襲い来る者
続編です、よろしくおねがいします
ガギィ━!
俺の胴へ、斬り払われた大鎌の刃は。
鞘から抜き掛けの状態の刃、その剣の腹を右腕で支え辛うじて受け切った。
右側から襲われたのは、運が良かった。
もしも、左側から鎌が迫っていたら一撃は防げなかったかも。
斬り裂くのに失敗した鎌は、青い腕に引かれ空間の亀裂へと吸い込まれて行く。
追走して払った俺の剣は、手応えを感じる事無がない、ヒュンっと虚しく空を斬る音だけを生み出した。
「ノベルさあんっ! ひだりぃ!」
ディーネが叫んだあと又も……、空間から行き成り飛び出した青い腕と大鎌は、俺の左腕を霞めて血を撒き散らしすと、亀裂へと飲み込まれていった。
「きゃあ! ノベルさん腕がっ、今すぐ行きますっ!」
「待てっディー、今行くとノベルの足手纏いに成るっ、行くなっ」
「でも……、腕に怪我を、治療しないとぉ!」
「あんなの掠り傷だ、大した事は無いっ、それより下手に近づいてディーまで的にされると、始末が悪い。ここはノベルに任せろ、私も援護するっ!」
「はい……分かり……ました」
二度目の攻撃の後、直ぐには攻撃が襲ってこなかった。
「くそっ……、どこだぁ?」
斬られた痛みに耐え剣を両手で構え、次に空間が裂ける場所を捜す。
流れた血液が腕を伝い、剣の柄へと流れ生暖かいベタ付が指を絡めた。
リベルタも弓を引き、現れたら速射する体勢で狙いを探る。
視界に入るのは、広がる農場の大地と、風に揺れる緑色の草原しか見えない。
右か、左かぁ?、……、見当がつかんっ!
どっちの方向か予想が付かず、我ながらイラつきを覚えている。
しかし、冷静に考えれば……こちらの見える範囲から、敵が馬鹿正直に襲う筈は無い。次に鎌が現れるのは、死角となる場所から不意を衝いて現れ、俺を襲うのが常套手段と言う物だろう。
つまり、左右後方と真後ろの三方向の何れかの方向から、青い腕が飛び出して大鎌を振るい、俺を襲ってくるのは明らかだけど。
「ノベルさんっ! 、右後ろぉー!」
ディーネの叫び声がする。
死角から再び、大鎌が青い腕と現れ一度空を回転した後、俺へ振り抜かれた。
だが、今度はリベルタの速射した矢が青い腕を貫き、鎌の動きは勢いを無くした。
急激に勢いを失った鎌を、剣で捉えた。
弾くのではなく、刃を合わせて引く様に振りぬく、鎌を持つ青い腕の主ごと、空間の裂け目から引き摺り出す事に成功した。
「キャァ━━!」
空間の裂け目から引きずり出して、大地へと叩き付けてやった。
引き摺りだしたその姿を、ハッきりと両目で捉えた。
大地に倒れた少女は、青い肌に紅い眼を光らせ、背中には黒い翼が見える。
露出度の高い装備からは、青い四肢が伸びて妖艶な雰囲気を漂わせている。
「お、女っ?、青い肌の女だ……」
「魔族かっ!」
「魔族の女の子ですね……」
矢で打ち抜かれた右手を左手で抑え、俺を睨み付けてくる青い肌の女を、二人は同時に『魔族の女』と呼んだ。生まれて初めて見た魔族の女、俺を襲って来た相手に直ぐに剣を振るう事が出来ずに、棒立ちに成ってしまった。
「チクショ━━!」
その魔族の女は一言吐き捨てると、空間に裂け目を作り大鎌を拾いあげると、地を蹴り頭から亀裂へ飛び込んで姿を眩ませてしまった。
又、空間を裂いて襲って来るかと身構えていたが、何時までも現れず。
どうやら、腕の怪我が元で戦闘が不利と見たのか、本当に逃走していった様だ。
「あれが、魔族なのか……、肌が青なんだな」
戦闘終了して、剣を納めた後二人の元へ戻って呟いた。
顔を合わせると、二人ともが訝しげに俺を睨んでいる。
「ノベル、何故にすぐ斬らなかった?、斬る時間は余裕で在った筈だが?」
「…………」
ディーネ方は、更に違う事を問い詰めてきた。
「ノベルさん、今魔族の女に見惚れてましたよね?」
どきっ!、と背筋まで響く。
ディーネの顔は笑っているが、眉は引き攣っているのが見える。
正直、初めて見る『魔族の女』に見惚れてしまった。
薄い青色の肌をした綺麗な魔族の女に、一瞬心時めかせたとは、口が裂けても言いたくない。
「そんな事はないぞっ、初めて見た魔族に戸惑ってた、だけだっ」
「ふーんそうなんですね!」
女神に疑いの眼で見詰められると、本当の事を白状してしまいそうに成る。
ディーネに見詰められ脂汗を滲ませる俺を、リベルタが救いの手を差し伸べる。
「冒険者襲撃犯と遭遇して、犯人を特定したとメーアに報告しにいくぞ」
「あ……本当だ、メーアさんに知らせないとぉ!」
ふぅ……、話が逸れてよかった……
女神だけに相反する勢力の者に、一瞬でも俺が見惚れたのを許せないのだろうか?、リベルタを追うディーネは、一度後ろを振り返り、膨れ面をしてそっぽを向いて拗ねて見せた。
空間から魔族の女が現れた。
腕を突き抜けた矢を抜くと、三人の後姿を苦々しく見詰めた。
「あの人間……何者?、魔族の私を軽々と引き抜いてしまった! 。全然強そうな感じしなかったのに、抵抗すら出来ずに、引きずり出されてしまうなんて、高レベルの冒険者だとでも?」
腕の傷が痛み顔を顰めた後。
傷を負った腕を抑え、再び空間に亀裂を生じさせ姿を消した。
「ええっ! 、交戦して追いはらったぁ?、はあ……あんたらやっぱ凄いわぁ」
ギルト本部へ戻り、メーアさんに報告をすると、大口開けて妙な顔して驚かれた。
「メーア、襲撃犯は魔族の女だ」
「魔族の女?……、そりゃ人間襲っても不思議は無いけどぉ、おかしいなぁ」
魔族なら、人を襲うのは不思議では無いと言いつつ、首を傾げるメーアさん。
すかさず、リベルタがその真意を問い詰めていた。
「何が妙なんだ、メーア、魔族なら普通に在り得る事じゃないのか?」
その質問を受けた後、メーアさんはキョロキョロと辺りを見渡した後に、俺達を近寄らせて小さな声で、内緒話を聞かせてくれた。
「これ、まだ公開されて無い事なんだけど、人間と魔族間で休戦協定が結ばれつつあるのよ、そんな時に露骨に魔族の者が、人間を無差別に襲ってくるかしら?」
魔族の中で、意志の統一が成されて居ない?。
十分に考えられるが、それ以上に何か裏が在りそうな予感も捨て難い。
ありがとうございましたー




