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魔法使いの寄る②

 よーく戦場を見ていると、さっき見た時はいなかった人間が三人も増えていた。一人は見覚えがあったけど、残り二人は初見だった。

 紫色の髪の女と茶色の髪の女。遠目から見てわかるのはそれだけだった。ラビラビとコメツチと違い、後ろで立っているだけだから非戦闘要員なんだろう。そこまで気にしなくてもいいかなと、最初はそう思った。

 だから茶髪の子がいきなりコメツチに斬りかかったときは、本当にびっくりした。ナイフを振るう時、あれは何の躊躇いもなかった。

 バーデスの能力に気づいたことよりも、あの躊躇いのなさが私には恐ろしい。結果的には大正解だったとはいえ、予想が間違っていたら仲間内で殺し合いが発生していてもおかしくない。あの子はそこまで考えて行動したのだろうか。だとしたら相当な大物か、とんでもない愚者だ。

 この時から私の注意はコメツチから、あの子へと向いていた。あまり近づくと気配で感づかれてしまうので、遠視の魔法を使い、私は彼女を観察することにした。

 どうやら彼女は回復魔法の使い手のようで、斬りつけた分のコメツチの怪我は瞬く間に彼女が治してしまった。どうやら解毒の方も、彼女が行っていたらしい。

 あの毒は私が調整したものだから、生半可な薬や魔法じゃ解毒はできない。彼女はおそらく相当な修練をつんだ魔法の使い手なのだろう。そんな人間が、なんで魔法使いが大嫌いなはずの八魔剣と行動を共にしているかはさっぱり謎だ。もしかして脅されているのかな。あいつらは自国のためなら何でもするところがあるからね。ありそうな話だ。

 臭いがなければ魔物はもうやってこない。バーデスの狩りは失敗に終わった。そろそろ引き上げさせようかなと思ったら、また彼女に動きがあった。なんとその場でぺたんと、座り込んだのだ。そんな隙を見せたら当然、後ろのバーデスが黙っていない。

 哀れ女は蜘蛛の餌食に、って思ったけど、実際は違った。哀れむべきはバーデスの方だった。

 使い魔のスライムと自身の血を使った目潰し。自分の腕を使うという狂気的な陽動。そして何も見えない状態の相手に、魔鉱石を使った必殺の一撃。

 バーデスは彼女に対して、何もすることができなかった。圧倒的に有利な状況で狩りを進めていたのに、仕掛けを解かれ、おびき出され、行動を全てコントロールされ、敗北した。

 バーデスは本当に良い出来だったから、死んだときはとても悲しかった。だけどそんな思いは、バーデスを倒した彼女への興味で塗りつぶされた。

 彼女は非戦闘員のはずなのに、狡猾な知性と大胆な行動力を持っていた。あんなのは滅多に見ない。

 私は珍しいものが好きだ。だから、話してみたいと思った。彼女がどんな人間で、何を考えて、何を目的にして行動しているのか、聞きたい、知りたい。そして彼女が私の思っている通りの人物だったのなら、アレを渡してもいいかもしれないと思っている。

 回復魔法の使い手になら、アレはぴったりだ。十全に使いこなしてくれるだろう。

 私は彼女がどこを拠点にしているか探るため、透明化を維持したまま尾行を再開した。

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