+Assassin①
「ちょっと良いか、涼」
「どうしたの?封魔」
俺は教室に戻ると涼に真剣な顔で話しかけた。
「昨日の商店街の事件で指令局から情報はなかったか?」
「どうして?」
「俺に必要だからとしか言えない」
「はぁ。わかった、封魔のために探してあげる。実際、私も気になっていたから」
「助かる」
俺との話を終えた涼はため息を吐いていた。
「授業を始めるぞ!」
俺の休憩はあっという間に終わり、また長い授業が始まった。
「ようやく終わった〜」
授業が終わり、疲れ切っていた俺は席に着きながら一度背伸びをした。
「望月封魔!」
「どうした、ストーカー」
「誰がストーカーよ!」
授業が今、終わったと言うのに元気な彩花が騒がしく俺に話しかけてきた。
「それでどうした?笠木さん」
面倒くさい彩花の話を聞こうとしていると、教室の扉の方から夜月がきた。
「お!夜月じゃねえか。早く来すぎだな」
「先輩から連絡が来ていたので。それと…どうして、笠木さんがいるのでしょうか…」
「それは俺にも知らん」
夜月の唐突な質問に俺も当たり前のように返していると、彩花の顔が赤くなっていた。
「居て何が悪いのよ、って言うか私も監視役って言ったでしょ」
「その話は冗談じゃなかったのか」
「当たり前よ」
「でも、笠木さんはMIOでは監視ではなく暗殺を中心に行って居ましたし…」
「暗殺かよ」
「そう言えば、MIOの仕事ってどんなのがある?」
「そうですね…先輩のような人の監視や暗殺、護衛や支援など多岐にわたります」
「そんなに多いのか?」
「はい、まぁ各分野でトップがインペルⅩとなっておりますので短期で終えることが多いですが…」
夜月は俺の問いに分かりやすく伝えようと言葉を考えてくれているようだった。
「ってことは俺の監視役はすぐに終わったりするのか?」
「先輩の場合は緊急任務だったので様子を見るために派遣されたと言うのが正解かと…」
「夜月はいつか帰るのか?」
夜月の話に俺が尋ねると悲しそうな表情を見せていた。
「先輩を一人にされるのは危険ですが、任務なのでいずれはなるかと…」
「夜月、安心して良いわ。この男が一人になる時は私がやるから」
夜月の話を聞いて彩花は物騒なことをして励まそうとしているが、俺にとっては全く安心できない話だった。
「お前の話は嘘だよな…」
「さぁね」
彩花は俺の心配を悟って素っ気なく振る舞って来た。
「彩花さん、先輩を揶揄わないで下さい」
「私は本気のつもりよ…」
彩花は夜月の注意に折れることなく、言った。
「先輩、彩花さんと会話を楽しむのも良いですが、帰る準備をして下さい」
「あぁ。そうだな…」
夜月の帰ろうと急かす姿に俺は仕方なく言うことを聞いて帰る準備を済ませた。
「夜月、私も一緒に帰って良い?」
「はい…」
彩花が改まって夜月に一緒に帰る許可を取ったのが不思議に思えた。
俺たちは学校から出てもたわいもない会話を続けていると彩花が何か思い出したように話題を変えた。
「そう言えば、忘れていたけど一昨日、ヨーロッパからジャック=クロード郷が来ているわ」
「ジャック=クロード?」
「ヨーロッパで活動している〈怠惰〉の魔王ですね」
「魔王って、どうしてこの島に?」
「知らないわよ」
彩花は俺のことが嫌いなのか、質問に即答して来た。
「望月封魔!静かに…」
「どうした?」
「彩花さんも感じますかこの魔力を」
「魔力?」
正面から白銀の髪、青い目、小柄の若い男が歩いて来た。
「先輩下がって!」
夜月と彩花は戦闘態勢になり、俺の前に立った。
「君たちが魔王の愛人だね」
「あい…」
「誰がこんな変態魔王の愛人よ!」
「変な事を言うな」
「違うのか?」
「ジャック=クロード郷。その二人はもう出来ているの」
魔王のお供としてクロードの後ろに武具を武装している少女が小さな声で言った。
「あ…あなたは!」
「インペルⅩNo,7の妖雲 美沙さんです」
「久しぶり。…そうでもないかな二人とも」
美沙と呼ばれる女の子は落ち着いた口調で話しており、魔王にも敬語を使わず物怖じしていない。
「と言う事は、二人より強いよね」
「そうですが」
「悪い?」
怪訝な雰囲気で二人は俺の方を睨んできた。
「まぁそれより。先輩、この方の魔力量は異常です。気を付けて下さい」
「さすがわ、魔王の監視者だな。どんな状況でも注意を怠らない」
クロードは茶化されているにも関わらず、自身への警戒を解いていない姿に感心した。
「そう言えば、名乗っていなかったね。〈怠惰〉の魔王。〈解放〉のジャック=クロードだ、フレンドリーにクロードと呼んでくれ」
友好的な挨拶をしたクロードに夜月も戦う意思がないことが分かり、武器を下ろした。
「誰が惨殺をする魔王と仲良くなるかよ」
「それもそうだ。君のインペルは〈虚栄〉ゲートは〈支配〉それに対して僕のインペルは〈怠惰〉ゲートは〈解放〉だから考え方が違う」
「何ですって!この男が〈支配〉だなんてありえないわ」
「それどう言う事かな?そこの娘」
驚く彩花にクロードは興味深いと感じ、話を聞き出した。
「この男は錬金術を行っていたわよね!」
「ふむ。それは面白い」
クロードはそう聞くと何か理解したのか徐に殴って来た。
「さぁ、あいさつ代わりに七番目、命がけの戦いをやろうではないか」
「あいさつ代わりって!」
「先輩!」
クロードは力を込めた拳を勢いよく突き出して来た。
「仕方ない。インペル〈傲慢〉ゲート〈支配〉に接続!錬金術」
『マスターは人使いが荒いなぁ』
クルスリアは愚痴りながも盾になり、クロードの拳を寸止めの所で防いだ。
〈怠惰〉の魔王の拳は盾に当たり鈍い音と骨の砕ける音が聞こえる。
「それが伝説の魔道書、実に興味深い」
クロードの手は砕けた骨でぐちゃぐちゃになっているが、全く動じず話しかける。
「余裕そうだな!」
「そうでもないよ!」
クロードは俺の盾を避けると懐に入り、蹴りを入れて来た。
「グハッ」
不意打ちとは言え、その勢いで俺は後方へと蹴り飛ばされてしまった。
「先輩!」
「いってぇ」
俺は頭を抑えて起き上がると、クロードも驚きを見せて来た。
「君は一体何者なのかな」
「どう言う事だ」
「いや、何…。君の力が何かを知りたいだけさ」
「先輩、避けて」
「ほぉう、魔王同士の戦いに割り込むとは」
「残念だが、俺は夜月と笠木を巻き込んでまでお前と戦う意味がないんだよ」
「ふっ…まぁ先代の魔王とは違うからね」
「何を知っている!」
俺はクロードの話を聞いて、すぐに二年前の記憶を思い出そうとした。
「何が…ぅ!」
「先輩!」
「まぁ、今日は軽い挨拶さ。今後も頑張りたまえ、七番目」
クロードと美沙は黒い影となり、消えた。
「消えた?」
「おそらく移動系の魔法を使ったかと」
俺たちは命かながら家に帰り出した。
「望月封魔、あなたは一体何者なの?」
「〈支配〉のインペルでありながら、錬金術を使う何て…」
「俺にも分からない」
「どう言う事よ」
「先輩は二年前の事を覚えていません」
「自分事もハッキリとしていない魔王何て危険じゃない!」
「はい…」
「クロードが言っていたが、俺は〈支配〉のゲートだ」
「そうみたいね」
「しかし、先輩はなぜ錬金術を」
「この男のアビリティに関係が?」
『まあ。マスターは私もマスターだからな。コピーくらいできるさ』
「それって」
「えぇ、創造の魔王と同じよ」
「…創造の魔王?」
夜月と彩花は深刻そうに俺の方をして説明をして来た。
「二年前に現れた魔王の一人で最強の魔王です」
「そいつは?」
「消えました」
「正しくは戻ったが正しいわね」
夜月と彩花は訳のわからない話ばかりをして俺を置き去りにしていた。
「その魔王は一緒のアビリティって言ったが、アビリティって何だ?」
「アビリティとは魔道士が持つ素質のようなものです」
「って、この島に居りながら全く魔法について知らないとはね」
「仕方ないだろ、俺はお前らと違って魔法と離れていたんだ」
「自らでしょ」
「…ぅ!」
「全然だめね」
「面目ない」
「今、思ったが、ゲートって、いくつある?」
「私は十個だと聞きました」
「私は八個しか知らないわ」
「二人は数を知らないのか」
「はい」
「知らなくて悪かったわね」
「別に攻めてねえよ。大体、俺が知って居ないといけないだろ」
「まぁ、そうね」
夜月と彩花の魔法の知識を聞きながら家に帰っているとあっという間に着いてしまった。
「此処があなたの家ね」
「まぁ、私の家でもありますが…」
「はぁあ!」
彩花は俺の胸座を掴み怒号を飛ばして来た。
「アンタどう言う事」
「どうもこうも俺の家の横が九重の家だから『私の家』って言っただけだろ」
「夜月、この変態魔王に何かされた?何かしたら直ぐに言って殺すから」
「あっさりエゲツナイ事を言うな、大体俺は死なねぇよ」
「そうだったわね、でもそれって何回でも殺せれるって事だよね」
「そう言う拷問ありそうだな…」
「安心して下さい。笠木さん、もしそのような事があれば、先輩をバラバラに解剖しますので」
「お前ら、鬼かよ…」
俺が冗談に聞こえない話を終えると、彩花が話を戻して真剣に聞いて来た。
「それで今の先は何をするつもりかしら」
「錬金術師を探す」
「どうやって」
「涼から連絡が来ていたから電話をかけてみる」
「萱倉先輩ですか?」
「どうして情報を知っているのよ」
「涼は神戒島の指令局で情報を管理しているからな」
「と言う事は、萱倉先輩はMIOの指令局で」
「まぁ、涼はMIOの特別指揮官らしい」
「アルバイトって」
彩花は俺の話に信用なさげに聞いていた。
「もしもし涼。それで情報って?」
「居場所が分かったわ」
「どこ?」
「イタリアに本社を持つ会社らしいわ」
「パラドクスはイタリアで動いている組織で、資金集めは魔族狩り、運搬、奴隷売買と聞いていましたが企業を隠れ蓑にしているのですね…」
「最悪ね」
「会社の場所は神戒島の西側、工場地帯にあるモルテって言う会社らしい」
「それなら、MIOの部隊が必要ね」
「今回はなしだ、彩花」
「どうして?」
「俺は名無しの魔王だからな。MIOに関わると禄でもない事になる」
「まぁ、主に先輩がですが…」
「分かったわよ…」
彩花は俺の事情を理解してくれたのか、深い息を吐いて落ち着いた。
「家に着いたけど、様子見だけでもしましょう」
「そうだな」
俺と彩花は話をまとめるとすぐに行動を始めた。
「ちょっと待って下さいよ…」
夜月も俺と彩花の後ろを追うように着いて来ていた。




