4.
ダブール商会会長アッキー。フーシャ王国で女性ながら商会を立ち上げた貴族令嬢。リリィの友人であることは事実だが、何故今その話がされたのか……リリィはなんとなく予想できた。
「かの商会は情報伝達技術がとてつもなく素晴らしいとお聞きします。その情報網を駆使すれば国王陛下やトライセラ殿下達の正確な位置を割り出していけるのではないかと」
「なるほど! 先回りして殿下と国王陛下と王妃陛下を捕らえるのですね」
「捕らえるというのは少し……そうですね。その通りです……」
つまり、国王夫妻のもとに向かうトライセラを先回りして国王夫妻とともに連れ帰る算段だというのだ。
「今、国王陛下達は近衛兵と共に行動しています。旅行気分で視察しているらしく、正確な場所は特定できていません。ウィンドウ王国にいるくらいしか分からないのです……」
「ウィンドウ王国……」
ウィンドウ王国、それを聞いてリリィはハッとした。思い当たることを思い出したのだ。
「今の時期、ウィンドウ王国は温泉のシーズンだと聞いたことがあります。国王陛下はその温泉を目指しているのではないでしょうか?」
「温泉? そういえば以前陛下が頭皮にいい温泉を望んでいたと口にしておられたような……」
「決定打ではないですが参考になると思います。ジェシカ!」
「はい!」
リリィは立ち上がってジェシカを呼ぶ。何かを察したジェシカは凛々しい顔つきで返事を返す。そして、リリィはオルドを驚かせる発言をする。
「これから私達は王家の方々を捕らえ……迎えに行きます。すぐに支度をしなさい」
「分かりました!」
「ええ!? どういうことです!?」
オルドは動揺を隠せない。頼んだのは情報提供なのにトライセラの婚約者であるリリィ自身が迎えに行くというのだ。公爵令嬢に何かあってはたまらないとオルドは止めようと思ったが、リリィはもっともらしい理由を語った。
「私はトライセラ殿下の婚約者です。その私が殿下を迎えに行くことは不思議なことではありません。そもそも、私も殿下のために尽くしたいと考えていたのです。良い機会ではないですか」
「し、しかし……」
「商会の会長はちょうど今この国に来ていますし、私がいけばスムーズに情報交換できます。さあジェシカ、行きますわよ」
「はい! そういうことだオルド殿。我らに任せて王宮に戻られよ」
「……」
オルドはまだ何か言おうと思ったが、ジェシカの強烈な睨みに怯んで黙るしかなかった。
「あれが最強の女騎士ジェシカ・シアター……怖い」




