13.
王族たちは国に、王宮に戻った。まず、国王と王妃が先に戻って、三日遅れてトライセラが戻ってきた。
王宮の文官も武官もやっと彼らが戻ってきたのだと喜んだと同時に、不満をぶつけた。特に宰相のスイツ・マネーと外務大臣のバード・アイスエージは休みを返上してまで働いていたため、国王と王妃に対する怒りと侮蔑を隠すことはなかった。
将軍のコマンダ・ビストゾンも王宮に戻ってすぐに国王夫妻に怒りをぶつけた。ただ、将軍は先に王族たちと合流したリリィ達にも怒っていた。令嬢たちに先を越されたことが悔しいらしい。
「す、済まなかった……」
「ごめんなさい……」
意外なことに国王夫妻は素直に謝った。家臣たちの怒りに怯んだのもあるだろうが、ジェシカに痛い目に遭わされたのが効いたようだ。国王にいたっては頭に残った毛を全て切られてしまったショックが大きいらしく、以前のような圧力はすっかり無くなっていた。
覇気がなくなった国王夫妻と違って、遅れて戻ってきたトライセラは元気になっていた。
「皆、私達親子が不甲斐ないせいで迷惑をかけた。本当に申し訳ない。これから私達は適度に休みながら国のために皆のために働くことを誓う!」
「「「「「王太子殿下……!」」」」」
トライセラが元気な姿になって帰ってきたことに家臣たちは我がことのように喜んだ。トライセラがいつも寝る間も惜しんで頑張ってきたことはよく分かっていたからだ。
ただし、国王夫妻だけは何故か不満そうにしていた。トライセラの顔色と肌艶が極端に良くなっている理由に察しがついたのだ。
「……吾輩達が浸かるはずだった温泉……」
「戻ってきた誤差が三日……浸かるには十分な時間ね……」
国王夫妻はトライセラに不満を抱きつつも問い詰めることはできない。帰ってきてから激務に追われるようになったため余裕がないのだ。以前のトライセラのように。
◇
「落ち込んでいた国王夫妻を近衛の方たちが王宮まで無理やり連れて帰って行ったけど、トライセラ殿下と私達だけが温泉に……って国王夫妻が知ったらどう思うかしらね?」
「借りにも国王なら嫌でも気づくでしょう。きっと悔しく思っているでしょう」
「つまりは、自業自得ね」
「そうですね。お嬢様」
リリィとジェシカは互いに笑った。
トライセラが王宮に戻ってから三日後、二人はダブール商会の支店『ダブルドライバー』で買い物をしていた。支店といっても大きな店舗であり、様々な種類の商品を陳列・販売している。そのおかげでリリィとジェシカはとても楽しい買い物ができた。
しかも、喫茶店まであるということでお茶も楽しめるから最高だった。喫茶店の名は『サイクロンジョーカー』、名称も中身も変わった店だ。
「アッキーはすごいわね。外国の商会なのにこんな大きな店を出せるなんて」
「そうですね。彼女自身も癖のある人のようですし、才能ってところでしょうか」
「それもあるんでしょうけど、生い立ちが彼女をそうさせてるのかもね」
アッキー――アキエーサ・イーリュは人生は波乱万丈だった。そして、その苦難に満ちた人生を仲間たちと共に乗り越えた。その生き様が彼女を強くしたとリリィは思っている




