箱庭の『非』日常⑩
買い物を済ませた夜月は「行きたい場所があって。着いて来てください」と言って歩いてどこかへと案内を始めた。
「どこに行くんだ?」
「行ってみてのお楽しみです」
夜月が歩き続けて十数分。目的の場所に着いたようで近くにあったベンチに座って、隣を二度叩いて手招きしていた。
「ここです」
暖かい日差しが残っている昼下がり、日向ぼっこにちょうどいい場所で夜月と俺はゆっくりと流れる時間を過ごしていく。
「暖かいな」
「はい」
夜月が見せたかった景色それは海が見え、賑わっている街が眺められる高台の公園だった。
「眠たくなってくるな」
そう言う俺に夜月は軽く返事をするだけで気がつくと俺の方へもたれかかっていた。
「まあ。色々あったし。疲れたよな」
俺は動けなくなったので、夜月と同じように目を閉じて待つ事にした。
「せんぱい…」
俺が目を閉じていたせいもあり、夜月に呼ばれた気がしたが、その時を流れていった。
俺は目を覚ますと、夜月が俺の頭を膝に置き、海を眺めていた。
「どうしてこうなっているんだ?」
「先輩が寄りかかって来たのですよ」
俺が夜月の膝を求めて横になったのか聞くと赤くなって縦に動かした。
「お…おう。だが、どうして夜月は頭を撫でているんだ?」
「こ…これは急に動かすのは失礼ですし、何もすることがなかったので」
俺が知らぬ間に夜月に迷惑をかけてしまったようですぐに退こうと頭を動かした。
「すまん。痛くないか?」
「え?はい」
夜月にしたら自由になったので嬉しいものだと思っていたが、悲しそうな顔で下を見ていた。
「先輩のバカ」
夜月は小さな声でバカと言ったようだが、どうして言ったのか分からず、ひとまず謝ってみた。
「先輩には関係ありません!」
夜月は頬を膨らまかせ目を逸らした。俺はそれ以上のことは言えず、「そっか」とだけ相槌を打った。
俺と夜月が起きて動いたのは太陽が落ち始めた昼下がりの時間からにした。
「先輩。そろそろ時間ですので、行きませんか?」
夜月は時間に厳しいわけではないものの秩序に関する事になると厳しくなる性格だ。だが、未だに時間は二時か三時頃のため急ぐこともなかった。
「急いでください」
「そんなに急ぐ必要はなかったと思うが」
夜月が引っ張って行く先は学園の反対側だった。
「まだ先輩に案内したい場所があるんですよ」
夜月は道を迷わず歩き続けて行く。行き先が分からないが、俺は後ろに着いていき、途中でも街の案内をしながら目的地へと進んでいった。
「どこに行くんだよ」
「ここです」
夜月は俺に街の大半の観光と言える場所を案内した最後の目的地に教えてくれたのは街の温泉だった。至って普通の場所におかしな所がないのか疑うくらいごく普通の場所に夜月は楽しみそうに入っていった。俺はそれに着いて行くと本当に普通な接客を受けていた夜月がいた。
「先輩。ここの温泉は気持ちが良いのですよ。よく学園の生徒も通っているんです」
夜月が言っているのが嘘にしか聞こえないほどに通って来ている生徒、それだけでなくお客が途絶えており、何か可笑しさが出ている温泉になっていた。




