3.
「――ということ内容が記された手紙が残してありまして……現在、トライセラ王太子殿下は行方不明の状況なのです……」
プラチナム公爵の屋敷で、何の前触れもなく突如王宮から来た老人オルド・エナジーはトライセラ王子の置き手紙の内容を伝えた。肝心の王子の婚約者のリリィ・プラチナム公爵令嬢に。
「王宮で殿下は行方をくらませたと思えば、このような置き手紙を……。国王陛下と王妃陛下の視察期間が伸びたと聞いた時、嫌な予感がしたのですが……」
「そのようなことがありましたの。国王陛下と王妃陛下のお遊びには呆れていましたが……」
「国王夫妻とはいえあの第一王子の親ですからね。同じようなことをしても不思議ではないでしょう」
肩まで伸びる銀髪に白銀の瞳の美女――公爵令嬢リリィ・プラチナムは現状を理解して呆れ果てた。それでいて嘆きもあったが、その嘆きは婚約者かその父親に向けられたものか、あるいは力になれなかった己に対するものなのか、オルドは検討もつかない。
そんなリリィの言葉を傍らで真剣に聞いているのは公爵家の騎士ジェシカ・シアター。ポニーテールにした黒髪に緑の瞳の女性で、リリィに対して高い(狂信的な)忠誠を誓っている。それ故に王家全体に苛立ちを見せているようだった。その怒りはオルドでも理解できた。彼女は置き手紙を睨み続けているのだから。
「つまり、今は王家の方々がいないことになりますが、王宮ではどのように対応しているのでしょうか?」
「殿下がいない今、政治は宰相のスイツ・マネー殿と外務大臣のバード・アイスエージ殿が中心になって担当し、殿下の捜索――追跡は将軍のコマンダ・ビストゾン殿が中心になって行っています。殿下が抜けた穴は大きいことですが、宰相と大臣は寝る間も惜しんで働いてくださっております」
つまり文官が王家の尻拭いを担当し、武官が王族を連れ戻す担当になっているという。重要な仕事を担う王族がいない王宮はさぞかし激務になっているだろう。
「将軍――ミスター・バイオレンスは相当腹を立てているでしょうな」
「それで私も王宮で仕事をこなしてほしいというわけですね」
「いいえ、違います……」
「?」
リリィは王宮で仕事することを求められると思っていたが、オルドはそれを遮った。オルドはジェシカの顔を一瞬見てから慎重にリリィに告げた。
「リリィ嬢。貴女はあのダブール商会の会長と旧知の中だとお聞きします」
「? ええ、会長のアッキーとは親友ですが、それがなにか?」




