第十五話 いつもの夜
茂はベッドボードに背を預けていた。
片手にスマホ。
画面の光。
顔の輪郭だけが浮く。
その足の間に、ユイがうつ伏せになっている。
夢中になった様子で、茂の腹の下へ顔を埋め、ときおり肩が上下する。
呼吸は、少し乱れ気味。
茂の指先が無意識にユイの髪へ触れる。
スマホの光。
湿った気配だけが、部屋に残る。
ユイは一度顔を離し、息を整えた。
唇がゆっくり下へ滑り、手が優しく支える。
視線だけは上に向けたまま、茂を見つめている。
茂の喉がわずかに動く。
ユイは目を逸らさない。
試すように、甘く。
満足したように体を起こし、ユイは茂の胸元まで這い上がる。
「余裕な振りしてるの?」
唇の端を上げる。
「余裕だし」
茂の手からスマホをするりと抜き取る。
「これが無くても余裕かな」
画面を脇に放り、顔を近づけるとそのまま唇を重ねた。
深く、ゆっくりと。
離れた瞬間、二人の間に細い糸が残る。
茂は目を逸らさない。
「後ろ向いて」
低く、短く。
ユイは言われた通りにベッドの上で膝をつき、身体を反らせる。
細い背中の曲線がはっきりと浮かぶ。
茂の手が腰に触れる。
柔らかさを確かめるように、ゆっくり掴む。
ベッドがわずかに軋み、ユイが息を飲んだ。
「……っ」
声を抑えようとしても、呼吸が乱れる。
枕に顔を埋め、シーツを握る。
茂の手が細い腰に触れたまま動く。
呼吸のリズムが重なる。
ユイの肩が小さく揺れる。
「や……っ」
言葉は続かない。
声は枕の中に消える。
茂は視線を落とす。
表情は変わらない。
ただ、確かめるように見ている。
茂はユイの両手を取り、腰へ導いた。
「自分で」
低く言い、手を離す。
ユイは息を乱しながら、言われた通りに身体を支える。
背中が大きく反る。
茂はその姿を見下ろす。
距離がなくなる。
体温だけが残る。
ユイの呼吸が跳ねる。
声を堪えても、完全には消えない。
一瞬、動きが止まる。
沈黙。
重なった体温だけが、はっきりと伝わる。
ベッドが再び軋む。
ユイの指が尻のラインを強く掴む。
息が乱れ、途切れ、また繋がる。
茂の視線は揺れない。
ただ、静かに見ている。
ユイは茂の腕に頭を乗せ、足を絡める。
指先が、無意識みたいに胸や腹をなぞる。
「茂、ちょっとごつくなった?」
「そうかも」
「体重は?」
「20キロ増えた」
ユイの指が止まる。
「え?」
顔を上げる。
「20キロは体型変わるよ?」
「変わらないけど、体重だけ増えた」
ユイは眉を寄せる。
「そんなことあるかなあ」
指先で肩を押してみる。
確かめるみたいに、軽く叩く。
ユイは茂の胸に手を這わせる。
腹、肩、腕。確かめるように押す。
「筋肉質になった感じはするけど……」
指先で二の腕をつまむ。
「20キロってことは、80キロ以上あるって事だよね?」
「うん」
ユイが黙る。
「茂の体型で80キロは普通ないよ」
視線が少し真面目になる。
「病院行った方がよくない?」
「健康診断の時、聞いてみる」
ユイはまだ納得していない顔で、もう一度胸を押した。
「最近、食べる量おかしいもんね」
ユイは茂の腹筋を指で確かめるように触れながら言う。
「夜中に二回冷蔵庫開けてるし」
少し笑う。
「腹減る」
「減り方が普通じゃないんだって」
腹をまさぐる手がゆっくり下へ滑る。
「まだ元気でしょ?」
いたずらっぽく笑って。
「80キロの実力、もう一回試していい?」
茂は何も言わない。
ユイの指が触れた場所に、ゆっくりと熱が戻っていく。
さっきまで落ち着いていた硬さが、指先の下で確かに張りを取り戻す。
夜はまだ、終わらない。
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