戦わない理由
若干…、戸惑いながらの投稿です、よろしくお願いします
本部で聞いたトーレスの家へ━━。
三人で向う途中だが、やはりディーネは機嫌良く鼻唄交じりで先を歩く。
今日の道程は、墓地の時の様な危険な場所は殆ど無いと聞き、浮かれていた。
街道を行き交う人も、それなりに多い。
まぁ、危険はなそうだしいいか……。
警戒心が薄れた為に、歩きながら考えが浮き上がってくる。
トーレスの家に到着した時に、彼女が居たらどうするか?。
恐らくは、俺達を見た瞬間に攻撃態勢を取って襲ってくるだろう。
何しろ俺達は、彼女から見たら只の攻撃対象の敵に他ならない。
あの農場で俺が襲われた後、魔族の女から襲われたと言う報告が、潰えたらしい。ひょっとしたらだけど、襲撃して返り討ちに在ったのはあの時が初めて?、初の逃亡を経験したのかもしれない。そして、その襲撃対象を俺に絞り、今も何処からかこちらの様子を窺いつつ、攻撃のチャンスを待っているとも想像出来た。
彼女は、行き成り空間を裂いて現れる。
今この警戒心の薄れてる時に、襲って来られたら回避は難しいだろう。
のほほんと、機嫌良く歌っているディーにでも襲い掛かられたら、防げない!。
その発想が出た時点で、俺の身体に緊張が走るのを覚えた。
この時に、今迄ずっと頭から除外されていた事が、急に疑問として浮かび上がり、彼女に聞く必要性を強く感じた。
ディーネはどうして、魔族が現れる方向が分かったのか?。
誰よりも早く、魔族の攻撃方向を特定して叫んでいた。もしあれがなかったら、魔族の攻撃に対して一歩遅れる事になって、大怪我をしていた可能性は高い。
先頭を歩くディーネを呼んで、尋ねてみた。
「ディー?、ちょっと聞きたい事が在るんだけどな」
歩きながら鼻唄を歌っていた彼女は、長い黒髪を尻尾の様に振りながらくるっと振り向いた。そして、後ろ向きに歩きながら答えてくる。
「はあい、なんですか?」
おいおい、石ころに足を取られて転げたりしたら……。
一瞬、彼女のあられも無い姿を想像して戸惑ってしまう。
「ディーは何故、あの魔族の女が現れる場所が分かってたんだ?」
この話を切り出すと、それまで無表情で足を進ませていたリベルタも、パッと顔色を輝かせて興味を示して会話に入って来た。あの時に直ぐ隣で同じ場所に居た筈の彼女には、魔族の現れる場所は特定出来ていなかった。
そのリベルタが、興味を示さない筈は無い。
「それは、私も知りたいぞ。ディーには何故予測できた?」
「えっとぉ、空間が避ける前に揺らめくのを、私達は察知して見えるんです!」
「おおぉ! 、そりゃ凄いじゃないかディー!」
「えへへへ」
前回、魔物戦の最中にリベルタから、駄目ダシにも似た言葉を浴びせられた事もあり、その同じ彼女から誉められて、ディーは凄く照れていた。
「いやぁ、それは凄いよ。凄く助かるよ、うん!」
「良かったぁ、ノベルさんの役に立てて嬉しいです!」
良い事を聞いた!。
魔族の女と戦闘に成った時に、ディーのその能力はかなり役に立つ、っと言うよりも、姿を見せない魔族女の優位性を、かなり減じる事に成っているじゃないか! 、攻撃に対して反応が遅れにくい。上手くいけば、前回の様に引きずり出す事は、容易と成る。
そう確信できてしまうと、自然に顔の表情も緩んでしまったがその喜びも束の間、綻んだ俺の顔がすぅっと覚めて、元の不安めいた物へと戻っていった。
なぜなら、今の俺は魔族の女と戦いを避ける方へ、考えが向いてるせいだ。
何故か、彼女と戦いたくないと言う意識が強まっている。
優位性が増した今、その思いは更に強くなった気すらする。
街道から、森の奥へと入る道へと入る場所で、リベルタは俺に意志を確認した。
「ノベル、家に辿り着いたときに魔族の女が居たら。どうするつもりだ?」
「勿論、行き成り攻撃を仕掛けられても、反撃はしないつもりだけど?」
それが何を意味する所かは、彼女も察した様だ。
「あの魔族女が、素直に話に応じるとは思えんがな?」
多分、リベルタの予想通りに成る事は、十中八九間違いない。顔を見た途端に、斬りかかって来るに決っているが、それでも防戦しながら彼女を何とか説得したい。
そう思っている処へ、ディーネが俺の顔を覗き込む様に尋ねて来た。
「ノベルさん、何故……、魔族と戦いたくないのですか?」
俺達人間より、強い敵対関係の女神には魔族と戦いたくないと言う、その意志その物が、信じられないのかも知れない。
ましてや、自分の憑いた冒険者故に、余計にそう感じているのだろうか?。その彼女に、納得させ得る返事ができるのか分からなかった。っと言うか、俺自身が各個たる意志の元に、そうすると断言出来るものがない。
だから、今の心境を正直に返す事に決めた。
「これだっ! 、っと言える物は無いんだ。只、彼女とは戦いたくない、戦っちゃ駄目な気がする。今はそうとしか言いようが無い、まぁ……『男の感!』って奴だなっ」
それを聞いたディーネは、大受けして笑い始めた。
リベルタに至っては、両手を広げゆっくり首を振り溜息をついた。
「あははははは、『男の感』ですかっ!」
「全く……、よくもまあ、そんなアホな事を理由にしたもんだなっ」
しかしディーネは、笑いながら最後に。
「自分を襲った魔族にまで……、ノベルさんはやはり、優し過ぎですっ!」
その言葉は、何時もの怒った調子でも拗ねた態度でもなかった。
優しい声で、例の『女神の微笑』を向けられ、救われた気持ちに成れた。
肝心のトーレス家の小屋に辿り着いた時。
俺達が、予想していた事態とは違い、全く想像していなかった状況に成っていた。
数十名の冒険者達の群れが、その小屋の周囲を取り囲む形で、集結していた。
「あれぇ?、あの人達は……誰なんでしょう?」
ディーネは、まだ遠い位置から冒険者の集団を見詰めて、訪ねて来るが。
そんな事は……、こっちが聞きたいんだがなぁ……。
っと、声には出さずに、俺は呟いていた━━。
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