている女子二人がくすくす笑っている。この女子二人はネタ切れ男子と日頃から仲がよく喋っている。保乃もそれをわかっているはずなのに彼女は気にせず依然として平然としている。

「…実は小2までここに住んでいたの。転勤族だから転校しちゃったけど。」

保乃の発言に皆んながリアクションする。

「へぇ!マジで⁉︎じゃあ、元はここが地元なんだ。」

「地元の高校とか珍しくね?俺ら皆んな遠くから来てるよ。」

他の男子たちも次いで話していく。

「來未ちゃんの家の斜向かいに住んでいるの。」

突然の保乃の暴露にクラス中が驚いた。

 ガチ⁉︎なんで沢口言わねぇんだよ‼︎

 沢口の近所に住んでるんだって‼︎

「本当よ。ここに来る前に挨拶もしたんだから。」

 はぁ、マジで⁉︎だったら転校初日に話しかけろよ。あいつって本当に情がないよな。

 お弁当も一人で食べてたし、かわいそう…

 ご近所さんで幼馴染ってこと⁉︎

保乃の発言でどんどん話が飛躍していく。もう歯止めが効かない。

私は興味ないだけなのに巻き込まれてうんざりして保乃を見るのをやめた。

「來未、岸谷さんとご近所さんなの?」

側にいる美菜に聞かれて頷く。

「でも幼馴染ではない。話が勝手に飛躍してる。」

頭を抱えて呆れる私の横で美優やすみれは保乃に興味津々だった。

「でも私、あの子、気になるなぁ…可愛いし。」

「まずは話してみないとどんな子か分かんないよね。」

「今度、話しかけてみようよ!」

いや!私は嫌だ‼︎

美菜たちの会話にそう言いたくても言えなかった。

本能が無意識に彼女を嫌がっていた。

あの横顔、どこかで見たことある。でも思い出せない。思い出せないなら思い出さなくていい。

どうかこのまま平和に…平和なままで…願っても虚しそうだ。


放課後、美菜たちと4人でカラオケに行った。

色んな部屋の音漏れが聞こえる中で私以外のメンバーは流行りのJ-popやK-popを思い思い歌う。

Kpopが好きな美菜や美優は韓国語の歌まで歌える。すみれは韓国語の曲は歌わないが流行りのJpopを軽やかに歌っていた。

一方の私は流行りに疎くて芸能人に興味がないため、歌える曲は幼い頃に父が車の中でかけていた懐メロばかりだった。

「あー!來未、またそれ歌ってる‼︎いつも同じ曲ばっかじゃん‼︎」

私がゴスペ○ーズを歌うと決まって美菜が文句を言う。

他にも中○明菜や松○聖子を歌うがどれも学生からするとなんだかよく分からない激渋ソングらしい。

しかもレパートリーが三曲しかないため、いつも同じじゃんと以前、すみれにも指摘された。

だって私は音楽とかそんな聴かないし、休日はいつもお菓子を作っているか、インスタを見ているか、編み物をしているから流行りに疎い。

みんなはサブスクで映画を観たり、音楽を聴いているみたいだけど私はそれをしない。興味が湧かない。

私って変わり者なのかな…時折、そう思う時がある。でも、だとしたら、あの子の方が変わっている…というかあの子って何かがおかしい……

カラオケを終えて4人で歩いていると美優が指を指して、あ!転校生!と叫んだ。

美優の指す方を見ると保乃と彼女の母親が仲良く肩を並べて歩いていた。

さっきまで制服だったのにわざわざ私服に着替えたようで保乃はオフショルの白いワンピースを着ていた。髪の毛も丁寧に巻かれていてまるで羽根の生えた天使のようだ。

その横には高貴なマダムのような雰囲気で歩く保乃の母が彼女の側にピッタリとくっ付く。

白いシャツに黒のベストとスカートを合わせた高貴なマダムは最愛の娘が可愛くてしょうがないのが遠くからでもわかった。

「羨ましい…うちのママとは大違い。」

美菜の独り言に誰もが賛同したであろうが、誰も何も言わなかった。

二人は私達の羨望の眼差しなんかには気づかずに高貴なオーラを纏いながら人混みの中へと消えていった。


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