7.
ウィンドウ王国の温泉地へと続く道のりで、この国の者ではない王族の親子の言い争いが始まっていた。
「トライセラ! 何故ここにいるのだ!?」
「国で仕事をしていたでしょう!」
一般貴族の身なりに扮したハゲ(薄っすら髪がある)で白いヒゲを蓄えた男こそツインローズ王国の国王ウィンビジブル・ツインローズ、その隣りにいる妙齢の女性こそ王妃バーラス・ツインローズ、それと向かい合う青年が王太子トライセラ・ツインローズだった。
「陛下……いや、父上母上! 私はもう一人で多くの仕事をし続けるのはうんざりなんですよ! 下から上までの貴族との対応に貴方方の溜め込んでいた仕事まで任されて! 学園の卒業式の準備もあるというのに! 私の生活時間のすべてが仕事になった! 全部がだ! 兄がいた頃から大変だったのに、貴方方が予定にない視察を増やすせいで更に酷くなるなんて……ふざけるなぁっ!」
「殿下の言うとおりですぞ! いい加減に国に帰ってきてください!」
「俺達も騎士なのに書類仕事なんですよ! どうにかしてください!」
かつて婚約者のリリィに婚約破棄を宣言した時と同じように悲痛な叫びをあげるトライセラ。その姿は誰が見ても胸が締め付けられる。専属執事コアトル・ケツアールはそれを理解しているからこそ支えてきた。
だが、国王夫妻は自己中心的な人間だった。
「何を言うんだ! 確かに視察対象を予定よりも増やして国を留守にしていたのは悪いがそれだけだろう? 仕事はお前のほうが早いから託したんだぞ!」
「な、何だと!?」
「私達は何も遊ぶことだけが目的じゃなにのよ? 他国の内情を知って行くことは国を治める者として、」
「ああああああああああああああああ!! 黙れぇっ!!」
トライセラは絶叫した。その叫びには両親に対する怒りと憎しみが込められているとすら感じられる。彼は鬼の形相で親である国王夫妻を睨みつけた。
「父上! 貴様! 私のほうが仕事ができるだと! そんな理由だけで押し付けたというのか! 恥をしれ! このハゲ!」
「ぬ、ぐ……!」
「母上! 遊ぶことも目的のうちに入っていたのか! 王族の誇りはないのか!」
「な、なんですって!?」
トライセラは溜まりに溜まっていた不満と怒りをぶつけていく。だが、理不尽な両親にはその思いは届かなかった。
「仕方がないだろう! 国王である吾輩がハゲ頭だなんて国民に情けないと思われるではないか! 少しでも頭皮が良くなるなら希望を掛けてみたくもなるわ!」
「私達は外国まで足を運んで仕事をしているのよ! 少しくらい遊んでもいいじゃない!」
「……本当に自分のことしか考えていないんだな! 父ハゲ! ババ上!」




