長くて短い繋がり
「どけ!!」
俺は彩花の魔法を使い、ヘドロの中心へと進んでいく。次第に数が増えていったが、大した攻撃もないため、心配もなく行くことが出来た。
「あれだな」
俺の視線の先には男の子一人と狼一匹が密着していた。
「えっと。鳳翠で良いのか?」
「お兄ちゃん誰?」
鳳翠は凰火が成り切っていた姿に非常に似ており、俺はじっと見て初めて会ったとも思えないくらいだった。
『ガルルルル』
「コンちゃん!」
混沌は鳳翠の声に反応して後ろへ下がった。
「懐いているんだな。」
「僕とは長いからね。それでおにいちゃんは誰なの?」
鳳翠は混沌の頭を撫でながら言った。
「凰火の友達ってところだな。」
「凰火の?生きているの!じゃあ。綾姉ちゃんは?」
俺が凰火の名前を言うと驚き、大きく反応した。
「生きているぞ。今は学園でお前さんを待っていると思うぞ。」
鳳翠はびっくりした顔になり、質問をいくつもしてきた。
「そっかあ。良かった。」
鳳翠は嬉しそうにしており、表情も柔らかくなった。
「もしかしてだが、お前さんが彩花たちを助けたのか?」
「えっと。そうだけど?」
「そっか。助かった。」
俺は捕まっていたはずの彩花たちが偶然にしても出来すぎていた無傷の再会が出来たことに合点がいった。
「少しの間だったらクローンを通じて動くことができたんだけど。今回の行動がバレてしまったら調整されて動けなくなったと思う。だからここからも出られないかな」
幼い鳳翠はどうにも出来ないようで俺はどうにか助けようと考える。
「なあ。そいつは使えないのか?」
「コンちゃんのこと?」
鳳翠は落ち着いている混沌の方を見て様子を見る。
「力を貸してくれる?」
『ぎゃああぅ』
混沌と呼ばれていた神話の悪霊は鳳翠の頬を擦り合わせた。
「ありがとう。コンちゃん。」
俺が鳳翠との話をしているとクルスリアが悠々と歩いてきた。
「お前さん。話は済ませたのか?」
「おう。クルスリアじゃねえか。」
クルスリアを見ると変わらない姿で立っていた。
「マスター。私たちは戻るぞ」
「そうだな。じゃああとでな。」
俺は鳳翠に言うとそのまま来た方向へと進んだ。
「先輩!」
「夜月か?」
目を覚ますと目の前には夜月が焦った顔で見つめていた。
「悪い。どうしたんだ?」
「それはこっちのセリフです!混沌を触って急に倒れてしまってそう思ったらまた急に落ち着いたのですよ!」
夜月は焦っているせいか理解しにくいスピードで説明しており、俺も軽くだが理解した。
「それで混沌はどうしたんだ?」
「今は美沙さんと香ノ木さんが抑えています」
俺は話を聞いて混沌の方へと向いた。
「あなた。漸く目を覚ましたのね…。全く。心配かけないでくれないかしら。」
「悪いな。彩花」
「べ…別にあたしは心配していないわよ!」
彩花は恥ずかしいのか怒っているのか中間の表情で文句を言ってきた。
「悪かった」
「だから!」
俺は改めて彩花に謝り、混沌に近づいた。
「ちょっと。あんた。今度は何をするのよ!」
俺は魔法装束にもならず、危険な神話の悪。混沌に近づいた。
「魔王。危険です!」
「もう大丈夫だ。結界を解いて良いよ。」
俺はそう言って円柱形に発動していた結界に触れると簡単に解け、紙のように散らばった。
「先輩!」
意図せず解けたことに驚いたが、俺は混沌に近づいて様子を見た。
「大丈夫か?」
「一体。魔王に何があったのですか…。」
「分かりません。ですが、先程まで暴れていた獣が落ち着いたように見えます」
俺は混沌の毛に触れて撫でると嬉しそうな表情になった。




