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フラれ勇者は大公女に復讐できない  作者: ヒロ猫
後悔する大公女
17/21

第五話

お3方に評価していただきました!

ありがとうございました!!

そしてブクマも200間近という……!!ブクマしてくださった皆様、読んでくださった皆様、ありがとうございました!!


 ソニアは、祝賀会にミュリーラとイーデリックが参加するのを禁じた。

 ソニアは、強くあらねばならない。また、今回の戦い以上に彼女の心を削るものはなかったから、幼い頃から慣れ親しんだ夜会での振る舞いに何も負担に思うことはなかった。だがミュリーラは、そうしてイーデリックは未だ喪った仲間への思いに引きずられている。つまらない権力闘争のせいで彼らがこれ以上傷つくことのないよう、ソニアはオーガスだけを伴って祝賀会に参加したのだった。

「さすがは勇名高いソニア姫。魔族の相手など、手ぬるいほどだったのでは」

 耳に残らない賛辞を繰り返され、すっかり麻痺したソニアの心を鈍く引っかいたのは、レイシュア神殿長のその言葉だった。

「まぁ……。わたくしの至らなさに汗顔の至りですわ」

 だがソニアは顔色も変えずに淑やかに応じてみせた。

 幼い頃から、両親の仲の悪さを、よりにもよってソニア自身に揶揄してくる大人達に囲まれていた。同情の顔をして、心の奥深い柔らかい場所を無神経に刻まれる痛みに耐えてきたのだ。女神の名の下に己が支配欲を満足させんとする欲深い男の言葉など、取るに足らない。

「それほど卑下するものでもないよ、ソニア。勇者無しで魔族を退けた功績は称えられるに相応しい」

 いつの間にか、ジャスターがソニアの横に立っていた。

「功績と申し上げれば、陛下。ティクソン侯爵のご子息が見えませんが?まさかソニア姫お一人に魔族討伐の功をお示しになるおつもりでもございますまいに」

 ソニアの代わりに口を開いたのは、意外なことにイーデリックの父親であるティクソン侯爵だった。レイシュア神殿長とつながりが深く、懇意にしている筆頭貴族でもある。イーデリックと同じ焦げ茶の髪に、灰がかった瞳。息子とは似ても似つかぬ巨体でもある。鍛えているのではなく脂肪だと明確に分かる肥えようだ。

「神殿長猊下、息子はどうも体調が思わしくないようなのです。無理に出席することもあるまいと、私が息子に欠席を勧めたのですよ。いやはや、甘い父親で申し訳ない」

 はっはっは、と鷹揚に笑うティクソン侯爵の目は柔和に細められつつ、油断ない光を秘めていた。

 レイシュア神殿長は、一瞬黙った後、声を合わせて笑い始めた。

 ティクソン侯爵がレイシュア神殿長から距離を取り始めている。明日にはその噂が貴族達を駆け巡るだろう。

 ソニアは場に合わせた控えめな微笑みを浮かべつつ、なぜジャスターが未だにこの場にいるのだろうと内心首を傾げた。不快な笑い声に合わせてこの場から立ち去ればいいものを。おかげでソニアも足止めされている。

「そういえばレイシュア神殿長」

 笑い声が止んだ、一瞬の沈黙を穏やかに埋めるようにジャスターが口を開いた。

 ソニアは従兄のその声を聞いて体を一瞬緊張させた。

 ジャスターは分かりにくい男だ、と言われている。だがソニアは従兄のせいか、なんとなくジャスターの顔色や思惑が読み取れるのだ。だから今の声を聞いて反射的に体が強ばった。ジャスターは、何か決定的な攻勢に出ようとしている。それを悟ってソニアは慎重に周りの様子を窺い始めた。


「どうしてそなたの机の引き出しに、ソニアが勇者に送ったはずの親書が未開封のままでしまわれていたのだ?」

 ソニアは、その瞬間のレイシュア神殿長の顔を見ていた。

 レイシュア神殿長は、一瞬だけ目を泳がせた後、完璧な笑みで以てジャスターの言葉を冗談として笑い流した。

 スキルを使って真実とは違うことを誤魔化そうとする者にも、弱点はある。彼らはスキルを使う一瞬の隙に、ひどく無防備になるのだ。それこそが、彼らが嘘をついているという証明にもなる。

「親書が……」

 思わず呟いたソニアを、レイシュア神殿長は故意に無視した。

 ソニアの親書が勇者に届かず、救援の意図が伝わらなかった。そのために勇者は来ず、ソニア達の仲間は多く失われた……!!

「冗談だといいねぇ」

 にっこり微笑むジャスターの顔を見ていれば、彼はこの件をねつ造してでもレイシュア神殿長を追い詰めるつもりだろう事が見て取れた。そもそも証拠となり得る親書を燃やさずに神殿長の引き出しにしまっているなど、あり得ない失態ではないか。この欲深い男がそんな証拠を残すとは思えない。だが、彼が親書を勇者に渡さなかったことは事実なのだろう。だから狼狽えた。

 ソニアは、じっと神殿長を見つめた。既にティクソン侯爵は側から離れてどこかへ消えている。その欲深さとは裏腹に細身の老人は、ソニアの視線をうけてなお、傲然と佇んでいた。

 仲間を失った悲しみ、怒りが燃え盛り――……そして冷えて固まっていった。

 魔族から身を守る術を持たないブリディン王国と、勇名を馳せるソニアがいるロージアン王国(我が国)。勇者が優先的に助けに行くのは、どちらだろう?そしてもし、勇者から『救援に行くまで持ちこたえよ』という返書でももらっていたら?

 魔族が繭からいつ出てくるかなど誰にも分からない。だがあれほど早く繭が破れ、あれほどの力を持つ魔族相手にソニア達公女隊は果たして”持ちこたえ”られただろうか?

 勇者の救援がないと分かっていたからこそ全力で戦い得た。仲間の死体を積み上げてでも魔族を殺せた。だが勇者が来るまで持ちこたえるつもりで、そんな甘さであの魔族を倒せたとは思えない。



 だからやはりソニアの罪なのだ。

 ソニア自身が弱かった。ソニアが仲間を強くする義務があったのに、足らなかった。

 ソニアが背負い、いつか地の底で仲間達に這いつくばって詫びるべき罪なのだ。




読んでくださってありがとうございます!!


土曜日ぐらいからアクセス数が上がり、「なんで?!なろうHPのバグ?!」と思っていたら日間ランキングの下の方に載っておりました!日間ランキングパネェ……!!

日間ランキングに載るほどブクマしてくださった皆様、評価してくださった皆様、ランキングから来られた上に読む方を選ぶこの小説を読んでくださった皆様、その上にブクマしてくださった皆様、本当にありがとうございました!!


でもまだちょっと鬱展開続きます~……

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