叫び
「ぐぁああああ!!」
香ノ木さんの攻撃に鳳翠は悲鳴を上げて暴れ出した。
「鳳翠さん、落ち着いてください!」
「くそ…俺は知らん」
龍弥には操ることができなくなったのか、研究室の奥へと逃げていった。
「待ちなさい!」
香ノ木さんは鳳翠の無差別攻撃を避けながら龍弥を追いかけた。
「鳳翠さん、邪魔をしないでください」
「香ノ木さん、無理をするな!」
香ノ木さんは悔しそうな表情になり、落ち込んだ。
「おい、クルスリア起きてくれ」
『何だ?起きているぜぇ?マスター』
クルスリアは俺が呼ぶ声に待っていたようで話の話題を変えることなく聞いていた。
「状況は分かっているようだな」
『要するにあのにいちゃんの魔力暴走を止めてほしいってことか?それは難しい話になるぜぇ』
「どうしてだよ」
『あいつとは、直接魔力で繋がっていないからなぁ。暴走している力をどうにもできねえよ。いや待てよ…』
クルスリアは残念そうにしている俺を察し、何か考えて思いついた。
『もしかするとだが、マスターの支配だったら何かできるんじゃねえか?』
「俺が?」
俺の魔法について自分でも理解出来ていないこともあり、クルスリアの話に耳を疑った。
『暴走している魔力は本来、暴走している奴の力何だろ?だったら魔力の流れを支配すれば元に戻ると思うぜぇ』
「クルスリアさん。本当にそんなことが出来るのですか」
俺とクルスリアが鳳翠の暴走を止めようと考えていると香ノ木さんも聞いていた。
「おい、凰火を一人にして大丈夫なのか?」
「ええ。凰火さんは応急処置はしましたし、待っているように言ったはずの彩花さんたちがいましたので預けました」
夜月は呆れた表情になりながら助かった風に話した。
「苦労するな…」
「本当にみなさん自由すぎます」
夜月が話す隙間から香ノ木さんは俺の方を睨みつけてきた。
「俺か?」
「ええ…」
俺の行動で迷惑をかけていたようで夜月も縦に頷いた。
「悪いな」
『マスター、その話はあの方を助けてからじっくりしてください!』
俺と夜月が話していると夜月の持っていた魔導書から久々に声が聞こえてきた。
「久しぶりって感じだな。アイリア」
『封魔さん、お久しぶりです』
「アイリアさん。彼を止めます。お手伝いして下さい」
夜月は魔導書に話しかけると魔力を込め始めた。
「〈強欲〉に接続。ゲート〈錬金術〉を更新します」
『インペル〈強欲〉の魔導士を確認。ゲートの更新を開始します』
夜月は今までの魔法装束と同じだが、武器は二丁の拳銃となっていた。
「香ノ木さんは援護を」
「ええ」
「先輩、行きます」
「おう」
無差別に攻撃する鳳翠の攻撃を避けながら俺と夜月は切り込んだ。
「先輩、このままの懐に。私は鳳翠さんの注意を引きます」
「分かった」
夜月の指示に従順に従い、鳳翠へ目掛けて走っていった。
「鳳翠さんこちらです」
夜月は銃に込めた魔力を何発も鳳翠に撃ち続けた。
「先輩!」
「夜月、助かった!」
俺は鳳翠の近くに辿り着き、手を体に当てた。
「支配…」
「魔王!下がりなさい!」
香ノ木さんは鳳翠の攻撃を予知したのか。俺に下がるように指示をした。
「ぎゃああああ」
「耳が…」
鳳翠は危険を感じたのか。鼓膜が破けるかと思える威嚇の咆哮を放った。
「せ…先輩…」
俺は叫び声に対して、耳を抑えるくらいしかできなかった。
「魔王!直ちにそこから離れなさい!」
香ノ木さんの声は太鼓を叩く音のように聞こえた。
「先輩!」
俺の耳が最後に聞こえたのはその言葉だった。




