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6.異母妹とは仲良しです。

「お姉さま! おかえりなさい!」

「ただいま。ちゃんとお勉強してた? お父様とお義母様は?」


 学園から馬車で帰ってくるとメロディがいそいそと私を出迎える為に出てきた。出てきたという事は父も義母もいないのかしら?


「お姉さまに言われた通りにお勉強しておりましたー! お父様とお母様はいらっしゃらないの。今日は二人とも帰って来ないんですって! だからお姉さま……一緒にいてもいい?」


 メロディは甘え方がとても上手な子ね。でも乙女ゲーの様な脳内お花畑な子にはなっていない、はず。小さい頃からどうにかがんばってメロディを矯正してきたからね!

 家族の情に飢えていたメロディは私をとても慕ってくれるようになった。こうなれば来年学園に入学してきても私を貶めるような事はしないはず。


 ただ、女だからね……まだ油断はできないけど。あと強制力も働くかもしれないし。とりあえず私が出来る事はやった、と思う。多分。


「勿論! じゃあ今日やったお勉強の答え合わせをしてから一緒に刺繍でもしましょう」

「はぁい」


 メロディが私の腕に抱き着いてきた。可愛い。

 容姿も本当に! さすがヒロイン! って感じでとても可愛らしいのよ。どう見ても私と姉妹だなんて思えない位。


 乙女ゲーの中では私、ファビエンヌとメロディの仲がよくはなかった。よくなかったというか、関わっていなかったというか。ファビエンヌが表情のない子だったからねぇ……。ツンとしてきつい言葉を無表情で発する様な子だったので。

 中身が私になっちゃったので、無表情って事はなくなったけれど。

 

 第一王子の婚約者にもなっていない、メロディとの仲は良好。王子殿下の中身がお兄。ファビエンヌの中身が私。王子殿下の本当の婚約者はマリアンヌ様。


 これ位違ったら乙女ゲーとは違う展開になるよね!?


 あ、あと隠しキャラだったはずのヴィーラント様がすでに留学してきているというのもあるか。しかも隣国の王子として来ているし。

 ゲームの中では来年王子である事を隠して留学してくる事になっていたんだよね。ヒロインが攻略対象の好感度を上げていくとイベントが起きて、そこでヴィーラントの好感度をあげると実は……と素性を明かすんだけど。

 すでにヴィーラント様はバルリングの王子だって周知されているし、王宮に滞在しているし、全然隠しキャラになっていないし。


「お姉さま? 今日何か学園であったの?」

「ううん? 何もないよ……あー……」


 考え事をしていたらメロディが心配そうに見ていた。優しい子でよかった。私の育て方がよかったんだね! と自画自賛しちゃいます。妹可愛い。私元は末っ子だったから下の存在が本当に可愛いよ。

 イザベラ様が絡んだ時の事を思い出しちょっとほわわとしてしまう。だってヴィーラント様が助けてくださったんですもの!

 実際は私が、仲良くしているお兄の婚約者候補だから、でしょうけども。

 そういえばお兄からこっそりとヴィーラント様に婚約者候補だというのは名前だけだと言っておくぞ? とからかう様な顔で言われたんだった。

 私から頼むまでもなくお兄が察してくれて助かった。お兄に任せておけば大丈夫だよね?


「お姉さま?」

「あ、ううん? なんでもないの」

「お姉さまは……やっぱり殿下の婚約者を降りたいの? お気持ちに変わりはないの?」

「ないわ。マリアンヌ様はお優しいしとても素敵な方ですもの」

「お姉さまだって素敵だし優しいもん!」


 メロディは事あるごとに私にお兄を推してくる。それというのもつい、私は出来れば国を出たい、と漏らしてしまった事があったのよねぇ……。だってあの父と義母がいたら何を言われるか分からないんだもの。

 メロディに対しては放置はしているけど悪くは言わないから。私に関しては言いたい放題なんだよねぇ。何故? アレも強制力だったりして……。

 いや、やっぱ元からの資質だろう。


「お姉さまには傍にいて欲しいの……でもお父様とお母様があれだから……お姉さまの気持ちも分かるの……」


 メロディはとても気遣えるいい子になったのですよ! 本当に! 私、いい仕事した!


「まだどうなるかは分からないけれど、もし離れてしまったとしても私はメロディの味方よ?」

「お姉さま!」


 大好き! とメロディが抱き着いてくる。ああ……可愛いねー。妹。メロディの婿も探さなくてはいけないよね!


「私の事よりもメロディの事を考えなくては。メロディは公爵家を継げるようなお婿さんを迎えなければいけないわ」

「本当はお姉さまがお婿さんを取るべきなのに……」

「私はそんな気はないから、メロディに押し付けちゃうみたいで申し訳ないのだけれど……」

「そんな事ない! ……お父様とお母様がお姉さまを追い出してしまうのね……」

 

「言ったでしょう? 私はむしろこの国を出てみたいの。メロディは応援してくれる?」


 ずるい聞き方だという自覚はある。でもメロディのいう事を聞いていたら私は父と義母の影響下から抜け出せないかもしれないんだもの。

 もしお兄と結婚する事になって、王族で王宮で過ごすようになったとしても何かしら文句を付けに登城してきそうではあるのよね。

 私を口撃することで鬱憤を晴らしているみたいな所があるようなので。


 それでもまだ全然ましだとは思うけれども。父は公爵というにはあまりにも小物だ。でも小物だからこそ堅実なところがあって。いや、正確に言えばケチって事なんだけど。

 義母がしたい贅沢三昧を父は許さないんだよねぇ。そこだけは褒められる。小物だからこそ、自分の代で公爵家を落ちぶれさせるわけにはいかないと。

 うん。小物だけど本当にそこはよかったと思うよ。メロディの為にも義母の事はずっと抑えていて欲しいですね。


「本当は嫌だけど、お姉さまの事は応援するわ」

「ありがとう! メロディ!」


 メロディにはヴィーラント様の事は勿論言ってはいない。だって! 攻略されちゃったら泣くもん! ヒロイン補正、強制力が働かない事をマジで願います!


 私のタイムリミットは学園卒業時。それはもう決まっている。

 学園卒業時にお兄は王太子として立太子する予定なのだ。すでに陛下からそう言われており、そこまでに婚約者を正式に決めるようにと言われているらしい。

 本当はもう決まっているんだけど、私がいるので発表出来ないんだよね。本当に申し訳ない。

 

 だって、いつぞや聞いちゃったんだもん。

 

 図書室で何か本を持ってこようと父と義母に会わないようにとこっそり行った時、途中の部屋で父と義母が派手な口喧嘩をしていて、いつまで私を置いておくのか正式な婚約者にずっとなれないでいるのに! と噛みつく義母に父もまた正式な断りがない以上現状維持しかできないんだ! と言い返していた。正式に断られれば傷がついた令嬢という事で高い金額でどこかに嫁に出せるのに! と。


 こういう事を聞いちゃったりしたらそりゃあねぇ……表情もなくなるよね。中身が私でもドン引きしたもの。それを聞いた後、お兄とマリアンヌ様に泣きついちゃって……。だからこそ二人が私を守ってくれているのだけれど。

 いっその事一人で家出しちゃおうかと思った事もあったけれど、そうするとメロディがお花畑娘になっちゃうし、私はヴィーラント様と会う事も出来なくなるし。

 

 一目だけでも、会いたかったんだもの!

 今はもう会う事も出来たし、話す事も出来たし。でも出来たら出来たで……助けてくれたりしてくれるから、期待しちゃっても仕方ないじゃない。

 ゲームの中のヴィーラント様とは違う、という事は分かっているけれども。だってやっぱりカッコいいんですもの!

 今の望みはお耳と尻尾を愛でたい! です。でも獣人は伴侶となる人にしか耳も尻尾も触らせないそうなのでかなりの難クエストなんですよね。


 …………乙女ゲーの中ではヒロインに触らせてくれて蕩けるような笑顔を見せてくれていたんだけど。勿論スチルでですよ! あんなお顔を見てみたい……。いえ、あんなメロメロなお顔じゃなくてもいいのですが、とにかく今は欲が出ちゃってヴィーラント様の傍にいたいなぁと。


 お兄、どういう風に言ってくれるのかなぁ? そしてヴィーラント様はどんな反応をするのかなぁ? 何も反応がなかったらどうしよう? いえ、どうしようもないんでしょうけれど。

 私があれこれ考えても仕方のない事なのですが。

 最悪、卒業を待たずに家を出るというのもアリかしらね。

 その時はファビエンヌの名を捨てなきゃいけないって事になるかな……。一応家を捨てても私が食べていけるようにお兄が色々してくれたので大丈夫といえば大丈夫なんだけど。


 でも父と義母の存在がすぐ近くにあるというのはやっぱり不安でしかないもの……。


 小さい頃にお兄に自分で何かお金を稼げる事をしたいと、相談したらお兄がオーナーで私がデザイナーの下着ブランドを作っちゃったんだよね。

 お兄曰く、ここは乙女ゲーの世界。基本の色々が日本の事情が情報源だからか日本と変わらない生活水準なのよね。生産チートで新規参入など出来る状態ではなく、なかなか難しいとの事。そんな中で下着事情が中世と変わらない、という事で私にデザインをやれ、と言われて私は偽名を使ってデザインを出しお兄は商会を作ってしまったのだ。私の為に。


 お兄が王太子でよかったです。本当にお兄にはお世話になりっぱなしで恩返ししたい所ですが、今の所お兄にもマリアンヌ様にも何も返せていません。

 どうしたらいいのか、色々私だって考えるけれどお兄には余計な事は考えるな、いい様にしてやるから安心しとけ、と言われる始末。


 お兄はお兄で、自分の運転する車で事故っちゃって一緒に死んじゃったのがかなり心に残っているらしい。元々妹に甘い兄ではあったけれど、今なんて一緒に住んでもいないのに激甘兄になっています。

 お兄……本当に感謝です。私が私でいられるのもお兄の存在があったからだよ。そうじゃなかったら本当に乙女ゲーの中のファビエンヌの様に表情なしの氷の令嬢になっていたかもしれない。


 私はお兄とマリアンヌ様のおかげでここにいられるのだ。

 ヴィーラント様、私に好感持ってくれないかなぁ? 自分から攻略にいけばいいんだろうけど。攻略じゃなくて……求められたい、とか思っちゃダメかなぁ?

 だってここはゲームじゃないんだもの。攻略じゃなくて、自分からも求めたいけど、求められたいよね……。


 

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