魔法の授業③
「なぁ、鵜月。そう言えば、俺と鵜月の相性はどうなんだ?」
「え?」
俺は鵜月の話で魔法について理解したが、俺と鵜月で戦った場合、どちらに分があるのか分からないのもまずいと思い尋ねてみた。
「先輩。それはどう言う意味でしょうか?」
「何って」
『お!マスター。なんだ?そこの嬢ちゃんだけに飽き足らずそこのSっ気堪らない姉ちゃんにも興味があるのか?』
「え?まぁ。鵜月が良ければだが」
「魔王!そ…それは!」
鵜月はやけに顔の周りを赤くし、固まっていた。
「なんだよ?そんなに悩むことのか?」
「先輩」
俺の横にいる夜月はいつの間にか剣を取り出し、握る力も強くなっているのが見えた。
「な…なんで夜月が怒っているんだよ。俺はお前をいやらしい目で見ていないぞ!」
「ふ…ふぅーん。そうですか」
俺は真面目に勉強していたつもりだったが、夜月がやけに機嫌悪そうにしており、心当たりも見当たらなかった。
「ちょっと待て!夜月、どうしてそんなに怒っているんだよ」
「魔王…」
「先輩?あとで私の部屋でお勉強会をしましょうね」
放心状態の鵜月と圧が高まっている夜月の様子から察するに何か勘違いが起こっていたようだった。
「二人とも勘違いしていないか?俺は鵜月と戦った時にどれだけ耐えられるかって話をしたかっただけだぞ」
クルスリアが珍しく真剣な時に話しかけてきたが…。大概、こいつが首を突っ込んでくる時は絶賛まずい状況になっていることが多かったりする。勢いで話に乗っかってしまったが、俺の言いたいことが聞けずにいたことをようやく思い出した。
「……」
「え?」
『ぷっ。ハハハ。なんだ?私はてっきり新たな娘を攻略する気になったのかと…』
「違うわ!」
俺とクルスリアが話していると、夜月と鵜月の方から圧迫感のあるオーラがこちらを襲っていた。
「おい、クルスリア。お前、この状況をどう収拾させるつもりだ!」
『がんばれ!マスター。これは私からも試練だっ』
「ふざけやがって…」
重たい空気に包まれ、夜月と鵜月が近寄ってきた。
「おい。これは…」
「ん!」
「?」
俺は覚悟していた。これから過去一番の残虐なモノになると…。
―だが、夜月は何かを求める手だけだった。
「なんだ?」
「魔導書を」
「お…おう」
逆らうこともできない状況の俺は夜月の言う通りクルスリアを渡した。
『あら?どうした?嬢ちゃん』
クルスリアも初めての状況に戸惑っており、夜月に尋ねた。
「ここはちょうど図書館です。神話級だろうと魔道具の封印ができる代物があるのか聞いて来ます」
「ええ」
『おい。マスター、私を助けろ!これは冗談にならないぞ!』
夜月と鵜月に捕まったクルスリアは抵抗もできそうだが、楽しそうにこの状況を過ごしていた。
『聞いているのか!私はマスターの補助装置なんだぞ』
「安心してください。暴走したら私がやりますので」
『マスター!まずいって、この嬢ちゃんたち目がマジだ。助けてくれ〜』
クルスリアの珍しい命乞いを見て、俺は楽しくなったが、冗談もそろそろ危なくなりそうだったため、夜月にやめるように頼む。
「夜月…。クルスリアが珍しく焦っているみたいだからそのくらいに…」
「先輩が良いのであれば…」
「九重さんは魔王に甘すぎます。この男も連帯責任で学園の雑務でもさせましょう」
雑務って響きだけで嫌な予感がする。
「一応聞くが、雑務ってのは何だ?」
「そうですね。生徒の困りごと解決と学園内外の依頼を受けてもらいます」
鵜月の話を聞く限りだと監査の仕事と同種の仕事のようだが、この状況は断ることもできなくなっていた。
「そのくらいだったら」
「先輩…」
「では詳細は後日お伝えします」
鵜月はやけにあっさりとした返事で終えた。
「って。俺と鵜月の魔法の相性の話を聞いてねえな」
「そうですね。私とあなたですと、今は私に分がある。魔力の強さや魔法の使い方によってはあなたになるでしょうけど」
「それって鵜月が勝つってことだろ」
「そうですね。魔法の知識が圧倒的にない今のあなたは魔法をコピーも限られていますし」
鵜月は図書館に入ってきた時よりも打ち解けたのか。穏やかな表情を浮かべながら俺の質問に答えてくれた。
「まあ。学園のやつらと戦うのはねえな。かなり助けてもらっているしな」
「迷惑をかけているの間違いでしょう」
鵜月は俺の戦わない理由を呆れた様子で言い返して来た。
「ひどいが、事実か…」
「先輩は鵜月先輩には勝てませんね」
夜月は緩み切った顔で俺の方をして微笑みながら呟いた。
「話が長くなってしまいましたが、今日はこのくらいにしましょう」
「そう…ですね。流石に勉強し過ぎても先輩の頭がパンクしそうですし」
鵜月が夜月に提案すると、夜月は頷いて机にある散らばった本を集め始めた。
「俺も片付けないとな」
「では集めた本を本棚に戻して下さい」
「分かった」
俺は夜月に言われた通り、場所がバラバラな本を片付けた。
「良し。勉強も終わったことだし、他に教わっている奴らの様子でも見に行くか」
「そうですね」
図書館を出た俺たちは座りっぱなしで固まった体を解しながら学園へと戻った。




