イザベルと謎の男④
やっぱり、あそこには誰かがいる。確信した私は再び石を拾い集め、ライムちゃんへと詰め込んだ。
「あいたた。あちゃあ、ばれちゃったか。そこの君、誤解しないでほしいんだけど私は敵じゃって、うわぁ!?」
「えいやー!」
再びライムちゃんを振り回し、石を投げたが今度は回避されてしまった。投げた石が弧を描くように、遠くの地面へと落ちていく。
「ちょ、ちょっと!話くらいは聞いてくれないか!?私はまだ何もしていないだろう!」
「ええ。確かにそうね。あなたは今、何もしていないわ。ただ、あの森から私を追いかけてきただけね」
「そうだろう?なら、」
「だけど、あんな危険な森から、わざわざ透明になって、こっそりと後をつけてきているなんて、怪しすぎるでしょう?控えめに言って不審者、悪く言えば危険人物よ。自衛のためにも、追い払おうとするのは当然のことじゃないかしら」
「うっ。まあそう言われると……返す言葉もないね。確かにその通りだ。君が私を追い払おうとするのは正しい」
あら、意外と素直。完全に敵だと思っていたけど、話せる人なのかしら。
「でも誓って言う。私は別に、君に敵意や悪意があるわけじゃない。ただ話したいことと、渡したいものがあって追いかけてきただけなんだ。用事が終われば、すぐにここから離れるよ。僕としてもできる限り早く、森に戻りたいからね」
「そう。ならまずは姿を見せて、名前を教えて。それが最低限の礼儀でしょう。私はイザベルよ」
「ああもちろんだ。ちょっと、待っていておくれ」
男がそう言った後、空中で突風が巻き起こった。砂埃が舞い、思わず私は目を閉じてしまった。
そして私が次に目を開けた時には、私の前に一人の男が立っていた。銀の髪と濃い青色の瞳を持ち、深く落ち着いた喋り方と嚙み合わない、少年のような若さを感じる顔立ちをした男だった。男は青と黄色の糸で雫のような模様が刺繍された、白いフードを見に纏い、薄いピンク色の捻じれた木の杖を持っている。指には宝石がはめ込まれた指輪をいくつもつけていて、首には金で作られた十字架のペンダントをかけていた。
バラバラの彩色、過度なアクセサリの付与と、忌避感を感じてしまいそうな装いなのに、男が身に着けていると、妙にしっくりときてしまう。バラバラな物に調和をもたらす、そんな雰囲気が男にはあった。
「初めましてだね、イザベル。私はアラム。人呼んで全能の魔法使い、アラムだ。よろしくね」




