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7/11

7.二年生になりました。

 二年生になりました。メロディが入学してくるここからが乙女ゲー本番です! 一体どうなるんでしょうか?


「どうした? 顔が強張っている」


 さらっとヴィーラント様の指が私の頬に触れました。一瞬だけだけど! きゃー! やめて! 本当にもう萌え死にそう……。

 自分の顔がかーっと真っ赤になった自覚があります。するとヴィーラント様は満足そうな目で私を見ていました。

 

 これで、一年間、別に、何も、なかったんですよっ!


 お兄とマリアンヌ様は微笑ましそうに見ているだけです。私一人がわたわたしたりドキドキしたり、キュン死にしそうになっていただけです。


 それが! 一年! 


 ……一年と言っても途中に冬季休暇とか夏季休暇とかありますので、一年丸ごとという事ではないのですけれども。

 ヴィーラント様は私が彼に好意を持っている事を知っているのでは!? とお兄に確認したけれどヴィーラントは明確には気づいていないと言ってましたし。


 それなのに! 指で顔に触れたり、転びそうになったら助けてくれたり、エスコートが必要な場面では私をエスコートしてくれたり! するんです!

 もう私の気持ちはジェットコースターに乗っているみたいに急上昇したり急下降したり大忙しなんです!


 そんな私にメロディが気づいちゃったんだよね……。

 元々メロディにはお兄殿下と結婚するつもりはない事は告げていたし、出来るなら国外に出たいとは言っていたのだけれど、そこに隣国の王子の名前が私の口から頻繁に出るようになって気づかれました。

 だって! 四人で一緒にいる事が多いんですもの! 仕方ないでしょう! 私は未だにマリアンヌ様以外お友達いないし。

 マリアンヌ様は将来の王妃なので社交をがんばっています。それなりに仲良くなったご令嬢もいるみたいです。私もたまにおまけでお話したりするようにはなりましたけれども。


 どうしても世間一般的には私とマリアンヌ様はライバル同士なので、他のご令嬢も色々気を遣ってしまうようなんですよね。……当然か。

 そうなるとやっぱりお兄とヴィーラント様、マリアンヌ様と一緒にいる方が気を遣わないので。

 事あるごとにヴィーラント様が守ってくれたり助けてくれたりしてくれるんですけれど、でも! なーんもないんです! これ、私から好きです! って言った方がいいの? でも……一応まだ殿下の婚約者候補な私から言うなんてそれこそ無理ゲーなんだけど!


 そんな私の複雑な気持ちは置いておいて!

 いよいよメロディの入学です。

 入学式は生徒だけが出席。親は来ません。学園は学生が主体だからという表向きですが、絶対に乙女ゲーの世界だからですよね? 入学式にイベントが起きるのに親がいたらイベントにならないもの。


「ファビエンヌ嬢の妹が入学してくるんだったよな? あとアンセルムの弟のシャルルか?」

「……そうなの。あ、あそこにいるピンク色のふわふわの髪の子が妹よ。シャルル殿下は新入生代表ですよね?」

「そうだな。昨日も練習に付き合わされたよ」


 お兄がくすりと笑った。お兄は弟も可愛いらしいです。弟()! 私の事も可愛いんですって! やだー! お兄ったら! 嬉しいけども! 私も頼りになるお兄が大好きです!


「おに……殿下は生徒会長で在校生代表で挨拶ですよね?」

「そうだな。ちょっと行ってくる」


 そろそろ新入生も入場を終えたのでお兄は挨拶の為に舞台袖で待機するそうです。マリアンヌ様がいってらっしゃませ、と奥さんみたいな事を言ってお兄を見送ってます。

 

 それはいいんですが。なんかねぇ……講堂に並ぶ制服を着た生徒達。違和感があるというか、なさすぎというか……ドレスとか煌びやかな世界のはずなのに制服。べつに異世界じゃなくて普通に高校生の乙女ゲーでもよかったんじゃ? って感じで微妙な気がするのは私だけなんだろうか? あ、元日本人だったお兄もかな? なぜわざわざファンタジー設定にしたかな!? ……きっと流行りの悪役令嬢物にしたかったんだろうね……。運営……。


 あ、メロディがきょろきょろしていると思ったら私を見つけたのか笑顔を見せて小さく手を振ってきた。可愛いね!

 私も小さく手を振る。


「妹とは本当に仲が悪いわけではないんだな……」

「ええ。妹は可愛いです」


 ヴィーラント様が私とメロディのやりとりを見てそう聞いてきた。一年の間にちょこちょこと私とマリアンヌ様、お兄との会話の中でうちでの私の境遇を察した様なヴィーラント様ですが、私に直接アレコレと聞き出そうとした事もありません。……私に興味がないんでしょうか? うう……そうなら悲しすぎる。


 本当の乙女ゲーならば今日、ヴィーラント様が留学初日で登校してきた時に転びそうになったメロディを助ける事でそこから攻略が始まるんだけど、ヴィーラント様はずっと私達と一緒にいましたし新入生とは登校時間が少しずれているのでメロディとは直接会ってはいないはずなんですよね。


 色々恋プリ、恋するプリンス達っていう恥ずかしいタイトルだったんだけど、もう色々内容が変わりすぎてます。

 でも直接メロディと出会ったら何か変わっちゃうのでしょうか? なんか不安だよね……。ヴィーラント様がメロディの事をもし好きになっちゃったら……。私は泣く泣く諦めて消えるしかないか。


「はぁ……」


 小さく溜息を吐き出す。うーん、情緒が不安定になっています。どうしてもマイナス方向に向いっちゃうなぁ……。

 一年同級生として過ごしてきて、それなりに仲が良くなったつもりだけど進展は全然ないから……やっぱり見込みはないのかなぁ?


 ゲームの中のヴィーラント様がとてもカッコよくて私の推しだったけれど、今はただカッコいいだけでなく優しい所とかさりげなく気遣ってくれる所とか、骨ばった大きな手とか指とか、照れた表情とか、もう感情が爆発しそうな位好きなんだけど。


 悲しいかな。ゲームの中で無表情がデフォだったファビエンヌの所為なのかあまり表向きには表情が変わらないらしいんですよね、私。心の中では大暴走していても。

 メロディみたいにぱーっと花が咲いたような笑顔を見せるとか絶対出来てないと思う。可愛いな~と私でも思う位だもの。そんな表情を自分が出せているはずはないし。

 あ~……メロディとヴィーラント様を会わせたくないなぁ。もしヴィーラント様がメロディに、メロディがヴィーラント様に一目ぼれしちゃったらどうしよう……。


 一人でぐだぐだこんな事考えていても仕方ないけどねぇ。


 あ、お兄殿下の弟シャルル殿下の新入生代表の挨拶だ。シャルル殿下も可愛い系枠で攻略対象なんですよね。メロディは誰がいいと思うんだろう? メロデイの同級生枠はシャルル殿下だけで、アンセルム王子、騎士団長子息エミリアン、宰相子息ナルシス、バルリング国王子ヴィーラント様は一つ上の学年。隣国アルドゥン王国の王子デュドネは一つ下の後輩枠なのでまだ入学してきていないから今の所対象外だろうし。

 選ぶならエミリアンかナルシスにして欲しい……でもどちらも跡取り息子だし。


 一応うちは女二人姉妹で婿取りの方向なのに攻略対象が跡取り息子ばっかりってどうなのよ? 次男はシャルル殿下だけですよ! 父も義母も何を考えているのかメロディにも婚約者はいないし。

 まぁ、私の婚約が決定していないからという事も関係しているんでしょうが。私が殿下の婚約者に決定していたらまた色々違ったんでしょうね。

 でもゲームの中では私は婚約者になっていたのに、それでもメロディに婚約者はいなかったからなぁ……。


「何を難しい顔をして考えている?」

「んんぅっ!」


 ヴィーラント様のよい低いお声が私の耳元に響いてきました! 耳元でお話されるのはやめて! 理性がっ! いえ、学園長のお話になっているのでこっそりと話しかけてきたつもりなのでしょうけれども! 誰にでもそういう事なさらないでいただきたいですっ! それでなくとも隣国の王子というだけでお兄と並んで人気ですのに!


「特に、何を、というわけではないです……」

「そうなのか?」


 追及してくることもなくヴィーラント様が私の方に身を寄せてきていたのを直したのでちょっとほっとします。心臓に悪いです! もうドキドキしちゃって動揺しちゃいましたよ! びっくりした! でも嬉しいんですけれど! あんなお声で耳元に囁かれたら…………思い出しただけでぞわぞわして悶えそうになります。

 我慢我慢! 取り繕って! 自分!



 そんな嬉しいハプニングありの入学式を無事終えました。いえ、私の入学式ではありませんが。ゲーム的に。ああ……スチルが、イベントがメロディに起こったのかしら? どうなの? 今日帰ったら色々聞いてみないと! 攻略対象とあちこちでばったり出会ったりしているはずなんですけど……。

 お兄とヴィーラント様にはイベント起こらなかったはず…………多分ね。



 そして無事入学式を終え一年生は退場し自分のクラスへ。ちなみにメロディはSクラスでした! お勉強を私と一緒にがんばった結果ですね! ゲームの中ではSクラスでない事は確かだったけれど、どこのクラスだったのでしょう? 一番下? メロディって脳内お花畑だったからな……なんで脳内お花畑娘にSクラス同級生シャルル殿下も、一学年上のSクラスの人達も夢中になっていたんでしょうね?

 それはヒロインだから…………なんでしょうけれども。


 メロディの存在がどう影響するかを心配しすぎてなんかちょっと疲れたなぁ……。

 

 私達二年生もクラスに戻ってホームルームをして今日は終了です。

 成績順でクラスが決まりますが、ほとんど一年の時とメンバーは変わらないので真新しさもないです。そういえばイザベラ様はSクラスから落ちました。プライドの高い方でしたからどういう心情なんでしょうね? ぐぬぬぬ、ってなっているのかしら?


「お姉さま~」


 教室を出たら、あらやだ、メロディの声がします。廊下でそんな声を出しちゃダメですよ? 後で注意しなくては!

 私とマリアンヌ様、お兄殿下とヴィーラント様、四人で固まっていた所にメロディが登場です。お兄、大丈夫? ヒロイン補正で魅了とかされちゃわない?

 お兄と顔を合わせました。


 その時にあっ! というメロディの声。え? 何? と思ったら転びそうになったメロディをヴィーラント様が抱き留めていました。


 え? やだ……。


 振り返った私はこくりと息を呑み込みました。

 腕に抱き留めたヴィーラント様とメロディが……目を合わせて見つめ合っていたのです。



 

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