8.
「ち、父ハゲ!?」
「ババですって!?」
「お二人はそう言われても仕方がありませんぞ! それでも親ですか!」
「全くだ!」
コアトルもコークも無礼を承知で文句を言い出すが国王夫妻を激怒させるだけだった。
「息子のくせに親になんて口を! コアトル! コーク! お前らも家臣なら諌めんか!」
「諌めどころか叱責を受けるべき陛下がそれを言いますか!」
「なんですって!? 執事ごときが、」
「執事ごときに言われるほど貴方方は遊び呆けていると言っているのです!」
「その通りだ! ここまで言われて国に戻らないのか!」
「「……っ」」
今までとは違って激情をぶつけてくる彼らに国王夫妻はたじろぐが、国王はこの期に及んで己の欲望を口にした。
「戻るのは温泉に浸かってからだ! ここまで来て国に戻れるものか!」
「父ハゲーっ!!」
トライセラは遂に怒りが限界を超えた。もはや怒りに任せてしまう勢いだったが、寸前でそれを思い留められることになる。
「そこまでです! 王族の皆さん!」
「「「ッッ!!??」」」
温泉の方向から王族たちが聞き慣れた声がかけられた。皆がその視線を向けると、そこにいたのはトライセラの婚約者リリィ・プラチナムだった。
「リリィ……何故、君がここに?」
「私は皆さんを迎えに来たのですわ。つまり、今すぐ帰りましょう、ということですわ」
「な、何!?」
「なんですって!?」
「リリィ様! それは真ですか!?」
「隣にジェシカ殿も! 本気だ!」
国王夫妻が王太子が執事が、リリィが来た目的に驚く。
「ならば敵か……!」
「ジェシカ……?」
国王がリリィを敵と認識した直後、それぞれが己の目的のために動いた。国王夫妻が憤り、控えていた近衛兵が動く。リリィの背後にいたアッキーと用心棒二人、そしてジェシカも動く。ただ、喜んでいた執事と違って第二王子の様子は変だった。
「おのれぇ! どいつもこいつも邪魔するというのか! 近衛兵よ! あの生意気な公爵令嬢を黙らせろ!」
「貴女達も温泉に浸かりたければなんとかしなさい!」
「「「……了解」」」
国王夫妻の呼びかけで近衛兵達が前に出る。その中には王の懐刀と呼ばれた三剣士サム、マル、ベルの姿があった。どこかやる気のなさそうな顔だったが実力はジェシカも認めるほどの強さだという。
「ジェシカ、アッキー」
「お任せください、お嬢様」
「出し惜しみはしません。二人とも、出番ですよ。戦ってきなさい!」
「「了解!」」
リリィとアッキーを守る騎士と用心棒。彼女たちはそれぞれの武器を手に近衛兵達を迎え撃とうと構える。
「我々も戦うときが来ましたな」
「頼みますぞ隊長」
トライセラとともに国王夫妻を追っていたコーク・ローチ隊長も部下とともに近衛兵達を相手に構える。




