12.
「ぐあああああ!!」
「きゃああああ!!」
国王と王妃はジェシカの容赦ない攻撃に抵抗することもできずに突かれまくった。そして、そのまま動きを止められた。チャーミングレイブンという技は殺傷能力抜群の技だったが、痛めつける程度に手加減したため二人は体中が痛くて動けなくなる程度に済んだ。
「う、うが……ごふっ……」
「い、痛いよぉ……わ~ん……」
「……あの二人にそっくりだな」
ジェシカの脳裏にはティレックス男爵夫妻の姿があった。かつてリリィに失礼極まりない態度をした挙句、犯罪に手を染めたにも関わらず男爵に降りただけで済んだ馬鹿どもに。その二人と眼の前の国王夫妻が重なってしまう。
「わ、吾輩の、頭皮……」
「せっかくだ、それも切ってしまおう」
ジェシカは国王の頭に薄っすら生えている髪の毛を――切り落とした。
「あ、ああああああ……わ、吾輩の、髪がぁぁぁぁぁ……」
国王は完全にスキンヘッドになってしまった。残っていた髪の毛を失った絶望のあまり、その場で倒れてしまう。生気を失ってピクリとも動かなくなり、言葉すら発することも無くなった。
「あ、あなた……こんなの、酷いわ……」
「呆れた。まだ、そんなことを言えるのか。もう放っておこう」
国王は倒れ、王妃は恐怖と痛みで震えて動けない。そんな二人を置いて、ジェシカは踵を返してリリィのもとに戻る。
「いやぁ、お嬢さん。いい感じにやっちゃったねぇ……」
「お望み通り、お灸を据えただけだ」
「ま、自業自得だし後はオレ達がなんとかするよ。背負ってでも国に戻してやらあ」
「ああ、頼む」
サムに国王夫妻を任せる約束を交わしたジェシカはこれで問題はほぼ解決すると思った。後は誰もが無事に帰るだけだ……と思った直後にジェシカはリリィの姿が見えてきた。
「えっ!?」
トライセラに膝枕するリリィの姿を。
「あらジェシカ。もう終わったの?」
「え、ええ、そうですが……お嬢様は何故この男に膝枕を!?」
「疲れた殿方を癒すのにいいと聞いたの。これでも婚約者だからね」
「ま、まぁ……それは、そうです、ね……」
トライセラはスヤスヤと気持ちよさそうに寝ていた。頬に涙が伝わる姿がなんとも安らかに見える。そんな彼のことをジェシカは少しうらやましかった。
(私も苦戦して疲れればこんな感じに……いや、そんな考えはよそう。私はヒーリングプリンセスと呼ばれるリリィお嬢様の最強の剣士なのだから!)
自分も膝枕されたい。そんな願望をジェシカは恥じた。剣士として邪な願望を主に抱いてはいけないと自分を奮い立たせた。
――しかし、ジェシカは帰りの馬車でリリィに膝枕してもらうことになる。




