目醒め
「先輩。その大丈夫なのですか?」
俺が気がついてすぐ、混沌に近づくと夜月は警戒して尋ねてきた。
「大丈夫だよ。安心して良いよ」
俺は不安な表情になっている夜月に安全なことを話した。
「そうは言ってもね…」
「はい…」
彩花と夜月は疑っているわけではないものの戦っていたこともあり、警戒を抜けきれないようでお互いの顔を見合わせた。
「でもこの子可愛いかも!」
美沙はそんな二人とは違い、積極的に神話の悪と言われている獣の体を触れてみたり、柔らかい毛が生えた体に顔を羽詰めてみたりしていた。
「おい。流石にやりすぎだ。」
「柔らかい…」
美沙は俺の話に耳を傾けず、混沌に触り続けていた。
「全く。美沙さんは…。ここは敵の本拠地ということを分かっているのですか!」
「そう言う香ノ木さんも触っているが、大丈夫なのか?」
二人は混沌のふさふさした毛に取り憑かれたように触っている。
「おいおい。お前たちはここは敵陣の真っ只中っていうのに緊張感がねえな。」
「こ…これは異常がないのか確認を!あくまでも確認です!」
香ノ木さんは無茶な言い訳をしたが、触るのをやめなかった。
「えっとそちらの方はどなたですか?」
「おいおい。嬢ちゃんとは長い付き合いだろ。少しは察してくれよ」
夜月は初めて見るクルスリアの人間の姿に分からないようで首を傾げていた。
「マスターの最愛のペット。イブリス分書こと。クルスリアだぜぇ!」
「クルスリアさんですか!」
夜月はクルスリアの姿と言動が一致したようで驚いた。
「まあ。私のことは良いだろ。それよりもこの先だろ!」
クルスリアは話題を戻してこの先のことについて聞いてきた。
「それでだ。本物の鳳翠はどこにいると思う?」
「そうだなぁ…。恐らくだけど実験サンプル連中が大切に捕えられていると思うよ」
凰火はいそうな心当たりがあるようで真っ先に居そうな場所を言った。
「じゃあ、行くか。」
「はい」
「行くぞ!」
混沌を触り続ける二人を無理矢理動かして先へと進んでいく。
「分かりました。動きます。自分で動きますから離して下さい!」
香ノ木さんは引っ張られるのがとても嫌そうなようで争った。
「分かったよ」
俺は香ノ木さんを掴んでいた手を離して、歩かせ美沙を掴んでいた手も離した。
「お前も自分で動け」
「魔王。お願い」
美沙はそう頼んでくると俺の背中にしがみ付き離れようとはしない。
「おい!」
「先輩!何をしているのですか!」
「変態!」
「いや待て!おかしいだろ!こいつが!」
美沙が自ら抱きついたことだったが、夜月と彩花はすぐに反応してきた。
「良いじゃん。減るものでもないし。」
「ふざけるのも良い加減にして!」
美沙は全く離れようともしなかったので諦めて歩こうとすると凰火が怒って注意した。
「ごめん。」
いつもは空気なんて読まずに好き勝手にしている美沙も凰火の表情を見て落ち込んで離れた。
「行くよ!」
「お…おう」
凰火の表情は心配な思いでいっぱいのようで険しい顔になっていた。
「たぶん、鳳翠がいると思われる場所は研究室でも最上階にある禁足地だと思う」
「禁足地?そんなものがあるのか?」
「詳しいことは私にも分からないけどいるならそこだと思うの」
凰火は建物内の地理に詳しいこともあり、迷うことなく先へと進んでいった。




