騎士とはかくあるべしと
トウェイン伯爵家は代々優秀な騎士を輩出する家系である。
全国民、12歳の魔力測定が義務付けされたばかりの時代、「魔力なし」と判断された者はそれだけで生活の基盤を失った。
魔力がある事こそ、女神の祝福であると説く教えのもとでそれは死刑宣告に等しいものであった。
王侯貴族は彼等を病だと偽り幽閉、或いは毒杯を授け、平民は毎日の食い扶持すら手にする事も出来ず貧困から自死を選択する事もあったとされる。
魔力なしと判断された者達を多く受け入れ、それぞれ相応しい才能を磨き上げる事に手を伸ばしたとされるのが、トウェイン伯爵家である、と語られている。
弱き者を守護する事こそ、騎士の本懐。
そも、魔力測定が義務とされるまでは差別を受ける事のなかった者達。
魔力ありきの仕事に就労は出来ないやもしれないが、お前達は決して無才ではないのだから、とある者には剣を、ある者には帳簿を、ある者には文字の読み書きを教えた結果、トウェイン伯爵領の識字率は8割を超える。
国全体の識字率が凡そ2割程である事実を考慮すれば、彼の伯爵家の人々は教え上手であると言える。
今代のトウェイン伯爵家の当主は「初代の再来」と呼ばれる程に高潔な人間である。
故に、御令息ジェームズ・トウェインに対して残念だと判断せざるを得ない、と至る所で話題に挙がっている事は非常に惜しいと私は考える。
「聖女が精霊の花嫁である事は重々承知。我が息子は殿下に対する忠義故に聖女に擦り寄っている」
嘆かわしい事だ、とトウェイン卿は口にしていた。
女神の教えによれば、聖女は精霊の写し身とされ、聖女を丁重に扱えば繁栄が齎される、と言う話になっている。
大元の精霊信仰を知る貴族であるトウェイン卿は何故教会はその事実をひた隠しにするのかと幾度となく問い合わせている様だが、教会から返答がくる事は無かったと聞いている。
セドリック・トウェイン
トウェイン伯爵。元近衛騎士団団長。
利き腕を傷めた為引退。
長子ジェームズに纏わる噂に頭を悩ませていると言う。




