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崩壊と再生  作者: 水綺はく


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2/2

2 かわいい…転校生が来る

 月曜日、学校に行くと朝から美菜と美優が今流行りのダンスボーカルグループのカバーダンスを踊ってティックトックにあげていた。

日本男子10人で結成されたそのボーイズグループはオーディション番組でネット配信されると瞬く間に話題になりデビューする前から多くのファンを取得していた。

当然、学校でもそのオーディション番組が配信された翌日にはその話題で持ちきりになり、美菜や美優が互いの推しについて熱く語り合っていた。

私はネット配信は見ないから2人が語っている時は、別に…って感じでスカした態度を取る。

昔から良くも悪くも流行りに鈍感で周囲に無関心。それは今でも変わらず、よく言えばブレない。悪く言えば世間知らずな頑固者だ。

「やっぱ北斗がさ〜オーディションの時から言ったでしょ!センター適性があるって!」

「えー、私は勇輝がセンターになると思ってた!」

二人の熱い会話にすみれが時折、合いの手を入れながら私はスマホをいじって関係のないことをする。

自分が興味ないだけなのに会話に入れなくて疎外された気持ちになっている。皆んなが盛り上がってる時、私は大体、興味がなくてクールを装ってるけど実際は話に入れなくて孤独を感じている。それなら私もそのオーディション番組を見て食い付けばいいのに…そこまでの努力は出来ない。たとえ皆んなが興味を持っていても興味がないことには興味を持てない。

ミーハーにも孤独にもなれない。浮いているのに浮いていない…私は一体、何者なのだろうか。

「はーい、始めるわよー!」

担任が教室の扉を開けて勢いよく入って来る。

生徒が直ちに静かになって着席する。

「その前に…転校生が来ました。」

先生がそう言ったタイミングで教室の扉から一人の少女が現れた。

「岸谷保乃さん。まだこっちに来たばっかで慣れないと思うから皆んな色々、優しく教えてあげて。」

先生の隣で保乃は慣れたように立っていて、まるでオーディション慣れしているアイドルのようだった。

「…可愛い」

真ん中の席でボーっと保乃を眺めていると背後から誰かの声が聞こえた。

あ〜ぁ、面倒なことになったな。せっかく皆んなグループが決まったのに転校生が来たらまたグループ編成がややこしくなる。まだ転校生が地味で何も言わなそうな子だったらよかったけど…この子、絶対にどこ行っても目立つし噂の的になるから派手好きな子しか受け入れないんじゃないかな…そうなるとうちのグループに入るだろうなぁ…あ〜ぁ、せっかく目立つグループで適当にのんびりやってたのに新しい存在なんて要らないのに…面倒くさいなぁ…。

 保乃は先生に言われて一番後ろの真ん中の席に座った。

「初めまして。これからよろしくね。」

背後から聞こえる保乃の声は何一つ緊張していなくていかにも転勤族で慣れている感じだった。

私は転校なんてしたことがないし、したくもない。

今、父が単身赴任しているのも母が私と亮太郎を思ってのことだった。

転校したら新しい環境に慣れるのに時間が掛かる。そうならないように父は一人で単身赴任を選んだ。というよりは私達がそれを押し通したのだ。

 昼休みになると皆んな決まったメンバーで昼食を取る。

一部は食堂に行き、お弁当メンバーだけが教室でご飯を食べる。

私のグループは皆んなお弁当で他のクラスメイトの席を借りてすみれの席に集まるのが暗黙のルールだ。というよりかはルーティンと言った方が正しいかもしれない。

四人でお弁当を食べていると保乃が一人だけ自分の席に座ったままお弁当を食べ始めた。

水色のお弁当箱には卵焼きやウィンナー、ほうれん草の胡麻和えのようなものが入っているように見えた。それを一人で黙々と食べる保乃をクラスメイトは異物を見るような目でチラチラと横目に見ながらいつも通りふざけて大きな笑い声を上げながら何事もなく食事する。

私もその中の一人で美菜たちが内心、保乃を気にかけていることなんて知っているけど知らないふりをして、近所に越してきたことも話さずに昼食を取った。


 放課後、彼氏の京介が珍しく部活が休みのようで一緒に帰ることなった。

京介は野球部で普段は部活で忙しいから一緒に帰ることが出来るのは珍しい。

浮かれながらデートがてらついでに寄り道でもしようかと思いながら校門を出ると京介が保乃について聞いてきた。

「そう言えば今日、お前のクラスに転校生来たよね?名前は岸谷さんだっけ…?」

「え、あぁ、うん。来たよ!…なんか気になることでもあるの?」

「いやぁ〜別に特にないけど…顔を見に行ったら可愛かったから気になって…」

彼女の前で堂々とそれ言う?

ムカついて思わず顔を顰める。すると京介が得意げになってニヤニヤしながら、「ごめんって〜!」と笑う。

「京介って本当にデリカシーがない!」

「え、うそ?自覚なかったわ。ごめん、ごめん!」

本気でムッとした顔で指摘すると京介も流石に慌てた様子で謝ってきた。

それでも不機嫌でいるとさらに慌てた様子で京介が、「今日、晩飯食いに行こう!俺が奢るから!」と言った。

それでチャラになる問題じゃないけれど、それでチャラにしようとしている京介が可愛かったから許すことにした。

私はこれでいい。今が一番、幸せだ。

もう充分、有り余る幸せを手にしていた。



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