9.
ただ、トライセラはまともな判断ができなくなっていた。
「コーク・ローチ部隊! 敵は近衛兵とジェシカ・シアターだ! 迎え撃て!」
「「「「「……は? ええっっ!!??」」」」」
「……何?」
その場の誰もが驚いた。トライセラは味方側(?)のハズのジェシカも迎え撃てと言い出したのだ。
「で、殿下? 何を仰っているのですか!?」
「気は確かですか!? 何故わざわざ最強の騎士を迎え撃てなどと!?」
コアトルとコーク達が驚くが、トライセラは更にとんでもないことを口にした。
「あの野蛮な騎士がこの局面で現れたのは兄上のように私を始末するためだ! 彼女は王族だろうと容赦しない! 間違いなく敵だ!」
「「「「「っっ!!」」」」」
理不尽ないいようだが、ジェシカは確かに第一王子で王太子だった男を剣で何度も叩き潰したことがある。そういう意味では警戒されても仕方がないかもしれないが、今は状況が違うはずだ。
そもそもジェシカは第一王子を始末していない。とても痛い目に遭わせただけなのだが……。
「私も殿下の側にいたほうがいいかしら?」
「リリィ様が宥めますか?」
「狂言王子……」
当のジェシカは呆れた視線を向けるだけ。怒ってはいないのは幸いだった。
「トライセラは錯乱しているようだな。今だ! あの生意気な娘を捕らえよ!」
国王がチャンスとしてリリィに近衛兵を差し向けてくるが当然ジェシカがそれを防ぐ。
「ちっ! 面倒な近衛兵どもを地に伏せてやる。我が剣術、とくとご覧あれ! はあああああ!!」
「「「「!?」」」」
剣を手に持ったジェシカは、近衛兵たちを風に乗って舞う花びらのように美しい剣術で半数ほど倒してしまった。
「そ、そんな馬鹿な……吾輩の精鋭の近衛兵たちがあっという間に半分も……!」
「ふん、この程度のこと。我が剣術スピニング・トゥ・フォークは数の利を巧みな動きで切り崩し翻弄する。だが、流石に近衛兵は手強い。名高い三人は倒せないか」
「「「…………」」」
ジェシカの特殊な剣術を持ってしても三剣士サム、マル、ベルは別格のようだった。三人ともジェシカの高速剣を防いでいた。
「ジェシカ、アンタだけじゃないぜ!」
「ボク達もいるからね!」
ダブール商会の用心棒の二人も参戦してくる。ショウは容赦なく急所(股間)を狙い、フィルは暗器(暗殺道具)を振り回す。二人の実力を信頼するジェシカはあることを思いついた。
「二人とも、ちょっと任されてもらっていいか。あの苦労人王子を休ませてくるから」
「「苦労人王子? ああ……」」




