反魔道の意思④
翌日、俺が目を覚まし時計を見ると七時二七分三七秒で止まっていた。 ゆっくり起き上がり、リビングに行くと誰もいない。
ボーッとしていると、家の玄関の方からインターフォンが鳴った。
「先輩、何をやっているのですか。早く学校に行かないと遅刻してしまいますよ」
インターフォン越しに待っていたのは制服を着て待ちくたびれている九重だった。
麻奈は俺と一緒に学校に行くのがいつも日課になっているが、今日は珍しく九重が迎えに来た。
「どうして九重が待っているんだ?」
「麻奈さんに任されたのですよ。早く行きますよ」
「外に居るのもなんだから中に入って」
九重の焦らせる口振りに俺は急いで学校に向かう。
「先輩は何をやっているのですか!」
「時計が止まっていて」
「言い訳にもなりませんね」
「次は気を付ける」
学校の壱学期の初頭に行われるテストがあと三週間後に差し迫っている中で、今週末には麻奈が入部しているバレー部の新人戦も行われる。そのため、今週から朝練があるらしい。だが、俺は初日から九重に迷惑をかけてしまっていた。
「さすがに迷惑をかけないように自力で行くって言ったものの初日からこれだったんだよ」
「先輩は麻奈さんが居ないといけませんね」
九重は言い訳を言う俺に呆れて笑顔で返した。
その後、学校は二人揃って、遅刻して登校することとなった。
「それで…」
正座する俺、少し高い所から見る教師。どうしてこんな状況なのかと言うと、教師曰く『椅子に座った状態で指導をすると生徒を見下ろすことができないだろうが』と今の時世では考えられない教育であり、社会的にもアウトの正座を生徒にさせるさっきーちゃんが俺を目の前で見下していた。
「だからさっきから言っています通り時計が止まっていて…」
「寝坊したから遅刻したと…」
「はい…」
「言い訳をするな」
俺がさっきーちゃんから一生分の説教をされている最中、教室に居る生徒は笑いが絶えることがなかった。滅多に見られないさっきーちゃんの激怒に生徒たちは笑っているが、やられている俺にとっては、地獄のような時間だった。
「どうだったよ。さっきーちゃんの説教は?」
「何も言うな…」
「だなぁ、俺だったら死ねるわぁ。まぁ今回を反省して遅刻をしないようにしないとな」
「お…おう」
次に正座されそうな奴、一位の雅樹から言われたくなかったが、俺は詰まりながら返事した。
さっきーちゃんは常に時間厳守で喧嘩をする者よりも遅刻する者の指導が厳しいので評判だ。
「おい。望月、比嘉。放課後、トイレ掃除だからな。覚悟しておけ」
俺と雅樹が話していると、ホームルームを行っていたさっきーちゃんの指導してきた。
「どうして俺までさっきーちゃん」
「あぁ?」
「先生…」
先生の話を聞いていない俺たちはさっきーちゃんの反論することもできず、仕方なく天を仰いだ。
一時はどうなるか分からなかったさっきーちゃんの説教が終わり、通常の授業が始まる。
そして、放課後を迎えた。
「はぁ~」
雅樹はトイレブラシを杖棒のように顎の下で支えていた。
「おい、雅樹。手を止めるな」
自主的に掃除を続けていた俺に反して雅樹は暇そうに立ち尽くしていた。
「おい、比嘉。暇そうだな」
「先輩、掃除は終わりましたか?」
ある程度掃除を終えていると、さっきーちゃんとと偶然会ったと言う九重が様子を見に来た。
「あと少しで終わるよ」
さっきーちゃんは掃除をしっかりしていた俺に感心してくれたのか、早めに帰って良い許可をくれた。
「そんじゃあ俺も…」
雅樹も俺と帰ろうとするが、さっきーちゃんが帰らせないように目の前を塞いだ。。
「お前はあとの掃除だ…」
「う…うぃーす」
辛い顔をして雅樹は俺たちを羨ましく見ながら掃除を再開した。
「よし、帰るか…」
「はい」
速めに終わった居残り掃除だが、麻奈は未だ部活動を行っていた。現在の時刻は五時四十五分頃。太陽は傾き出し、ゆっくりと静かに沈む時間になっていく。静けさが広がる空間はそう長い間あることもなかった。
『ドーン』
学校の校門付近にいた俺と九重は突如、大きな揺れと大きな爆発音に襲われた。
「な…何だ?」
「先輩、ショッピングモールあたりで煙が上がっています!」
「煙?」
俺が大きな揺れに驚いている中でも九重は状況報告を続け、次の行動を見ていた。
「私は調査に行きます」
「俺も行く」
「しかし」
俺は常に持つようになった二冊の魔導書を取り出した。
「それは…。この間の魔導書『イブリス分書』と『ケルビル外典』…。」
「おい。魔導書」
『どうした?』
「俺に手伝え」
『いいぜえ。お前さんの力になってやるよ。それと私はクルスリアって呼んでくれ』
『私もあなたを守ります。私もアイリアとお呼びください』
魔導書の二冊は俺の話に乗り気で力をなることを誓った。
「この通り、魔導書はあるから」
「分かりました。私は先に行きます」
九重は校門から出てすぐに建物の上に飛び上がり、そのまま火元に向かった。
俺は九重の後を追って向かった。
「おい。待て!…」
早く行かねえと…
喚き声や悲鳴が多く聞こえる中、俺は頭上に居る九重を地上から追いかける。しかし、逃げ回る住民を押しのけて向かうが、追いつけないまま九重の行方が分からなくなった。
「クソ!見失ったか!」
『兄ちゃん、さっきの譲ちゃんの所に行きたいのか?』
俺が九重を探す方法を考えていると、クルスリアが話しかけてきた。
「手伝ってくれるか」
『飛行魔法ならできるぜぇ』
『ちょっと待ってください。ちゃんと契約をしていないうちは…』
クルスリアは俺に協力することにしたらしく、空から探すことを提案してきた。
『魔力で浮くだけだから安心しな』
『私もサポートします』
俺は魔導書を強く握り、全身の錆びのような血管から非科学的な力を流し、体が浮き始めた。
「お前たち頼んだ!」
『おぅ』
『はい』
俺は煙の元へ向かいと、既に九重がショッピングモールの入り口に立って居た。
「九重。早すぎだ!」
「先輩、どうやってこんなに早く…」
「追いかけて来た」
九重は思っていたよりも早く着いて来た俺に驚いて見つめて来た。
「それより此処は鉄の匂いがするが…」
「これは鉄ではなく、血です」
俺が見える限り、辺り一面が真っ赤に染まり、まるで塗料を溢したように広がっていた。
「この赤いのが血だって言うのか」
「先輩、どうやら敵が来たみたいです」
九重は俺に警戒を促してすぐに人間の体から血を吸う白髪で大男が現れた。
「そこの魔法使い。今すぐにこの方から離れなさい!」
「インペル〈強欲〉ゲート〈錬金術〉に接続。構成開始」
大男は手の平から魔法で剣を作り、俺たちを襲いに向かって来た。
「九重、危ない」
「仕方ありませんね」
九重は腰に付けていた木刀を持って構えた。
「インペル〈強欲〉ゲート〈協力〉に接続」
九重が一言だけ呟くと、俺にも見えるオーラを纏い、大男の攻撃を受け止めた。
「あなたの目的は何ですか」
「人工島とはこの世界と対する理で作られた負の遺産そしてこの島を作った、MIOの創設者鎖王卓司を殺し、この島を沈める。それが我が組織、反魔道組織パラドクスからの制裁だ」
「反魔道組織…」
「パラドクス?」
「この世界の在り方は間違えだらけだ!そして異端が蔓延るこの島こそがこの世界の終わりの地」
「クルスリア、こいつを止めることはできるか?」
『当然だ。だがお前さんのインペルは決めたか?』
「インペルって何だ」
「インペルも禄に分かっていないガキに俺が負けるわけがねえだろうが」
俺はインペルが何なのか分からず、魔法の使い方を考えていた。
『お前さんが魔導士としてしたいことを目指せば良いのさ!』
「したいこと…俺はこの不合理な世界を『支配』してやる」
『それは良いな!マスター。マスターの『信念』、『魔力』、『才能』を私に込めてこう称えろ』
「インペル〈傲慢〉ゲート〈支配〉に接続する」
魔力が俺を覆い、力が溢れて来た。
「先輩…」
「この力。まさか…魔王か…」
俺を囲っていた魔力は物質変換し、フードとマントも付いている黒い服へとなった。
「先輩…」
『マスター優しくやってくれよ』
「そのやるは殺す方だろ」
『無論だ』
魔導書は俺の性格を知らないのか、簡単に恐ろしい提案をしてきた。
「俺が捕まるから無しだ」
「所詮は『魔王見習い』にすぎん!死ねぇ」
「先輩、後ろです」
九重は俺を心配して大声で呼びかけて来たが、何となく敵の行動が分かっていた気がして軽く避けた。
「ちっ。仕方ねえな。我に従える人形よ、初心者共を潰せ」
大男の声に従い、周囲に散らばった血と骨が集まり出し、大量のスケルトンを生み出した。
「九重、こいつらを捌けるか?」
「私でもこれは多過ぎます」
『マスター、私からの提案だが、あいつと同じ事をやったらどうだ』
「俺は血から人形を出せる特技はないぞ」
『そっちじゃない。〈錬金術〉さ』
「〈錬金術〉?」
『あの錬金術師が魔法で作った剣のような物をマスターも作って対抗しようぜ』
「確かにな」
「簡単に言っていますが。錬金術は先輩のインペルでは出来ません」
『やってみるのも一興だろ』
「ですが」
「行くぞ、クルスリア!〈錬金術〉」
『インペル侵食開始!〈錬金術〉実行』
俺の手元を中心に魔力の渦が生成され、クルスリアの姿が銃へと変わり始めた。
「敵の数が減らない…」
『バーン』
「待たせたな」
九重の時間稼ぎのおかげで俺もようやく攻撃ができるようになった勢いで周囲のスケルトンを撃ち抜いた。
「それが先輩の魔法…」
『まあ。真似みたいなものだけどな』
クルスリアは九重の疑っている顔にも平然と言い返した。
「ちっまだ湧くのかよ」
「先輩、スケルトンですが、どうやら奥にある魔法陣から湧いているようです」
九重が示した方を見ると、黒く光る円形の陣があり、そこからスケルトンが出ているのが俺にも見えた。
「私は魔法陣の破壊します。先輩は援護をお願いします」
「分かった」
「それではお願いします」
九重は一言残して、魔法陣の方へと一直線に駆け出し、俺は集まるスケルトンを撃ち続けた。
「そう簡単にさせるわけにはいかんな」
大男は魔力を魔法陣にさらに注ぎ、湧く量を増やして来た。
「これでもインペルⅩの一人。数で押し負けるわけには行きません」
九重は俺の援護すらも必要なのか分からないくらい敵を蹴散らしていき、魔法陣の描かれた地面を切り裂いた。
「先輩。ありがとうございます」
「おぅ」
九重は俺に感謝すると大男の方に集中した。
「ふっ。この程度で本気とは思わない事だな。こんなものはただの足止めにすぎん!」
「先輩、あの剣は厄介です。早めに片を付けます」
九重は対策を立てる事もなく向かった。
「九重、待て」
「失せろ、小娘」
錬金術師は九重に剣を振り下ろした。
「くっ、」
『パキ』
九重の木刀は錬金術師の大男との一撃で刃先から砕け散った。
「夜月!」
「ぐはぁ」
大男が向けて来た剣は九重を庇った俺の胸部を貫き、腹部の方へと切り広がった。
「せん…ぱい…」
「魔王が人間の娘を庇って、死ぬとは」
「せ…先輩」
「治安部隊が来る前に我は退散させていただく」
『男はいなくなったようですね。イブリス分書』
『そのようだな。ケルビル外典』
「先輩は大丈夫なんですか?」
『案ずるな娘。こいつは生きているぞ』
「ですが先輩が…」
『マスター、そろそろ起きろ』
「俺は一体…」
『マスターは一回死んだ』
クルスリアの淡々とした口調で反応にも困る俺の横で、九重が俺の体に抱きついて離れようとしない。
「先輩はなぜ生き返ったのですか?」
『マスターのいいえ。魔王の力で生き返ったのかと』
「先輩は不死身と言うことですか」
『そうかもしれないし、そうでもないかもしれないぞ』
九重はクルスリアとアイリアが話を聞きながら周囲を見回し現状確認をする。
「大騒ぎになったな」
「はい…ここはおそらくMIOの部隊が来るかと」
俺たちは体がボロボロの状態のまま、MIOの部隊に説明するために待っていた。
「その…先輩が私を庇った時、下の名で呼んで…」
「ダメだったか」
「い…いいえ、今後も下の名で」
「そっか、夜月が良いのなら」
「たぁ!」
俺が夜月と久しぶりに穏やかな会話で楽しんでいると、目掛けて攻撃して来た。
「うわぁ」
俺を襲い掛かって来た攻撃は俺の体を霞ませ、尻もちを搗く形で避けた。俺が今までいた場所には剣が刺さっており、笠木が剣を掴んで立っていた。笠木が俺を睨んで舌打ちを一度した後に夜月へ向かっていた。
「大丈夫?夜月。魔王!怪我させなかったでしょうね」
「夜月を見ればわかるだろ」
「彩花さん、先輩から助けてのお蔭で今のところは…」
「魔王に?」
「この人は優しいですし、何もしませんので安心して下さい」
「それなら良いけど」
「しかし、私の木刀が折れてしまったので不安ですね…」
「夜月、寮に槍を忘れていたから持って来たのよ」
「ありがとうございます」
「えっと…」
「どうした、変態」
「変態ではないぞ」
抱き着いている笠木と抱き着かれている夜月はじっと俺を凝視して睨んできた。
「それと勝手に夜月を呼び捨てにしないで、夜月だって…」
「私は別に」
「え?でも夜月って呼び捨ては嫌いって」
「そこまで気にしてませんし、少し恥ずかしいと思ったので…でも先輩だったので恥ずかしくはないというか…何と言うか…」
「それで笠木さんはどうしてここに居る?」
「事件の確認よ。大体どうしてあんたがここに居るのよ」
「俺は…火事の偵察を」
「野次馬ってことね。呆れた」
笠木は俺と夜月の二人で来ていることを分かっているのか、ため息を吐いてきた。
「それで犯人は?」
「大柄な男性で錬金術師でした」
「また錬金術師なの?」
「また?」
笠木の反応が気になり、声を漏らすと簡単に話してくれた。
「この頃、巷で暴れているようなのよ」
「狙いも知らないって、ならどうしてここまで派手にしたんだ?」
「知らないわよ。って。あんたと話すなんて…」
「おい!」
「先輩方、楽しそうですね…」
笠木のうざい返しに怒っていると横にいた夜月がじっとこっちを見つめて来ていた。
「夜月、違うの!この男が…」
「どうして俺なんだよ」
「全く。お前たちはいつまでイチャつけば気が済むんだ」
「げ…」
そこには身長150㎝あるかないか出ている所は出ているロリがいた。
「げ…ではない、私に先生として此処に居る理由を話せ」
「麻樹先生?」
「あぁ。さっきーちゃん、副業はMIOの監視と神戒島の事件等の処理をやっているんだよ」
「公務員は副業禁止だろ」
俺が夜月にさっきーちゃんの説明と野次を飛ばすと、俺の頭の横に拳を当てこめかみの辺りをグリグリと押し潰して来た。
「お前のお守りは誰がやっていると思ってんだ!」
「痛い痛い! 」
俺がさっきーちゃんの攻撃に踠いていると夜月が俺を他所に話を続けた。
「先生は先輩の監視を?」
「安心しろ。私はこのバカどもの教師なだけだ」
さっきーちゃんは俺の頭に手を置いて、夜月に説明する。
「それで…だ。高校生がこんな夜に年の変わらない女子中学生を連れ出すとは理由を聞こうか」
「言い方が悪いわ」
「学校から煙が見えたので調査と処理に」
「夜月は動じないな」
「何ですか?」
「お前も監視も大変だな」
「どう言う事だよ」
さっきーちゃんは夜月の話を聞いて不安な顔をしていた。
「変態魔王の監視はきついだろ」
「任務ですから」
「拒否しないのかよ。ってそれより俺たちは帰って良いですか?」
「もう帰って良いが、明日は遅刻するなよ」
さっきーちゃんは今日の遅刻を的確に刺してきた。
「お…おう」
「はい」
俺たちはその帰り、寄り道や楽しい話をすることなく、疲れていた。
「封魔さんどうしたのですか?その赤いのは」
「これは怪我して」
「大丈夫…じゃないですよね、包帯巻きますか?」
「魔法で直してくれたから大丈夫」
「そうですか、それなら良いですが…」
「お風呂沸いていますのでどうぞ」
「助かる」
「いえいえ」
家帰ると、麻奈がいつもと変わらずに笑顔を見せてくれた。
一方その頃、沙希と彩花は…。
「にしても、派手に散らかしたな。例の錬金術師は…」
「元インペルⅩ、Code,0のあなたでさえ派手と言うとは」
沙希と彩花の横には、気だるげな口調で間の抜けた男が一緒にいた。
「インペルⅩは元だが、Code,0を捨てた覚えはないぞ」
「そんなに責めないでくれよ。沙希さん」
「深夜徘徊は許可してないぞ。インペルⅩ No,1 比嘉雅樹」
「ひどいなぁ、俺も丁度この島で任務を行っていて、邪魔されたら困るからよう。協力しましょうぜぇ、先生!」
「あなたがインペルⅩのNo,1なのですか?」
「君がインペルⅩに新しく入った、笠木ちゃんだね」
「笠木=A=彩花です」
「知っているよ。もう一人の九重ちゃん、学校であったよ」
「夜月ですか」
「あぁ。それと俺がNo,1だって言わないでね」
「分かりました」
「特に封魔の周りには」
「魔王ですか」
翌日
「先輩、いつまで寝ているのですか?」
「朝なのか?」
俺が目を開けるとエプロン姿の夜月がお玉を持って起こしに来た。
「どうして夜月が?なぜお玉」
「麻奈ちゃんから家に上がって良いと許可をもらったからです」
「そっちじゃなくて、お玉」
「私が料理をしているからです」
「夜月って料理できるのか、と言うか…麻奈は?」
「麻奈ちゃんは朝練だそうです」
「そっか、悪いな」
机にはご飯とみそ汁、焼き魚があった。
「夜月って何でもできるのか?」
「MIOで広く浅く教えてもらいましたので」
「そうだったのか」
「うまいぞ、このみそ汁」
「ありがとうございます」
「本当に良いお嫁さんになれるよ」
「お…お…お嫁さんですか」
「おぅ」
「あ…ありがとうございます」
俺は夜月のご飯を食べ終えると、片付けて学校の準備を整えた。
「学校に行くか」
「はい」
学校に行く途中に至る所から視線を感じた。
「おい、夜月」
「はい、誰かに見られています。私が調査を」
「おっ!封魔と…転校生の美少女じゃないか」
「比嘉先輩、おはようございます」
「どうした、封魔まさか一緒に登校する仲になったとは」
「ちげぇよ」
「なんだよ、近所だったから、麻奈ちゃんの代わりに来ただけかよ」
「悪かった、がっかりさせて」
「嫌味か」
雅樹は俺の詫びにムカついているのか、軽く殴りながら言い返して来た。
俺と夜月、ついでに雅樹はそのまま学校に向かい。いつの間にか、視線が感じなくなった。
夜月と分かれ、俺と雅樹が教室に向かうと男たちが集まって来た。
「おはよう、封魔」
「どうして俺に寄って集って」
「お前、今日も超美人転校生と登校したらしいな」
「仕方ないだろ、家が横なんだよ」
「お前ら!封魔を殴るなら俺も参加させろ!」
「何を言っている!お前も一緒に来ただろうが!」
俺と雅樹は男たちになす術なく、やられた。
「全員席に着け、HR始める」
「はぁい」
「今日は何だ。転校生が来た」
「この時期ですか?」
「入れ」
教室に入って来たのは見覚えがある女子だった。
「本土から来ました、笠木彩花です」
「遂にこの教室にも春が来たのか」
「げ…」
「あー!どうして、まおうが!」
「うるさいぞ、転校生2号」
「魔王?」『しまった』
「ぷっ、はぁぁぁ」
「封魔が魔王ってありえないだろ」
「だな」
「どうして…信頼されているのよ、魔王のくせに」
「封魔が魔王になっても何もしなさそうだよな」
「あり得る」
『あの馬鹿女、何暴露している』
「封魔って転校生に好かれるのか?」
「これは違うだろ」
「これって何よ、私には笠木彩花って言う名前があるの」
「笠木さんと封魔はどんな関係なの?」
「敵です」
「封魔、残念だったな。完璧に敵になったぞ」
男たちは俺の方を見てケタケタと笑い、笠木に癒されていた。
「そいつが勝手に言っているだけだ」
「それじゃあ、転校生2号はバカの横だ」
「誰がバカだ」
「先生に対する礼儀が成っていないようだな」
「アハハ…もしかして、俺をそいつに殺させる気ですか」
「笠木さんは殺さん。私が…。ホームルームをやるぞ」
一瞬、どんでもない発言が先生から聞こえて来たが、そのままホームルームが始まった。
「なぁ。笠木さん、狙いは何だ」
「は?あなたが昨日、錬金術師と戦ったから危険レベルが上がって、監視を命じられたのよ」
「俺のせいか?」
「当たり前でしょ。夜月は嫌ではないって言っているのも任務だから決まっているわ」
昼休み夜月はやって来た。
「先輩、と…笠木さん?」
夜月は俺を見てからすぐに不思議な顔で笠木の方を見つけていた。
「夜月、この男が嫌だったら私に言ってね。代わるから」
「私は先輩の事は嫌ではないですが…」
「本当に?」
「はい…」
「代わりたかったら言って良いのよ」
「先輩は私がいないと何するか分かりませんので」
「何か棘があるな」
笠木は俺への失礼な罵倒と同時に夜月のことを心配事を聞こうとしていた。
「先輩、安心して下さい。私から離れる事はないので」
「ちょっと、どうして私だって聞いた事のないほどあんたが好かれているの」
「それは封魔と九重ちゃんが付き合っているからよ」
俺たちが仲良く話していると、聞き耳立てた変態…。雅樹が俺たちの会話に割り込んできた。
「付き合ってないよ…な、夜月」
「はい、今朝、私が作ったみそ汁を食べた先輩の感想は良いお嫁さんになれると言われましたが付き合っていません」
夜月は真っ赤になりながら、言った。
「封魔たち一緒に暮らしているのかよ」
「く…暮らしていません、ただ、先輩の家の横に暮らしているだけです」
「夜月、落ち着け!」
「は…はい?」
「へぇ~、あんたの朝食はお腹の中にあるわよねぇ」
「か…笠木さん、校内で剣を出すな」
「みそ汁を出せぇ」
「や…やめてくれぇ」
笠木は冗談のノリを始める寸前で落ち着いて、夜月の方を真面目な顔で見つめた。
「コホン!それとあなたたちに忠告。あの錬金術師を探さないわよね?」
「探すつもりだが」
「あの錬金術師はあんたより強い、それにもし夜月に何か起きたら、ぶっ殺すから」
「さらっとえげつないな」
「夜月のためなら、何でもするのが私のモットーだから」
「どんなモットーだよ」
「つまりあなたのような男から夜月を守るのが私なのよ」
「俺を何だと思っている」
「獣よ」
「人間扱いしてねぇのかよ」
「当然でしょ」
「笠木さんと先輩!言い争いしないで下さい」
「ごめん」
「悪い」
俺と笠木の喧嘩を夜月はため息を吐きながら止めて、話を戻した。
「それで、例の錬金術師の居場所ですが」
「どうやって探すかだろ」
「MIOにも情報が来ていないのよ」
「仕方ない、行きたくないが知っていそうな人からだ」
「麻樹先生の所に行きますか?」
「あぁ」
俺たちは昼の僅かな休みを使い、職員室へと向かった。
「さっきーちゃんいる?」
「誰が何だって?」
さっきーちゃんは俺に近くにあった本を投げつけ睨んできた。
「話がある」
「大方、昨日の男を聞きに来ただろ」
「話が早い」
「話すことはない」
「どうして」
「お前が探す必要はない」
「だが」
「お前たち、授業に行け」
さっきーちゃんは俺の質問を全て封じて教室に戻るように言って来た。
「やっぱりだめだったか」
「そう言えば、パラドクスの錬金術師ですが、鎖王卓司を殺して島を沈めると言っていましたね」
「そうだったような?俺たちが聞いた話をさっきーちゃんに話すわけにもいけないからな…」
「でも情報が少ないので見つかるかどうか…」
「MIOの情報もそこまで多くないわよ」
「分かっている」
「ならどうやって調べるのよ?」
「そうだな…」
「まさか何も考えていないの?」
「一応、考えている」
俺にはもう一人、思い浮かぶ人材がいるが、何を伝えるべきか分からずに言い悩んだ。
「教えてみなさい」
「教えたくないって言うより言い辛いから一旦、教室に戻って良いか?」
「待ちなさい、望月封魔!」
俺は授業が始まる五分前の予鈴が鳴ったため、二人を逃げるように教室へ戻った。




