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「奏子は?」

「私が、なに?」

「奏子も、悠希さんのこと好きだったりしない?」

「ええ?! なんで? 全然そんなことないよ?」

「本当に?」

 じ、と見つめてくる早紀を見つめ返す。


「本当に。なんで、そんなこと思ったの?」

「奏子、中学のとき、小松君のこと好きだったでしょ」

 う。

 とっさに、言葉が出なかった。

「早紀……知って……」

「いつも一緒にいたんだもの。気付くわよ」

 早紀は、少しだけ目を伏せた。

「でも、もっと早くに気づいていれば、奏子を泣かせるようなこと、なかったかもしれない」

「!」

 気づいてたんだ。多分、早紀の言ってるのはあの放課後のこと。こらえきれずに涙をこぼした、あの日。

「最初に私が小松君を好きだって言っちゃったから、奏子、言えなかったんでしょ。だから、私のこともずっと応援してくれて……でも、見ちゃったのよ。私が小松君と一度だけ帰ったあの日、奏子が泣いていたの。だから……」

「ううん、最初から好きだったわけじゃないの」

 自分こそ泣きそうになった早紀に、私はあわてて口をはさむ。

「応援するよ、って最初に言った私の気持ちに嘘はなかったの。早紀と一緒に小松君を見ているうちに、いつの間にか、だったのよ。小松君、かっこよかったし、こんな私にも優しくしてくれたし」


 ふわふわとかわいい早紀の隣にいる私は、いつだって引き立て役だった。それは別に気にしないし、私は男子にも平気で文句言える性格だったからそんなもんだと思っていた。早紀のように、男子から女の子扱いなんてしてもらったこともない。

 でも、小松くんは、そんな私も早紀と同じように接してくれたんだ。そんなこと初めてで……でも、人を好きになるのも初めてだったから、どうしたらいいかわからなかった。

 結局、その時の小松君には別に好きな人がいて、私は早紀と一緒に失恋してしまったわけだけど。


「だから私ね、今度誰かを好きになるときは、ちゃんと奏子と話そうと思ってたの。最初からでも後からでも、ちゃんと私に言って欲しい。あのね」

 早紀はまっすぐに私を見つめた。

「好きな人がどうとかじゃなくて、私、奏子をあんな風に一人で泣かせたくないの。言えないことなら言わなくてもいい。でも、奏子が泣きたい時は、そばにいさせて。ハンカチ貸すくらいはできるから」

「早紀……」

 思いがけない親友の告白に、私は目を瞬く。


「そっか……ごめんね。早紀が、そんな風に思ってるなんて、知らなかった」

「私の一番近いところにいるのは、奏子なんだからね。見くびらないで」

 頬を膨らませた早紀に、私はつい笑ってしまう。

「早紀ってかわいいなあ」

 私は、手をのばしてふくらんだ早紀のほっぺをむにむにとひっぱる。


「なによ、かわいいのは奏子も一緒でしょ」

「私なんてかわいくないもん」

「奏子は女の子だから、かわいいの」

 むにー、と早紀が私のほっぺを引っ張り返す。

「なによ、その理屈」

「……なにやってんの」

 急に声をかけられて、ぱ、と私たちはお互いを離した。見れば、ドアのところから悠希さんがあきれたような顔で覗き込んでる。


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