魔族の家
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冒険者の囲う家屋の扉が開き、一人の女性が姿を見せた。
身体をビッタリと覆う黒のスーツからは、薄青の四肢が伸び、黒のブーツは細い脹脛まで伸び上がっている。更に、太腿まで包む黒のタイツがブーツに納まっている。両腕にも黒のグローブがはめられ、その口は、にの腕まで包み込んでいた。
日の光を浴びて輝く金色の長い髪は、比較的細いツインテールを風に揺らしている。十代後半と思える顔は、眼は大きく、唇は薄く小さい。
もし、彼女が人間の女性だったなら……。
今、俺の視界の先で家屋を囲っている冒険者達は、一応にして顔を染めてだらしない表情を、雁首並べてだらしなく立ち尽くしていただろうなと感じた。
かくゆう俺自身が、隣に美女二人を連れていなかったら、そうなってた事は疑いようがない。それくらい彼女は魅力的な容姿をしている。普通に考えたら、とても大鎌を自在に振り回して暴れまわる風には、とても見えない。
だが、彼女の肌は青く人間の物をしてはいない。
森の木陰に隠れ様子を窺っている俺達の前で、彼女達は会話を始めた。
それは、友好を深めに来たとは到底思えないのは、誰がみても同じだ。
魔族の女は、その美貌から薄ら笑いを浮かべ、自分を襲撃に来た冒険者達を一望した後、馬鹿にした口調で挑発した。
「しかしまぁ、汚っない顔が揃ってるわねぇ、見覚えのある顔が並んでるって事は、あんたらあの日の連中だね! 、こっちから捜す手間が省けて助かったわっ 、頭の居場所を吐いて貰うわよっ!」
「わははは、おい聞いたか俺達から頭の居場所聞きたいらしいぞ?」
「ばっかだねぇ! 、もう居ない事しらねぇのな」
「商人を襲い、霊石を売った相手を探している魔族が居るって報告を聞いて、もしやと思って来てみりゃあ、トーレスに娘が居たとは迂闊にも気が付けなかったぜ」
「おい見ろよっ、あの艶やかな身体をっ! 十年前に殺したトーレスの女とそっくりじゃないか!」
「本当だぁ、殺す前に愉しめば良かったなぁ、惜しい事をしたぁ!」
冒険者達の前で、黙って聞くに任せて笑っていた魔族女の顔が豹変したのが、遠目でもはっきりと分かった。彼女の右手に、大鎌が突然握られたと思えば即座に黒い翼も拡がった。
「貴様らぁ! 全員殺すっ!」
怒りを堪えきれずに、飛び出した彼女は大鎌を振り回し、囲った者達に襲い掛かった。
その形相は、先程までの可愛い子悪魔から、まさに悪魔そのものへと変貌。
周囲の男を、次々と斬り伏せていく。
「きゃははははっ! 死ねっ、シネェ!」
かん高く発する、狂喜に満ち溢れて笑い飛ばす声……。
だが、その中でも彼女は治癒士には手を出しては居なかった。
「おいっ、そろそろヤバイぞっ、私達も出ないと全滅するぞ?」
リベルタは、今にも戦場へ躍り出そうな構えをみせて、俺にも加勢に入る様に催促してきた。
しかし俺は、彼女の腕を掴んで引き止めた。
「何をするっ、何故止める?」
「ごめん……、もう少しだけ確認したいんだ」
リベルタは、俺が目の前で繰り広げられている戦闘を凝視する姿を見て、何かを察してくれた様に再び身を沈めて、俺が何を確認しようとしているのか?、それを見定め様と状況を観察し始めた。
戦闘は魔族の圧倒的優勢、冒険者達は攻撃を受けるのが精一杯に見える。
狂喜乱舞で、暴れ周り切り倒していくが治癒士に刃が向くと、途端に向きを変える。
やっぱり……、彼女は誰も殺す気は無いのか。
俺がそれを確信した時に、大地に転がっている剣で足を取られて転倒した。
「うっ、しまっ
「おいっ! いまだぁ! 取り押えろぉ!」
リーダー格の男が、叫ぶと魔導士が一斉に捕縛の魔法を飛ばす、二つまでは大地を転がり回避した彼女は、遂に三つ目の捕縛に捕らえられてしまった。
「うっ、チクショー! くそぉ」
「あははは、やっと大人しくさせたぞっ! おらぁあ!」
「あぐぅっ!」
捕縛の魔法で縛られて、身動き取れない彼女の腹を蹴り上げた。
無防備で腹部を蹴られた為、もろにダメージを受けた彼女は身悶えていた。
「げほっ、げほっ……、殺してやるぅ!」
「ほぉ……、まだ反抗的に目をギラ付かせてやがる!」
リーダー格の男は、剣を振りかざす。
「先に愉しもうかと思ったが、止めだぁ!」
魔族女を跨ぎ、心臓の上に剣の狙いを定めた彼は、両腕で剣を突き下ろした。
ごめんお母さん……私も……。
ギィ━━━━ン!。
心臓に突き刺さるべく、力任せに突き下ろされた剣はリベルタの放った矢で、両手から弾かれて大地へ突き刺さった。
大地に寝た状態の彼女は、首だけを俺達に向けて呟く。
「あんたらは、確かあの時の…………」
両手から剣を弾かれて、痺れる腕を震わせながら男は怒鳴ってきた。
「貴様らぁ、何で邪魔をしやがったぁ!」
リベルタは、その罵声に臆する事無く逆に男を、激しく非難した。
「黙れゲスがっ! 、恥をしるがいい!」
「お前達……確か、噂の三人組みかぁ、魔族の味方するってのかよぉ?」
俺達は、魔族女と連中の間に割って入った。
ディーネが、彼女に解呪を施し抱き起こした。
「魔族さん……、大丈夫かしら?」
「あんた……、女神だろ?何故私を助ける?」
その質問にディーネは、『女神の微笑』を見せて答えた。
「だって、ノベルさんの頼みですからぁ」
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