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旅立ち

これで一旦終了です。

よろしくお願いします。

地上には、遥か先まで続く裂け目。


自分でやった事ながら、剣を振りし切ってつけた大地の傷をマジマジと眺めると、改めて驚愕させられた。


これまで能力が上昇する事しか、その効果が実感出来なかったもの。

『進化』の本当の姿が、現れたという事なのだろうか?。


こんな力、使い所を間違えたら豪い事に成る。

一つの町なんて、簡単に破壊してしまう所を想像して身が震えてしまった。



裂け目の先端は、遥か先の森の奥まで続いているのを見て、自然を破壊した事に後悔の念を抱くと言う、なんとも奇妙な心境になった事にも、驚いた。


「うーん、自然を壊しちゃったなぁ、なんて事を……」


「おいおい、そう言う問題じゃないだろ?、あんた本当に人間かよ?片手で剣を振っただけでこんなマネ出切る奴なんて、魔族にだって、そうそう居るもんじゃないぞ!」



ディーネから治癒されて痛みが消えた魔族の女から、速攻で突っ込みを入れられた。それだけ回復しているなら話は早い、彼女と話が出来ると言う物だ。


「もう、痛みは無いようですね良かった!」


ディーネは、魔族女の様子を見て安心して笑みを浮かべた。


「ああ、あんたの治癒でスッカリ消えたよ、ありがとう」


彼女は、戦闘中に魅せた狂喜乱舞した同じ魔族とは思えないほど素直に、ディーネに対して丁寧に頭を下げて礼を言っていた。


本来の魔族って、もっとプライドが高くて女神なんか見た日には、有無も言わさず斬りかかって来る姿しか、想像していなかった。けどこれも、人間とのハーフという事が彼女の心理にも影響しているのだろうか?。



「あんたも随分と変わった女神だな、魔族を助けた女神なんて聞いた事が無い」


「えへへへ」


「ホント変わってるよ、あんたの旦那も人間離れしてるけどなっ!」


「だだ……、旦那様じゃないですよぉっ! 、わ、私は━━」


「わあぁ! 、ディーネはそんなんじゃないぞぉっ!」


サラッととんでもない事を魔族女に言われ、俺もディーネも慌てふためき否定したが、人と女神の恋愛は禁止に成っている事を、魔族は知らないのか?。



「ははは、まあいいじゃん仲は良さそうだし」


「うっ」


「…………」


更に照れている俺達をみて、笑っていた彼女は身体をほぐし始め。


「じゃあ、私そろそろ行くわっ……、まだお母さんを取り返していないからね」




彼女は、母親の霊石を持っている『スティンガー』の(マスター)の居場所を知らない。

放置すれば彼女は、母親の霊石を取り戻すまで何度もでも人を襲う……。


 そんなマネを、これ以上は彼女にさせられない!。



「ちょっと待ってくれ、お前をこのまま行かす事は出来ない!」


立去り掛けた彼女は、クルリと振り向と大鎌を手にした。


「助けて貰った恩義はあるけど、私の邪魔をするならっ……」



俺達と、一戦も持さないと言う態度を、彼女は見せた。


十年前の真相が明らかになり、彼女の目的がはっきりとした。要はそれを果たせてやれば良い、しかし今のやり方は間違っている。このままでは、彼女は自分で墓穴を掘り続ける事に成り、いずれはそこへ入ることに成るだろう。


元々は、人の犯した罪が彼女の人生を狂わせたのに、その結果が彼女の死に繋がるのは見ていられない。ここは一つ、冒険者の気概を見せるべき所だと思い、俺は彼女に提案する事にした。



「んと、俺達の仲間に成らないか?」


「おいっ!」


「うはぁ!」


リベルタとディーネは、俺の提案に驚嘆の声を上げ目を丸くする。

そして、魔族の彼女は。


「はぁあ?、あんた気は確かか?、私は魔族だぞっ! 、仲間に何か……」


「そんな事は無いと思う!」


「馬鹿な、魔族をPTにれたらギルド……」



リベルタも途中で気がついたみたいだが、自信を持って提案した根拠はメーアさんからあの話を聞いていたから、『魔族との休戦協定が進んでいる』という話を、そういう事なら魔族の女を仲間にするのは打って付けでは無いか?、ギルドは間違い無く反対しない。



「それにね、俺達はお前が捜している『霊石』の持ち主の居場所を知っている」


この言葉には、彼女も目の色を変えて喰い付いて来た。


「なあっ! それは本当かっ!」


「本当さ、だから俺達と仲間に成ってそれを取り返しに行かないか?」


彼女は俺の言葉を聞いた後、暫らく沈黙を続けたが訝しげに言葉を紡いだ。



「どうして……、魔族の私に、そんなに親切に出来るんだ…………?」



 あぁ……、また、その質問かぁ、そんな物は決っている!。



「困って居る者を、助けるのが冒険者だ……、そこに魔族も人も関係無いっ!」


「はぁ……、そう言うと思った。ノベルの好きにしたら良い、反対はせん!」


「ふふふ、魔族の女の子と仲間だ何て、天界が知ったら仰天しますねぇ」



リベルタは若干の呆れ顔だが、反対はしなかった。

ディーネの方は……、お気楽な性格のせいもあり大ハシャギだ。

これで、何も問題は無い。



「どう?、嫌と言っても無理矢理連れて行く、今度は俺が力づくでいくぞ」


「はぁ……もぅ分かった、従うよ。あんたに絡んでも勝てる見込み無いしね、私の名は『リン』」



「うん、よろしくリン。それと……、一度ギルドには来て貰う」


「それは、まだヤバクないか?、幾らなんでも魔族が街中を歩くのは」


「だからギルドに連れて行くんだよ!」


ディーネがニコニコしながら、声を上げてきた。


「えへへ、私は何と無くノベルさんのやりたい事わかっちゃいましたぁ」


「あはは、その顔は本当にバレてそうだ」




ともかく……、話は収まりをみせた。


女神と魔族、この本来は敵対関係に在る者同士が共存する。そんな奇妙な、冒険者のPTはおそらく無いだろう。街へ戻れば、大騒ぎするのは間違い無い、それでも俺はこの魔族のリンを放置は出来なかった。




案の定、街へ一歩足を踏み入れたら、蜂の巣を突いた様な騒ぎが起きた。

街中を悠然と魔族が歩くなんて事は、前代未聞の大事件とも言える。



「おい……、凄い形相で私は見られてるんだが、本当に大丈夫か?」


確かに暴動でも起きたら、事だとは思ったが俺達が魔族を捕らえて来たと、上手く勘違いをしてくれた。それは、女神であるディーネが『女神の微笑』を絶やす事無く続けていた御陰の様な気がした。




ギルド本部でも、急報を聞いていたせいで物凄い係官の出迎えを受けた。

俺は、三人を別室で待たせてメーアさんと交渉をしていた。



「ちょマジで言ってるの?、こんなの前代未聞だわぁ」


俺がメーアさんに提示した提案を、彼女は最初かなり抵抗を示した。確かに協定は進んでいるけど、調印はまだ随分先になる見込みで、自分の判断では処理できないと頭を抱え、上司の判断を仰ぎにその場を離れていった。



随分と待たされ上司からの返事を聞き、それを伝えに別室へと入った。


「はいっ、これ貴女の『冒険者証明書』よ、普通はこんな物発行しないんだけど、貴女はちょっと特例になるから、これも必要かと用意したわ」


メーアさんは、作成したばかりの証明書をリンに手渡しした。


「これで……私も冒険者に成れたのか?」


リンは不安そうな顔で、メーアさんを見詰めて尋ねる。


「ええ、誰に文句言われてもそれ見せたらダンマリよっ! 、あはははは!」



最初は、困惑していたメーアさんだが、上司に相談した処『良くやった!』っと、褒めちぎられてすっかりご機嫌な様子だ。調印前だからこそ、このタイミングで魔族が他の冒険者と手を取った事に意味が有ると、上司は大喜びだったそうだ。


「これでリンも立派な冒険者だぞ!」


「良かったなリン」


「うんうん、魔族の女の子と友達に成れて嬉しいです」


なんかディーネは少し勘違いをしている気がするが、まぁ喜んでいる事には違いないから、あえて指摘して虐めるのはヤメテオク。


「みんな……、有難う!なんと言って礼をすればいいか、分からない」


「さあ、取り合えず! 、初の四人でクエストの受注はいかがかしらぁ?」


「ああ、それなんだけどちよっと、メーアさんに相談が」


「ほえ?」






翌朝、辺境の街から四人の冒険者がクエストを請け旅を始めた。


クエストの内容は。


 『不当に殺された魔族の、霊石を取り返せ!』。


俺が昨日、メーアさんに頼み依頼したクエストを、ディーネが請けて承認した。

このクエストを完遂すべく、俺達は遠く離れた首都アーベイへと一路向かう。


盗んだ犯人は、ギルド『スティンガーの(マスター)、バカス』。


勿論、途中の旅路でも苦難は起きるは当然だろう。

しかしもそれらを跳ね除け、俺達はリンの母親である『霊石』を取り戻す。



「私、地上に来て旅行なんて初めてで、凄くうれしいですっ!」


「おいおい、ディー……旅行じゃないんだけどなぁ!」


「えへへへ」



俺に憑いた女神様は、やはり何か勘違いをしていた。


女神と魔族を連れて冒険者として。


俺の初の旅が始まった…………。






ありがとうございました。


これで一旦終了とします。



別物語『堕ちた勇者と魔王の遺言、倒した俺が娘を守る?』こちらも読んで見てください

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