湯船に浸って語り合い
男たちの夢。それは女子風呂を覗くこと。いざ行かん。白き湯気が導くエデンへ!!
「ここが生徒も通う場所には見えないが」
俺はそう思って話したが、誘われたこともあり、入って見る事にした。
「いらっしゃい」
温泉に入る準備をしていなかった俺は悩みながら夜月とともに受付で入る準備をする。
着替え(浴衣・甚平の貸しあり)と書かれていたのを見てこんなことがあるのだと思いながら頼んでみた。
夜月と分かれ、各々の時間を決めてお風呂へ入ってみた俺は、夜月の話に嘘がないと思ってはいた。
ただ、裏切られたような気分にはなってしまった。なぜかと言うと…。
「よう!封魔じゃねえか」
いつも見ている雅樹と鳳翠が当たり前のように入っていたからだ。
「どうしているんだ?」
「それは夜月に誘われたからで」
あまり誘われない場所に疑わない方が可笑しかった。ここにいたと言っても少し前のことに通う生徒としてあげるのはいつもの生徒と通っていると言う前提があったことを忘れていた。
「へえ」
雅樹は何かを察したようで風呂に入り、体を洗っていると女子風呂の方の壁に耳をつけていた。
「夜月。あなたもやっぱりお風呂はここなのね」
「時間が早いので少ないと思っていましたが、意外といますね」
「夜月と魔王が朝から出かけたのを彩花が見ていたから」
「違うの夜月。聞いてくれる?」
彩花は美沙の言ってしまったことを誤魔化そうと、夜月に言い訳を並べていく。だが、誰よりも早く情報を得ているためなのかボロを出しながら言ってしまい墓穴を掘ってしまっていた。
「それが聞きたかったの!」
女子風呂には何人かの女子がおり、聞き覚えのある声に俺は気づいた。
「魔夜さん!」
彩花は急に話に入ってきた声の主に驚いて振り向いて話に入ってもらうことにした。
「二人は付き合っているのですか?噂では子どももいると…」
女子風呂では笠木と夢島姉妹がいるようだった。
「それは私のと言いますか。島で見つけて保護したと言いますか」
「そうなのですね」
夜月の話にがっかりした返事をするこころの口調は怪しい雰囲気があった。
「夜月さん。あの男はどうにかなりませんか?」
夜月とこころの話の途中に入ってきた新たな人がいた。
「魔王くんは悪い子ではないと思うよ。凛華ちゃん」
声の数も増えており、聞こえて来たのは間違いなく香ノ木さんと堀部さんの声だった。
「おい。雅樹。これは一体どうなっている?」
俺は不可解なことに聞いた声の女の子が大勢いることに怪しさを感じたため、雅樹に問い詰めることにした。
「俺が誘ったらみんな来たんだよ」
「そこまでに至った経緯を話せ」
雅樹は口が笑いながら説明してきた。
「簡単に言うと、偶然だよ。」
「ほう」
「彩花ちゃんが夜月ちゃんとお前がお出かけしたことを知ったから、俺の尾行に着いてきたんだよ。そして、偶然そこにみんなが居てね」
全くもって、偶然とはかけ離れた計画的な犯行だった。
「おい。それは最初から見ていたってことか!」
「何を言っている。当たり前だろ!こんな面白い場面を見逃すわけがねえ」
俺は明らかに可笑しな雅樹の考えに怒り、殴って済ませた。
「ちょっと待て。今の話だと雅樹は笠木よりも早くに知っているような話だぞ」
「ハイエナは誰よりも早く獲物に執着するものだよ」
俺は雅樹のキモさが人間どころか生物としても狂っていることに身をもって知ってしまった。
「堀部さんがあの男を評価するとは…」
「私は好きだよ。可愛いし。優しいよ」
俺は堀部さんに何もしていないはずだが、どうにもかなり信頼されているようで俺も何かとその話が気になり出した。
「良かったな。封魔。」
「うるせえ」
俺は女子風呂にも聞こえてしまうくらいの大きさで話を通してしまい、その時に漸く女子は男子を意識してきた。
「もしかして。あの男と一緒に入ってきたの?」
笠木は信じられないようで夜月に問いただしていた。夜月の声は少し時間を置いて聞こえてきたその返事は「はい」だった。
俺はその返事を聞いて頭を抱えて落ち込んだ。
「これまずいよな。俺死ぬよな。」と全く信用ならない雅樹に問いかけるくらいに窮地であると思えてしまった。
「心配するな。俺が埋葬してやるから」
雅樹は対策ではなく、後処理の話だけをしており、本当に使えないやつだと思えてきた。
「やあ。封魔くんと雅樹くんじゃないか!」
俺が必死に考えていると風呂には学園長ジオが入ってきた。
「学園長もここにくるのかよ」
俺はその姿を見て出てきたのがその言葉だった。先生とはあまり生徒と関わりがないものだと思い込んでいた節もあり、驚きが先んじて出てきた。
「生徒がこんな時間に入るとは。珍しいね。」
ジオはいつもこの時間だったようで、俺と雅樹の方を見て話した。
「女子も。僕がこの時間に入るからか。入らなくてね」と悲しそうな表情で話を続けていたが、女子風呂の声が聞こえてくると蘇ったように表情が嬉しそうになって話をしてきた。
「雅樹くんはあの子たちの中で誰がオススメかい?」
学園長とはかけ離れた生徒へのキラーパス。答えると必ず絞め落とされる回答に雅樹は嬉しそうな表情で話に乗っかった。
「それはもちろん。封魔ですよ」と言った。
「ほう。その心は?」
ジオはアホのように声を大きくして答えを求めた。
「それは可愛いし。優しいから」
雅樹の答えは先程。堀部さんが言った答えに揃えたものだった。
「何!そうなのかい!」
ジオはわざとらしく話を聞こうと雅樹に相槌をして進めていく。
「封魔はなんと言っても優しいですから。ツンツンしてしまったとしても。甘えたくても照れて奉仕だけしたとしても。クールに会話を流していない間に話す相手だとしても気にせず愛してくれますよ!」
雅樹は何かを知っているかのようにジオへ答えていたが、俺でも感じる女子風呂からきた気配に「やりすぎた」と言って口を閉じた。
一方でジオは笑顔を絶やすことなく、俺の方を見て答えてもらいたくて見ていた。
「封魔くんは誰が良いのかな?」
「俺ですか?俺はまあ。夜月ですかね」
当たり前のように夜月を選ぶとジオは感じたことをそのまま言ってきた。
「そうだよね」
ジオは答えずとも分かっていた言葉を待っていたためなのか確定して返事をした。
お風呂に長く入るわけではないが、話していると、結局一時間は経っていた。
俺は雅樹と上がり、待合所で牛乳を買って夜月を待っているとお風呂で聞こえてきた女子が会話をしながら現れた。
「死ね」
「変態」
「穢らわしい」
「えっち」
女子は各々がまさきに罵声を浴びせて玄関の方へと向かった。
「本当にごめん。何でも買うよ…。」
雅樹はその答えに買いたいものを尋ねながら追いかけていく。
女子と雅樹が居なくなって程なくして夜月が歩いてきた。
「お待たせ…しました」
夜月と俺はお風呂のこともあったせいか。緊張しながらお店の前にあった夕涼みのできるベンチで落ち着くことにした。




