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僕と彼女の猟奇的な日常  作者: nnnkkk
続 僕と彼女の猟奇的な日常

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第十九話 突入

発砲許可は出ていない。時間だけが過ぎていく。


無線が何度か往復して、規制線がもう一段外に広がった。


それでも許可は出ない。


店内では、また何かが倒れる音。

冷蔵ケースのモーター音が途切れ途切れに唸る。


クロスボウは動かない。

背中の銃も、まだ沈黙したまま。


茂は店の奥を見る。


ガラスの向こうで黒い影が動く。

棚の向こうに消え、また現れる。


警官の無線が短く鳴る。


沈黙。


また重い音。時間が長い。


茂は視線を横に流した。


紺色の装備の一人。

ショッピングセンターの現場で見た顔だ。


茂が歩み寄る。


「スタングレネード投げれますか?」


男が視線を向ける。茂は店内を見たまま言う。


「投げてもらえたら、僕が入ります」


男の眉がわずかに動いた。


「確認してみる」


茂に声を掛けられた隊員は、視線を一度だけ店内へ戻した。

黒い影が棚の奥を横切り低い音が続く。


男は小さく頷き、隊長の方へ歩いた。


「隊長」


紺色の装備の男が振り向く。


「何だ」


「未登録の彼が突入希望です。

閃光投げてもらえれば入ると」


数秒。


茂は何も言わず、ただ店内を見ている。

バックヤードの奥から、何かが落ちる音。


隊長が無線を持ち上げた。


「こちら危険生体対処班」


「閃光発音筒、使用申請」


無線の向こうで短い応答。規制線の向こうでサイレンが鳴る。


「発砲許可は不要。

閃光一発。外部突入補助」


沈黙。


無線の向こうで声が返る。

隊長は短く答えた。


「了解。待機」


無線を下ろす。周囲の空気が静まる。店内からまた物が倒れる音。


隊長が茂を見る。


「許可待ちだ」


茂は頷くだけだった。


無線が短く鳴る。隊長が受信を聞き、すぐに答えた。


「了解。閃光一発」


無線を下ろし、隊長が手で小さく指示を出す。


「配置」


隊員がばらける。

投擲担当がガラス正面を避け、入口脇の壁際の死角に肩を寄せた。


観測手が一歩下がり、店内の動きだけを追える角度を取る。


M870を持った隊員が入口脇に立つ。

銃口はまだ下がったまま。

ただ、入ってくるものの線だけを押さえる。


隊長が茂を見る。


「突入準備を」


茂は半歩ずれた。

入口の正面から外れる。


登録の三人も、さらに外へ散る。矢は上げたまま。

入口を塞がない。


警官が規制線側へ声を飛ばす。


「下がって! 下がって!」


ざわめきが一段後ろへ下がる。


店内でまた何かが崩れる音。


投擲担当がポーチに手を入れ、黒い筒を引き抜く。


ピンを指で触り、レバーを握り込んだ。


隊長が短く言った。


「合図で投げる」


茂は一度、ゆっくり息を吐く。肩がわずかに上下する。

もう一度、短く吸う。


数秒。


それから手を上げた。


隊長の視線がそれを捉える。


一瞬の間。

合図だと気づいた隊長が短く言った。


「閃光」


投擲担当の肩が沈み、腕が振られる。

黒い筒が入口を越えた。


床に当たり、一度跳ねレジの影へ転がる。


次の瞬間――白い光が弾けた。ドン、と短く重い音。


店内の空気が叩きつけられる。


棚の影で黒い塊が跳ねた。長い首が振られ羽毛が散る。


脚が床を掻く。

棚が倒れ、商品がばらまかれる。


頭を振る。もう一度。


方向が定まらずレジ台にぶつかり、体勢を崩す。


その瞬間、茂が入口から飛び込んだ。低く走る。距離は数歩。


黒い体がこちらを向き、脚が持ち上がる。


茂は踏み込んだ。腰を落とし、槍を両手で押し出す。


刃が腹に触れ羽毛が裂ける。

抵抗。


厚い筋肉の壁。


茂はさらに踏み込む。体重を乗せる。

肩が前に出る。腕の筋が張る。


槍が腹へ沈む。

刃が奥まで入り、茂の指がそれに掛かる。


トリガ。


刃の奥で、噴射音。

圧が腹の内側へ叩き込まれる。


粘性の液体が一気に押し込まれ、体内で数瞬の沈黙。


次の瞬間。腹の奥で、鈍い破裂。肉の内側が膨れ上がる。

皮膚の下で波のような膨張。筋肉が裂ける音。


血と体液が床へ散る。


長い脚が床を滑り巨体が横に崩れた。棚にぶつかり、商品が雪崩れる。

床が鈍く鳴り動きが止まる。


茂は槍を握ったまま動かない。


何かが静かに流れ込む。熱ではない。指先に、少しだけ力が入る。


茂は一度、ゆっくり息を吐いた。


外から声が飛ぶ。


「対象ダウン!」


「突入!」


盾が先に入り、黒い装備が続く。

M870がその後ろに入る。銃口はまだ上がらない。


視線が店内を走る。

倒れた巨体。動きはない。床に広がる血。


隊長が短く言う。


「クリア確認」


隊員が左右へ散る。

レジ裏。バックヤードの扉。棚の奥。


茂は槍を握ったまま立っていた。


盾の影から声が上がる。


「こっちに一人!」


バックヤードの扉が開く。店員の男が壁にもたれていた。

顔色が悪い。隊員がすぐに肩を抱えた。


「大丈夫ですか」


男はうなずくだけだった。


別の隊員が無線を押す。


「要救助一名。意識あり」


入口の外で担架が動き、男は支えられながら店外へ出される。


店内の緊張が少しだけ緩む。


誰ももう茂を見ていない。確認は終わった。


茂は槍を引き抜き、一度だけ巨体を見る。

動きはない。


茂は入口へ歩いた。外の空気が入ってくる。


規制線の向こうで人のざわめきが広がっていた。

本日もお読みいただきありがとうございます。


少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

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明日も21時に更新予定です。引き続きよろしくお願いいたします。

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