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リッチー討伐戦

よろしくおねがいします

「リベルタっ、ディーから離れないで!」


「了解した!」


『強化』され、リッチーへと距離を詰めに地を駆る。


「ノベル、迂闊に接近し過ぎるなっ!」


リベルタから指摘が飛ぶが、接近しないと剣は届かない。


捕まれば、生気を吸われて死に至るのは承知しつつ、剣の間合いへ。入った瞬間に、リッチーに届くタイミングで構え振り払うが、目の前から姿を消した。否、目で追えなかった速度で避けられ、背中へと衝かれていた。


俺一人なら、これで捕まり生気を吸われ最悪やられているが、リベルタは咄嗟に巻き添えにしない射線へと素早く移動して、矢を放ってくれた。



捕まらない様に戦うとは、駆け出しの冒険者には至難の技と言えた。

なにせ、剣の届く範囲に入らないと攻撃すら出来ないのだ。


その上、リッチーの動きは俺の動体視力では、確実に追う事すら出来ない。

一人なら、間違い無く吸われて終了していた。

リベルタを仲間にした事は、ここでも大正解を見せている。


近接の俺が圧倒的不利なのは、吸われる事とその超絶な回避速度だけではない。大地に転がっている無数の亡骸が、俺の動きを必要以上に狭め、妨害する要害と化していた。足を取られた事で転倒した結果が、リッチーの腕を回避する事に成ったくらいだ。



「ディー、リッチーの弱点は聖属性だ、女神なら何か無いのか?」


不利な状況に、リベルタの物言いもきつくなった。


「ご、御免なさいっ! 、私…攻撃系の術を使え無いんです。御免なさい!」


リッチーへ矢を放ちながら、一瞬、考えを巡らせたリベルタは、次の質問をした。


「攻撃術でなくても良い、属性付与で『聖属性』を付けてくれっ!」


「うぅっ、それも……、有りません。御免なさい……」


「ええっ、それも無しか! 、駄め……いや済まない」


「すみません……」



リッチーと、じり貧の攻防をしていても二人の会話は届いていた。

良い雰囲気とは言えない、俺がリッチーを捉えられず殆ど回避でやっとの状況が、後方から矢を放ち、奴の動きを牽制し支援しているリベルタを、イラ付かせているのか?。



如何ともし難いこの状況を、変える手立てを必死で捜すが、駆け出し冒険者の悲しい処で、良い方法を導き出せない。多分、このまま推移して行くと、リッチーに捕まるのは時間の問題と成って来た。



矢に雲に振るった剣閃が、リッチーを僅かに切り裂いた。


「やったかっ!」


期待のこもったリベルタの声が響いた。


しかし、相手は不死属性の魔物リッチー、普通に切払った程度の傷は瞬く間に再生して行った。確かに、今の傷が『聖属性』を付与された物なら、それは再生されずに相手に持続ダメージを与えた事だろう。


「くっ、駄目かっ」


リベルタの苦々しく吐かれた言葉が、聞こえる。



霞めた事で一瞬止まり、リッチーが怒りに任せた腕を無造作に伸ばし、リベルタの矢がそれを貫いた。リベルタへ視線を変えたリッチーへ、剣を振り上げ矛先をこちらに向けさせる。




後衛へ、リッチーを向わせる訳には行かない、その想いが届いたのか顔を裂いた。顔を斬られたリッチーは、その怒りを顕にし形相が変貌しただけでなく、攻撃間隔も速度も圧倒的に上昇してしまった。


槍の様に繰り出されるリッチーの凶爪、剣で防御に徹するが俺の身体を切り裂いていく。少しでも気を緩めてしまえば、あの白い腕が伸びて捕まれ、青紫の不気味な爪が皮膚へと突き立てられる。




捕まれる事だけは、辛うじて避ける事に成功して、難を逃れた。

しかし、奴の爪による裂傷から毒が入り、それは次第に俺を苦しめて行く。


「くそ、やはり……聖属性の攻撃手段も、付与も無いのは不利過ぎる……」



リベルタが思わず出した言葉は、的を得た物なのは誰でも分かる事だけど、それは、ディーネにしてみたら『駄女神』と、間接的に責められているのに等しい。女神の癖に『聖属性』の攻撃も、支援も出来ないのか?、彼女の耳にはそう聞こえているのが、俺には伝わり心が張り裂けそうになる。



元々が、長期戦に耐え得るだけの体力は、まだ持ち合わせていない。

そこへ持ってきて、足場の悪い環境に無駄に体力を削られ来てた。


更に、リッチーから斬られた爪痕の痛みと、そこから入った毒によって、俺の体力も気力も時間経過と供に、大きく削ぎ落とされて来た。



そして遂に、足場に気を取られて視線をずらした時に、リッチーに捕まった。

絞められる首に、青紫の爪も皮を剥ぎ肉を食い破ってくる。



「ぐぅう……」


「いけない! 、捕まれたっ!」


リベルタの矢がリッチーへ迫るが、奴はそれを片手で振り払う。



生気を吸われ始め、身体から力が抜け落ちて行く。

剣を握る手も、次第に指が開かれて行き最後の指が伸びた。


ガランっと音を立て、地面へ剣も落ちてしまった。



「不味いぞっ!ノベルがやられるっ!」



リベルタが叫んだ瞬間、それは起きた…………。


ディーネの体が、輝き始め大地から飛び上がり、リッチーへと迫った。



 「ノベルさんから離れなさいっ! 化物っ!」



そう言い放った後、ディーネの前面に輝く魔法陣が形勢され、光矢を放った。

リッチーは、俺の首から手を離しその場から離脱した。

大地へと突き立つと想われた光矢は、軌道を変えてリッチーを追尾していく。


地下空洞を逃げ惑うリッチー、それを追い詰めていく光の軌跡。


「馬鹿な、ディーはなんで……、あんな姿に変わってるんだ?」



リッチーが俺から離れた事で、リベルタが掛け付けて来た。


空洞内を飛び回り、光矢から逃げ続けていたリッチーを、遂に光の軌跡が貫き破る


   キャ━━━━ァッ!



耳を突き破りそうな、かん高い女の悲鳴が洞窟内に響き、俺は眼を開いた。


開かれた俺の目に映った者は、空中に漂っているディーネの白い姿。


その姿は、絵画に描かれた女神の衣装を纏っている、神々しさに満ちた姿。


眼を開いて、その姿を見ながら意識が薄れて行く。


戦女神(ヴァルキリー)じゃない……のか」



その言葉を最後に、俺は又もディーネの美しい姿を見ながら、意識を失った。




ありがとうございました

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