6.
「リリィ様は今すぐに向かう気ですか?」
「ええ、そこそこの道のりだけど準備はできているの。仮にも公爵令嬢だからね」
リリィは公爵令嬢だがアウトドアが得意な方だった。ジェシカもその例外ではない。以前も元王太子を捕らえるために外に出た功績がある。
「なるほど。差し出がましいことですが私達も一緒にご同行させていただけないでしょうか?」
「え? いいの?」
リリィは少し驚いた。というのもアッキーは商人、時間は一切無駄にできない。それが突然、貴族令嬢の遠出に同行するなんて……と思ったが、だからこそ思惑があることに気づいた。
「ウィンドウ王国に用があるの?」
「はい。向こうにも新しい支店ができたので視察する予定でした」
「それならちょうどいいわね。貴女達が一緒なら頼もしいわ」
リリィはアッキーの背後に視線を向ける。正確には二人の女達にだ。彼女たちはアッキーの用心棒だった。
「アタシ達の出番?」
「久々に荒々しい感じ?」
二人の用心棒、一人が黒髪碧眼で強気そうな雰囲気で目がギラギラした女性、もう一人が金髪碧眼で大きめの目に人懐っこい素顔の可愛らしい顔の女性。
彼女たちは待ってましたとばかりにポーズを決めて名乗りを始める。
「アタシは名前はショウ・トゥアーロ!」
「ボクは名前はフィル・リップライト!」
そして、最後に二人で左右対称なポーズを決める。
「「我らは二人一組のダブール商会の用心棒だ!」」
ノリの良い決め台詞を口にするが、リリィとジェシカの反応は薄かった。
「お久しぶりね二人とも」
「相変わらず痛いポーズだな」
「「え~!? そんな反応!?」」
リリィとジェシカは用心棒のこの二人とも旧知の仲、いつも決めポーズとセリフを見聞きしてきたので慣れてしまっていた。
「ふふふ、いつものお二人で良かったと思いますよ」
「変わらない様子で何よりだ」
「いやぁ、それほどでも~」
「ありますよぉ、えへへ」
「商会からは私とこの二人がついていきます。短いですがよろしくお願いします」
リリィとジェシカにアッキーとその仲間達が加わった。こうして彼女たちの王族捕獲(?)作戦が本格的に始まった。
◇
話がまとまった後、アッキーと用心棒達は己の武器を準備していく。
「アッキーの予想通り、お嬢様はアタシらを頼ってきたな」
「この国の王家のブラックぶりは有名になったもんね」
「ええ、お陰でリリィ様に借りを作れたわ。最も近衛兵との戦いが待っているけどね」
「「腕がなるよ」」
「頼もしいわ。いざとなったら私も戦おうかしら?」
ショウとフィルは怪訝な顔になった。アッキーの持っている武器(?)があまりにもあんまりだったからだ。
「だったら、せめて武器のことを考え直せねえか?」
「スリッパの形の武器はちょっと……」
「え?」
アッキーが手にしていたのはスリッパにしか見えなかった。そして、この武器(?)は結局使われることはなかった。




