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神代の御使い  作者: 逆巻多巻
転移編
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第四話 御使いの戦い

「がはっ……」


 俺の高速の頭突きを受けて、派手に吹き飛んだカパラ。

 俺は今何をしたんですか……?

 訳がわからなくて、助けを求めるつもりでグラン様の方をちらっと見てみる。

 どうやら住民と戦いながらこちらの戦いも見てくれていたようで、グラン様がこっちに近づいてくる。


「雄助。……お前足速いな」

「違うでしょ……」

「ジョークだ。おそらく今のが『リンドウ』の能力だろう。魔力の吸収といったところか」


 こんな時にジョークなんて挟むほど余裕あるのか……

 というか魔力……? RPGゲームとかにある、なんか魔法使うためのポイントみたいなやつか?

 家の方針であまりテレビゲームはしてこなかったんだよなあ……


「その……グラン様、魔力ってなんすか?」

「説明すると長くなるからな。今はとりあえず生命力、つまり人が生きるために必要なエネルギーだと思って良い。『リンドウ』で少し傷をつけた住民が倒れたのは、傷口から魔力を吸ったからだろう」


 なるほど。俺は今、住民の皆さんからめっちゃ生命力を吸ったわけだ。

 え、それ大丈夫なの?

 てかその影響で身体能力まで上がるのかよ。……まあ戦闘中だし、考えるのは後だ。


「雄助、あの槍使いは任せたぞ。俺はニロビを落とす」

「了解っす!」


 グラン様と背中合わせで武器を構え、カパラと向き合う。


「やっと本気出してくれるんだね! 高速移動かあ、初めて見たな〜」


 口元の血を拭いながらニコニコと笑みを浮かべるカパラ。


「明日からは牢屋っすから、二度と見ることはないかもしれないっすね!」


 俺は思い切り地面を蹴って足を踏み出す。耳元を風の音が通り過ぎ、ものすごいスピードで景色が流れていく。

 カパラの脇腹を狙い、『リンドウ』を振り抜いた。

 しかし、これは槍によって防がれてしまう。

 それに構わず、次の攻撃を繰り出すために俺は大きくジャンプし……


「……って飛び過ぎだろ!」


 一跳びで二階建ての建物の屋上付近まで跳べてしまった。空の広さを感じてちょっとテンションが上がる。

 テンションが上がったので、ちょっとだけアクロバティックなことをしたくなった。

 俺はそのまま建物の壁を蹴り、空中からカパラ目掛けて斜めに突っ込んでいく。

 高速で近づいてくる地面を見て一瞬で後悔が湧いてきたが、なんとか恐怖を堪えてカパラから照準を逸らさない。


「危な! 高速移動って厄介なんだね〜」


 しかし、この突撃もまた回避されてしまった。

 受け身を取った俺はカパラと距離をあけ、どうやって攻撃を当てるか考える。

 俺に出来ることで、通用しそうなこと……

 アレでいくか。

 俺はわざとらしく大きく息を吐き、『リンドウ』を正眼に構える。


「次で決めるっすよ、カパラ」

「そう上手くいくかなあ?」


 小さくジャンプした後、姿勢を低くしてスタートをきった。

 高速でカパラに近づいていく中、彼が槍を縦に構えて防御しようとしているのが見える。

 『リンドウ』による斬撃を警戒しているのだろう。だが、俺はこれを狙っていたんだよ!

 さっきグラン様にも通用したアレだ!

 俺は右手に持っていた『リンドウ』を投げ捨て、カパラに回し蹴りをお見舞いする。伸ばした足はカパラの槍を二つに折った。

 明らかに焦った顔のカパラが後ろに下がろうとする。

 俺はすかさず右手でカパラの襟元を掴む!

 そして左手でカパラの右の腕を掴む!

 あとは素早く体を密着させて!


「背負い投げだあああ!」


 柔道やってて良かったー!

 鈍い音を立ててカパラが地面に激突した。

 投げられたカパラはうまく受け身を取れず、地面で痛みに悶えている。

 そこに馬乗りになり、腕を背中側に回させて近くにあった縄で両手を縛り上げた。

 これにて犯人逮捕だ!


「痛ぁ……あんた何者だよ……警察隊か?」


 え、警察隊?

 カパラから思わぬ言葉が出てきたことに驚いていると、今日三度目のラッパの爆音が鳴る。

 広場の中心の方を見ると、グラン様がもうすでにニロビの間近に迫っていた。先程まで俺たちの戦いを余裕綽々で見ていたニロビだったが、今の顔面は焦りと恐怖に染まっていた。

 なにせ人を操れる能力を持っている『アサガオ』とやらが、グラン様には一切効いている様子がないのだ。

 グラン様は悠然と、優雅に、ニロビを守ろうと襲いくる住民たちを気絶させながら一歩ずつニロビに迫っていく。


「調子に乗るんじゃねえ!」


 ニロビの『アサガオ』の音に合わせ、住民たちがそれぞれの武器を手にグラン様に襲いかかる。

 グラン様はレイピアの先端で、襲いくる住民たちを軽く小突いている。

 その小さな衝撃は本当なら体全体に分散していくものだが、『ダリア』の能力で一点に集中される。

 結果として見た目は軽い突きなのに対して、ダメージは想像を絶するほど重くなっているようで、住民たちは吹っ飛んでは意識を失っていく。

 最小限の動きでバタバタと住民を昏倒させていくグラン様。

 やっぱり俺より何倍もアーククラフトの扱いに長けている。


「くそっ……この前配下になったアイツは何をしてるんだよお! ……おい、お前らアレをやれえ!」


 アイツって誰のことだ? カパラじゃないよな。

 少し様子を見ていると数人の住民が木製の風車に登りだす。そしてバキバキと音を立て、風車の上半分が折り取られた。


「投げろお!」


 そしてニロビの号令と共に、住民たちが力を合わせてグラン様に風車を投げ落とす。

 力技すぎるだろ!

 しかしあんな十メートルはありそうな風車に潰されたらひとたまりもないぞ。

 木製の大車輪が、重力に沿ってグラン様を潰そうと迫っていく。だというのにグラン様は涼しい顔を崩さない。

 飛んでくるデカい風車を見て、腕を後ろに引いたグラン様。

 そして風車が落ちてくるタイミングに合わせてレイピア、『ダリア』が風車の中心を射抜いた。


「すまんな。再建費用は国から出させよう」


 その衝撃の波は、一点集中によって想像を絶する威力になり……

 風車は粉々に砕け散った。木製とはいえ、十メートルはある巨大建造物だぞ。それをあんな細いレイピアで粉々にするなんて……

 アーククラフトというものの脅威の片鱗を見た気がする。


「なんなんだそれ……ずるいだろぉがあ!」

「黙れ。木製の風車など、この『ダリア』が紡いできた歴史に比べれば……あまりにも脆い!」


 オレンジ色に輝く『ダリア』が、次は貴様だと言わんばかりにニロビの方へ向けられる。

 ニロビはこれで完全に余裕を失ったらしく、もう繰り返し『アサガオ』を吹き鳴らし洗脳を狙うしかないようだった。

 しかし、四回目、五回目と何度も何度もラッパの音が響くが、全て虚しく宙に拡散していくだけだった。

 とうとうお立ち台にグラン様が到達する。トッと軽い音を奏で、優しく舞い上がったグラン様。

 その飄々とした佇まいに苛立ちを隠せないニロビ。


「なんで、なんでテメェは操れねぇんだあ!」

「悪いな。私の『ダリア』はお前のものと相性が良かったようだ」


 相性が良い……?

 『ダリア』はあらゆる波を操ることが出来るアーククラフトだけど……

 もしかして音波ってこと? 

 音も波の一種だから操れちゃうってこと?それはちょっとズルくない!?

 『ダリア』がニロビの肩と腰を貫き、ニロビが情けなく悲鳴を上げる。

 『アサガオ』を力ずくで取り上げ、グラン様が尋ねる。


「これをどこで手に入れたのだ? これは貴様のようなギャングが手にできる代物ではないはずだ」

「……知らねぇなぁ!」


 涙目になりながら叫ぶニロビ。再びグラン様がニロビの腕と脚を貫いた。

 白を基調としたグラン様の礼服が返り血で染まっていく。


「ちょ、なにもそこまでしなくても良いんじゃないすか!?」


 俺は慌ててグラン様の方へ叫んだ。

 お立ち台まで少し距離があるので、軽く叫ばないと会話ができない。

 それでもグラン様がやっていることは見えている。情報を聞き出したいのは分かるが、やり過ぎだろう。これではただの拷問だ。

 しかし、グラン様は俺の問いかけを無視してもう一度ニロビに問う。


「これはそこらの草むらで拾えるような代物ではないからな。聞き方を変えよう、誰からこれを手に入れた!?」


 グラン様の語気が強まっていく。

 ニロビはちゃんと泣いていた。


「……だ、誰かはわからないんだよお! 真っ黒なローブを着てる奴に渡されたんだあ! このラッパがあれば、国を乗っ取れるってえ!」

「そうか……わかった」


 グラン様は小さく頷き、目を閉じた。

 これ幸いとニロビが捲し立てるように叫ぶ。


「な、なあ悪かったよお! 国家転覆なんて二度と考えないから許し……」


 ……え? 

 それ以上の命乞いが許されることはなく、グラン様の『ダリア』がニロビの心臓を貫いた……

読んでいただいてありがとうございました!

次回もよろしくお願いします!


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