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地下牢の神子  作者: 雪香
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紅神子と

お待たせしました。閲覧ありがとうございます。


「…そっかあ。ケイラさ…ケイラは、守来の侍従長なんだね。」


「ええ。モミジ様に我が侍従長を救って頂き、本当に感謝致します。」


守来と共に、3の国城内の一室でのんびりとお茶をしていた。


偽神子や三の方の事など全て頭から吹き飛んだ五の方は、目の前の少女に夢中である。


壱刄に言ってないけど大丈夫かな?この守来さん…じゃなかった。守来も十神衆だから、良いと思うけど。


実は、偽の紅神子(メイド長)と会う為に壱刄とこの3の国に来たのだが、来たは来たで何やら三の方は五の方と会談中だと知って待たされたのだ。


暇を持て余し、御手洗いに行くついでに庭を眺めていれば、五の方と出会ったという訳だ。

心配だったケイラさんにも会えて良かった!


あ、慧羅って言わないとか。


五の方…穏やかな優しい男性を眺める。壱刄とは、また違う容姿の整った人だ。

歴代の神子の側室を務めてきた事も頷ける程、話しやすく好感を持てる雰囲気を持っている。


「…きれいな髪。さわって良い?」


相手の癖の無い栗色の髪を目に留め思わず口から出た言葉に、自分でハッとする。


何いってんの?初対面の人に。


慌てて否定しようとする紅葉に「どうぞ、構いませんよ。」と、優しい笑みを送られる。


「…あの、ありがとう。」


サラリと揺れる美しい髪の誘惑に勝てず、そっと守来の髪先を手に取り撫でた。


興味津々な紅葉に、守来は蕩けんばかりに目の前の少女に頬を緩める。

そんな主に、慧羅は後ろに控え目を見張っていた。


(このような表情をされるのは初めて見たな。やはり、本物の紅神子という事だったか)


穏やかな時が流れる中で、扉を叩く音が響く。


振り向きもせずに紅葉と話しを続ける五の方に代わり、慧羅が応対に出て行く。


「…ああ、5の国侍従長様ですね!取り急ぎご連絡が!」


「これは、三の方様の妾殿…一体何事だ?」


慌てた様子で意気込むのは、三の方の妾で最も年嵩の者であった。


確か、名前は…遊栄(ゆえ)だったか?妾というより、侍女頭といった雰囲気の女人だと記憶している。


遊栄の少々急いでいた為か、早口だが簡潔な説明により事情を察した慧羅は直ぐに動いた。


「…五の方様!早急に申し上げたき事が。」


五の方はと言えば、穏やかで優しい風貌に珍しく不機嫌さを醸し出す。


「…今、必要な事かい?」


主にやんわりと拒まれ、流石の慧羅も二の足を踏んでしまう。

悠久の時を越えて、やっと会えた愛しい女性に会えたばかりだ。気持ちは分からなくもない。


「えっと?慧羅、何かあったの?」


困惑する慧羅に助け船を出したのは、意外というか紅葉である。


何かのんびり過ごしてたら、慧羅が何か言おうとしたのを守来が止めて…うーんと、よく分からないけど。


「…もしかして、大切な事かな?守来聞いてあげよう?」


ね?と、紅葉が名前を呼ぶだけで、五の方の機嫌が上昇する。

今なら、紅葉が言えばどんな願いでも何でも聞いてくれるだろう。


「貴女様が、そう仰るならば…。」


紅葉ににこりと優しげに微笑み、スッと慧羅に視線を向けた。


「…慧羅、何がありましたか?」


っは…、と慧羅は素早く姿勢を正し、膝を着いたまま守来と紅葉に衝撃の事実を口にする。


「…偽の紅神子が、この城から姿を消したそうです。」


「…何?」


え?どーいうこと?


慧羅と守来は既に、紅葉が本物だと確信している。つまり、この3の国に居る紅神子は偽物であるが。


偽紅神子が居なくなった。それは、本当の紅神子を恐れての逃走か、それか他に何か目的があるのか。


しかし、これの意味するのは。


「なるほど、自ら偽物だと証明したという訳か。」


「…はい。今は行方は捜索中、一の方様と三の方様は会談の途中ですが、五の方様も居られれば来て頂きたいと。」


分かりました、と五の方の簡単な返事が返される。

しかし、あくまで五の方の関心は紅葉が最優先。会談が長引くと悪いので、先に1の国まで紅葉を送り届けると申し出てきた。


いやいや、ちょっと待って?それって、私も居なくて良いのかな?


何となく返事を濁していると、紅葉の変化を五の方が察してくれた様だ。


「大丈夫ですよ。長くなると貴女様がお疲れになってしまわれると心配でございますし、それに…三の方も居ります。」


ゆっくりと、丁寧にだが三の方の名前を強調されると困ってしまう。

確かに、三の方には会いたくない。私を一度も見ずに処刑しようとしたんだ。


でも、夢が過る。

私の魅影…魅影に会いたいとモミジが囁く。


恋という物に疎い紅葉でも分かる。それは口に出してはいけない気がする。


「…大丈夫だよ。まだ、三の方は怖いけど壱刄も居るし…守来も居るんだよね?なら、頑張れる。」


「…あの、し、しかし。」


年若い少女の拙い弁に、聡明で知的な守来は勿論丸め込まれかけていたりする。


うう、やっぱり子どもの私が騒いでも駄目だよね。…守来も呆れて困ってるし。でも、頑張って押してみよう!


緊張の為、瞳が潤み震える。


「私、もう少し守来と一緒に居たいなー。良い…かな?」


「…………………参りましょう。」


(五の方様が完全敗北した…)


慧羅の頬が引くつく。慧羅は思う。この娘、あの五の方様を言葉だけで動かした…と。


まさか、あの冷徹な一の方様は変わらないよな?笑ったりするのだろうか?

まあ、好色な三の方様なら通常通りか。対応も軽

そうだな。


慧羅の想像は此処で止まり、五の方と紅葉の後に続くのだった。






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