疑惑の報告
悩みながらの投稿です
「この中から調べてくれる?」
ギルド本部に届いた事件や討伐の報告に各種情報、魔族に関する事なら何でもと、メーアさんに収集を頼んでいたのだ。暫らくしたら伝言が届き、何か分かったのか?そう思って再度本部に足を運べば、膨大な量の報告書の山を付き付けられる。
「ちょっと、全部を調べる時間か無くてさぁ、残りは自分で……よろしくう!」
「結構な量があるなぁ……」
カウンターに置かれた報告書の山。
ざっと見ても、千枚近くはありその中から怪しいのを捜すと成ると、大変な作業と成るのは必至だ。こちらが言い出した事で今更やめるのは、忙しい中で報告書を探してくれた彼女に申し訳無い。持ち出しすのは禁止されたので、前回借りた部屋を借りて調べる事にする。
内容を適当に見てしまうと、肝心な事を見落とす恐れが在るなと、一枚ずつ丁寧に書かれた文書に目を通し、内容を吟味する事を始めた。余りに集中してしまい、後ろにディーネ達二人が来て居る事に、全く気が付かなかった。
「ノベルさん、私達も手伝いますよぉ」
「お?、二人とも来てくれたのかぁ、頼むよ。ちょっと多すぎて一人じゃきつかったんだぁ」
机の上に置かれた報告書の山に眼を移した二人は、溜息混じりに言葉を発した。
「確かに、これは多いな、何年分の書類だ?」
メーアさんの話では、過去十年分にギルドへ報告が入った物を全部かき集めて来たらしい。呆れた様に、書類の山を指で捲るリベルタだが、両手で三分の一程を抱えて隣の席へと座り、目を通し始めた。
「大丈夫ですっ! 、三人でやればすぐですよお!」
「そうだな、悪いけど頼むっ」
「任せてくださいっ、書類見るの好きなんです!」
一体何の書類を見てきて、彼女は書類を見るのを好きのなったのか?。
全く……、書類好きな女神なんて何処に居るんだよ?。
そんな事を思ったら遂、可笑しくて噴出した。
「ぶっ!」
ディーも書類の山を一部をカバッと掴んで隣の席に付くと、髪の毛が邪魔に成らない様に、リボンを取り出して後ろへと束ね、報告書に目を通し始める。
長時間読書に徹する事で、三人共目や肩に疲れを覚え始め、しきりに肩や首を回し目を抑えして必至で、手掛かりとなりそうな文章を探し続けた。
必ず何かある筈なんだ…………!。
そう信じて、山ほど在った報告書の山を崩していく。
その残りの枚数が数枚と成った時、ディーネが首を傾げた。
「あれ?この報告書だけ……、ありません」
両手で目の前へかざして、マジマジと見ているディーから問題の報告書を受け取り、俺もそれに目を通してみる。
『ギルドメンバーの一人が、魔族女性を囲い庇った為に、両名とも討伐』
「魔族を囲っていたから討伐したとだけ、書かれてるな」
他の報告書を見てみると、どれも具体的な被害や危険性を謳っている物ばかり、しかしこの文章はメンバーが囲っていたから、庇ったメンバーと一緒に討伐したと書いてある。
「魔族を庇ったから討伐って、少し乱暴過ぎませんかねぇ?」
「ふむ、ちょっと胡散臭い気がするな!」
確かに、魔族は凶悪な者が圧倒的に多い、それは報告書の数がそれを証明しているが、全ての魔族が暴力的な訳でもなく、少ないながら友好を築いている例も在る。それは報告書の中にも、間違い無く数例が挙げられていた。
「メーアさんに聞いてみるか……」
日付は十年前で、彼女が当時いる筈は無かったが、何か分かるかもしれない。
「ン━━! 、十年前の報告書じゃ、私も事情は分からないわよぉ~」
予想通りに彼女は、報告書の内容については分からなかった。
処が……、偶々彼女の後ろを上司の人が通りかかった時に、その報告書に目をやり口を挟んできた。
「ほお?、十年前の報告書か?、メーアなんでトーレスが庇った事件を?。そんなの今更調べてどうするんだ?」
「え!」
「あぁあ!」
「課長っ! 、これしってるんですかぁ?」
メーアさんが、課長の間近に顔を付き付けて迫った為に、かなり慌てて仰け反っていた。
「うわぁ、そんなに詰め寄られたら、怖いぞっ!。その話なら良く覚えてるが……」
「課長さあんっ、教えてくださいっ!」
俺が声を出す前に、今度はディーネが上司の顔に詰め寄って言った。
目を見開き、彼を睨み付ける女性二人に。
「あ、ああ。構わんけど、皆揃い踏みで睨まれては、話せないじゃないかぁ!」
「あぁ、ごめんなさいっ! 、遂っ夢中になっちゃって!」
ディーネは、長い髪が床に付きそうな位に頭を下げた。
十年前の事件。
私設ギルドの長からの報告、メンバーの一人が女魔族と秘密裏に交流していた。
トーレスの家へ行き、事の真相を探ろうとしたら、女魔族を連れて逃亡を図る。
彼らを捕まえ様としたが、武器で激しく攻撃して抵抗する為に。
已む無く二人を、討伐するしかなかった。
「これが当時、彼から聞かされた聴取の内容だが、他に聞きたい事は?」
「このギルド名と長って?、今もこの街に?」
実際に会って話を聞いてみたくなり、居場所を聞いたみた。
「確か『スティンガー』でマスターは『バカス』だったかな?。彼らはこの後に、拠点を移した筈だが……」
「課長……彼らは、何処へ移ったんです?」
「んー、首都のハーベイに移った筈だぞ。ちょっと忙しいからこれで良いかな?」
課長に、礼を述べた後に全員が顔を見合わせた。
今の話をどう感じたかを。
「街を離れたと言うより、私には逃げたと感じたが?」
事が起きる前に本当企みを未然に防いだのなら、ギルドは表彰されてもおかしくは無い。それを街を遠く離れたの考えると、リベルタの言ったとおり真相発覚を恐れて離れた?。
「話を聞こうにも、ハーベイとは遠すぎるな!」
「ハーベイに行くのに何日で着くんですかぁ?」
この町から、どんなに馬を飛ばしても半年は掛かる距離だ。
ちょっと行って事情を聞くって訳にはいかない。
「うわっ、遠すぎますねぇ、はぁ……」
溜息をついて肩を落としているディーネを見詰め、課長の話を全て、魔族が襲うに都合良く解釈を変えてみた。
「あの魔族の女って、かなり若かったと思うけど?」
「ああ、確かにそうだ。人間と比較して良いのか微妙だが、同じと考えるとノベルと変わらないだろ?」
「もし……、トーレスって人と魔族の女性が、悪巧みじゃなく普通に暮らしていたとしたら?」
「あああっ! 、ひよっとしたら子供が居たんじゃないでしょうかぁ?」
魔族と人間が、種族を超えて愛し合って子供が居た?。
その子供が、今冒険者を襲っている魔族の女?。
可能性が無い訳じゃなそうだ……。
「それにあの魔族の女、何処に潜んでいるんだ?」
言われて見れば、四六時中ずっと姿を消し続けている訳でも無いだろ?、何処かに棲み処があるとしたら。
「メーアさぁん!」
「何かな?ディーちゃん」
「そのトーレスって人の家はまだ在るんですかぁ?」
「お、ちょっと待ってぇ、ちょいと調べてみるわ」
ゴソゴソと、棚の記録を出し入れしていると。
「あったぁ! 、これよ……、うん、まだそのまま在るみたいだね」
カウンターの上に地図を開き、トーレスが住んでいた場所を指し示した。
四人は、顔を地図の上に覆いかぶさり、一点を見詰めていた。
「行って見るの?」
メーアさんから問われたが、家が在ると分かった時点で、決っていた。
「うん! 、当然行ってみる」
十年前に何が起きたか、その真相を知る彼女が住んでいる可能性は高い。彼女が思惑通りにそこに居れば話を聞けるかもしれない。その会話の内容によっては、彼女と戦う必要は無くなる可能性も在り得る訳で、問題の家へ行く価値は十分に在った。
有難うございました




