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「お前、男相手にもズバズバとひかないからさ、気の強ええ女、ってずっと思ってたんだ。それも失礼な話だけどさ」
「気にしないで。そう言われることには慣れてるし、実際自分でも気は強い方だと思ってるもの」
私もブランコを揺らしながら言った。強がりでも何でもなく、こういう性格だしね。
「でも、実際話してみたお前って、ちょっと違った。外から見てると、乃木が林を守っているのかと思ってたけど……逆なんだな。お前が、林に守られていた」
「……うん」
そこに気づくほど、野宮君と一緒にいたかな、私達。
そう。気が強い私も嘘ではないけれど、本当は早紀の方がずっと強くてしっかりしてる。何かあった時に慰めてもらうのは、実はいつも私の方だ。
「乃木ってさ、そんな外から見える顔よりずっと……女の子で、かわいかった」
「は?」
思わず振り向く。揺らしていたブランコを止めて、野宮君が私をじっと見つめてた。
「かわいいよな、乃木って」
「や……そんなこと……」
「そんなお前を、見ていたいんだ」
野宮君はブランコから立ち上がると、私の正面に立って両手でブランコの鎖を握った。
「ずっと、お前の一番そばで、お前を見ていたい。だめか?」
腰をかがめて、上から私の顔をのぞきこんだ。その顔を見上げた私は、言葉につまる。
「乃木が好きなんだ」
ど、どうしよう。
心臓がどきどきする。
何も言えない私を見て、野宮君は、ふ、と笑った。
「林には、すぐ言えたのにな。お前に好きって言うのに、こんなに時間がかかると思わなかった」
「そ……なの?」
「ああ。林には好きになってほしかった。けど、お前には嫌われたくなかった。だから、言えなかったんだ。いつの間にか乃木のこと好きになっていて……ほいほいと誰にでも惚れる男だと、お前にだけは思われたくなかった」
「そんなこと思ってないよ。野宮君は……素敵だと、思うよ」
言ってしまってから、自分で言ったそのセリフの恥ずかしさにうつむいた。その視線を追ってきた野宮君は、その場へとしゃがみこんで私の顔を見上げる。鎖から離れずに降りてきたその両手が、私の手を包んだ。大きな、手。
「ありがと。だから、本当はもうちょっと時間をかけるつもりだったけど……もう、遅かったかな」
「え?」
「お前さ」
1年以上、野宮君とはクラスメイトをやってきた。でも、今の野宮君は、初めて見る優しい目をしている。こんな顔も、するんだ。
「この一ヶ月くらいで、急にきれいになった」
一ヶ月。それは、バイトを始めてから。
「それは、バイトで立ち居振る舞いをすごく厳しくされたから……」
「俺も、話を聞いて最初はそう思ってた。でも、多分、違う」
まっすぐ見上げてくる、真摯な瞳。
「お前、誰か好きなやつ、できただろう?」
は、と、思わず息を飲んでしまった。それを、野宮君は視線をそらさずに見つめてくる。
「もしかしてとは思うけど、それ、俺か?」
期待されていることはわかっている。でも、嘘はつけない。
私は、ゆるゆると首を振った。
野宮君は、それを見て淋しそうに笑った。
「うん。だろうとは思った」
ざ、と立ち上がって、手を離す。




