厭な奴倒します
続編です。
立ち寄った街で請けたクエストの為に、森へむかう四人。
池の周囲の樹木より遥かに高い位置に頭?。
これが、依頼の対象である巨大ミミズが目の前に姿を見せた。
一瞬、子供の時に魚釣りの餌にミミズを使い針で刺した時を思い出す。
子供ながらに、気持ち悪かった経験を頭に蘇らせると。
この巨大な奴を、斬り裂いたらどうなるんだ?。
こいつを倒した後の、惨状を想像したら手から力が抜けていくのを感じていた。
かと言って、このまま放置する訳にはいかないのだ。
「ディー、いつものを!」
「はひぃ!」
ディーネは、巨大ミミズのおぞましさに声が裏返っている。
けど、まだ彼女は遠ざかりながらも正気は保てているからマシで、リンは酷い。
最初にコレを見てから、ずっと地面に手を着いた状態で嘔吐が止められずにいた。
「苦し……、喰った物……、ぶえげぇぇ……全部、吐いてしまったぞぉ」
「リンは駄目だ! 、私とノベルで倒すぞ!」
「分かったっ!」
リンの惨状をを見て、彼女は戦闘不能と判断した。
『強化』を受けて、前へ出ては見たが水中から奴が出てこない。
水際ならさして問題と成りそうじゃないが、岸から離れるわけにはいかない。
下手に接近しすぎて、水中へ引きずり込まれると動きが執れなくなり、デカイ口の餌食にされるのは目に見えているだけに、不用意に接近する事も間々成らない。
そうか……、別に入る必要はないのか。
この前、大地を裂いた時の様にすれば接近せずに、巨体を斬れるじゃないか。
リベルタに視線をやると、軽く頷いて同意した。
今の顔は……、あの時の大地を斬り裂いた力に期待している様だな。
よしやるかっ!。
両手で上段に構えっ! 振り下ろす━━っ!
湿った地面が、ザクッっと音をたて剣が地面に刺さっただけで、水面は波一つなし。
「あれ?」
もう一度だっ!。
虚しくブンっと空を斬っり、ザクリと地面に剣が刺さる以外に何の音沙汰も無い。
たらーっと、冷や汗が流れるのを覚えた。
「ノベル、あの時の力は駄目か?」
言葉をなくし、黙って頷いて答えるしかなかった俺は、心の中で叫ぶ!。
使えねぇ━っ! なんであの時と同じに出来ないっ
「危ないっ、避けろノベル」
奴が体をくねらせ、表面の分泌物を俺に飛ばして来たのが目に入った。
俺は足で地を蹴り飛ばして横へ飛び退いて。
寸での処で難を逃れ、飛散した透明の飛来物を避けた後。
地面に張り付いた透明の物へ、視線を向けた途端に臭気が鼻を抉った。
ああ、あの強烈な臭いの正体はこの臭いかっ
今までの臭いより濃い臭気を放つ、この粘液物が今リンを苦しめている悪臭の元凶に成っていた。
それに目を奪われていると、奴は再び体をくねらせ始め汚物を飛ばす準備中だ。
リベルタは構えた弓で、その体に向けて矢を素早く数本放ったが体に接触した直後に、表面をすべり水面へと矢は着水していった。
「くっ、あの粘液のせいで、矢が滑って刺さらないっ」
「勢い良く回転する物を刺せたらいんですけどぉ……」
「なる程、粘液ごと巻き込んで突き破れば……しかしそんな物はないぞ」
戦闘中に珍しく、初めてかも知れない指摘をディーネが口に出しているのが耳に届いたが、リベルタの悔しがる通りにそれだけの回転物等は、誰も持っていない。
「このミミズ、気色悪い上に便利な身体してますねぇ」
「ディー、関心してる場合じゃないぞ……」
ディーネの、奴を身体を誉める様な口振りにリベルタから叱責されている。
だが実際、その便利な機能のせいで致命打が入らない
岸には絶対に近寄ってこない巨大ミミズ。
頭部を軽く揺らす姿は、笑いながら俺達に水中へと手招きしているかに見え。
小ばかにされた心境に、無性に腹が立ってきた。
「くそぉ、よくも私にこんな気色悪い臭いを嗅がせてくれたなっ!」
長時間、臭気に曝されて耐性ができたのか。
地面にへばっていたリンが、起きて立ちあがってきた。
「リン大丈夫か?」
「ええ、私にこんな臭い思いさせた事を、後悔させて挙げるわ」
バサッ! っと、黒翼を拡げ大地を蹴り上げるリン。
「覚悟ぉぉ!」
「馬鹿ぁー不用意に近付いたらっ」
俺の注意は、怒りに燃えたリンの耳には届いていない。
ミミズへ向って、猛スピードで突っ込んでいくリンへ、粘液物が飛ぶ。
それを、身体を捻って回避すると片翼で水面を切りながら、奴の身体を裂いた。
リンの大鎌で斬られ、体液と土色の血の混じった物が水面へ着水した。
「いいぞぉーリン。超高速で斬れば、滑る事もないのか」
「リンさん! 、格好良いですよぉ!」
二人の……、片方はやはり緊張感に欠ける物だが、声援を受けて益々調子を上げる。
空中で旋回し巨大ミミズを、斬り刻んでいく。
「へへぇ、次でその不細工な頭を斬り飛ばすっ!」
急上昇した後は急降下に転じ、大鎌を構えミミズへ切り込むリン。
次の瞬間にミミズの頭部は、水中へと斬り落とされる筈だった。
処がこれまで一度も水中に潜る事の無かった奴が、急潜行したかと思うと巨大な水柱が起きて、リンはそれに前方を阻まれて速度を落とした。
更に、視界を塞がれたリンは空中で停止した処を水中から、高速で飛んだ水デッポウに狙い撃ちをされて、水面へと撃ち落とされた。
「きゃああっ!」
悲鳴を上げながら上空から水面へと叩きつけられたリン。
水飛沫を上げて着水した後、四肢から力を失い水面に浮かんだ。
「いかんっ、水面に叩き付けられて気絶しているぞっ」
「リーン! 目を覚ませぇっ!」
「リンさん、起きてぇっ!」
俺達が大声でリンへ叫ぶが、岸から離れた水面で気絶したリンには届かない。
その水面のリンへ向って水中を移動する、黒い大きな影が見える。
その手前で、水中から頭を突き出して水飛沫を上げる巨大ミミズ。
今にも、彼女を巨大な口で飲み込んでもおかしくない。
「拙いっ!、リンがやられてしまう!」
「くそっ、俺が行く!」
水面へ飛び込み掛けた俺を、リベルタから羽交い絞めにされ阻止された。
「放してくれ、リンが!」
「馬鹿者!、お前までが奴に食われるぞっ」
巨大ミミズが大口を、更に大きく開いたのが目に飛び込んで来た!。
駄目だぁ━━!
彼女が飲み込まれる所を、目にしたくなくて顔を二人が背けた。
「駄目ですっ、絶対にさせませんっ!」
ディーネの身体から光の粒子が放射されて、俺達は眼を伏せた。
次に目蓋を開き、彼女の姿を目の中に捉えた刹那に、洞窟内の事が頭に浮かんだ。
ディーネの身体は、純白の衣装で包まれていた。
それは物理・魔法、どちらの特化衣装でもなく、リベルタの衣装に似た物。
「アルテミス……」
リベルタはディーの姿を見て、その一言を呟いた。
その直後に、ディーネはリベルタの手に触れて言った。
「この力を、貴女に……」
デイーネの身体から再び光の粒子が飛び、それはリベルタの身体を包み込む。
眩しい輝きが消えた後、リベルタは彼女の呟いた『アルテミス』の装備へと転換。
その手の中には、羽を模して作られた大きな長弓を握られていた。
「リベルタさんっ、早くアイツを!」
「ハッ、分かった!」
訳が分からないまま、リベルタは水面でリンへ襲い掛かったミミズへ狙いを定めた。羽根弓の弦が臨界まで引かれ、リベルタは指を弾く。弦から飛び出した矢は、超高速で回転を開始して激しく空気を巻き込みながら突き進む。
巨大ミミズの大口が、リンの身体に影を落とし遂に覆いかぶさった。
そう思われた瞬間、高速で渦を巻いた矢は、その大口ごと頭部を吹き飛ばし。
辺り一面には、奴の吹き飛ばされた 肉塊と体液が飛び散っていた。
「この姿をどうして私が?」
自分の装備を、呆然と見詰めるリベルタ。
「私、頑張れましたよねぇ?」
ディーネは自分がやった事で、自慢気に口にする。
三つ目の特化は、いやひょっとしたら特化能力全部かもしれない。
他人へ譲渡すらできるのだと、彼女は証明した事に成る。
有難う御座います。
駄女神デイーの為、なにとぞお力を!。
ブクマ、感想、レビュー抱けたら本当にちから倍増します。




